ビットコインの量子耐性移行に向けた改善提案「BIP-361」が公開

2026年4月13日、ビットコインの暗号基盤を将来的な量子コンピューターの脅威から保護することを目的とした改善提案「BIP-361」の草案がGitHubで公開されました。この提案は、量子耐性を持たない初期のアドレスに保管されている約170万BTCの盗難リスクに対処するものです。ネットワークの安全性を高める一方で、資産の事実上の凍結を伴う内容が含まれており、ビットコインの不変性を巡りコミュニティ内で議論を呼んでいます。

BIP-361が提示する3段階の移行プロセス

ビットコインの量子耐性移行に向けた改善提案「BIP-361」が公開

BIP-361(Post Quantum Migration and Legacy Signature Sunset)は、Casaのジェイムソン・ロップ氏らによって提案されました。この提案は、量子コンピューターが現在の署名アルゴリズムを解読可能になった際に、公開鍵が露出している初期のP2PK(Pay-to-Public-Key:公開鍵に直接送金する初期の形式)アドレスなどが攻撃対象となるリスクを想定しています。対象となる資金には、サトシ・ナカモトが保有するとされる分も含まれます。

提案では、以下の3段階のスケジュールによる移行が示されています。

・フェーズA:発効から約3年後(16万ブロック後)に、量子脆弱なアドレスへの新規送金を禁止します。これにより、全ユーザーに量子耐性アドレスへの移行を促します。

・フェーズB:フェーズAの2年後、ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)およびSchnorr署名による送金を無効化します。この段階で旧式アドレスに残っているビットコインは、事実上凍結されることになります。

・フェーズC:現在は研究段階ですが、ゼロ知識証明(情報を明かさずに正当性を証明する技術)を用いた救済メカニズムが検討されています。BIP-39のシードフレーズを保持する正当な所有者であれば、凍結された資金を取り戻せる仕組みが想定されています。

著者らは、この仕組みを「アップグレードを促す個人的なインセンティブ」と位置づけ、量子攻撃に対する防御的な措置であると説明しています。

セキュリティ向上と不変性の維持を巡る議論

BIP-361の公開を受け、ビットコインコミュニティからは強い反発の声も上がっています。批判の主な論点は、ビットコインの根本的な信条である「不変性」や「所有権の保護」が損なわれる可能性にあります。

一部のコミュニティメンバーからは、この提案を「権威主義的で没収的」とする意見が出ており、アップグレードを強制して古い支出を無効化する正当な理由はないと主張されています。また、開発者のオラオルワ・オスントクン氏は、この提案がビットコインの根本的な信条を壊すものであるとし、事実上の富の再分配を画策する動きとして警戒感を示しています。

この議論は、将来の技術的脅威に対する「ネットワーク全体の安全性」と、ビットコインが守り続けてきた「個人の資産の不変性」のどちらを優先すべきかという、暗号資産の根幹に関わる問いを改めて浮き彫りにしています。

ポイント

・量子コンピューターによる攻撃からビットコインを保護する改善提案「BIP-361」が公開されました。

・量子耐性のない初期アドレスに保管された約170万BTC(サトシ・ナカモト保有分を含む)の盗難防止が目的です。

・発効から約5年をかけて、段階的に旧式アドレスへの送金禁止や署名の無効化(凍結)を行う計画です。

・ゼロ知識証明を用いた、正当な所有者による凍結資金の救済メカニズムも研究されています。

・「資産の凍結」という手法がビットコインの不変性を損なうとして、コミュニティ内で賛否が分かれています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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