暗号資産マーケットメイカーのDWF Labsは2026年4月16日、DeFi(分散型金融)におけるAIエージェントの現状をまとめたレポートを発表しました。現在、オンチェーン活動の約19%をエージェント由来の活動が占めると推定されており、特定の領域では実用的な成果が出始めています。一方で、複雑な判断を要するトレーディングでは依然として人間が優位にあるなど、AI活用の得意分野と課題が明確になっています。
流動性供給や利回り最適化で進むAIの自律運用
レポートによると、AIエージェントは流動性供給、ポートフォリオ管理、イールド(利回り)最適化といった、目的や制約が明確な領域で特に成果を上げています。
具体的な事例として、Gizaが提供するエージェント型アプリケーション「ARMA」が挙げられています。ARMAは、リバランス手数料や成功報酬を差し引いた後でも、USDコイン(USDC)で年率9.75%超の利回りを実現しました。これはAave(イーサリアム等のブロックチェーン上で展開される貸付プロトコル)やMorphoの通常レンディングを上回る成績とされています。エージェントが保有するTVL(預かり資産総額)は3,900万ドル(約62億円)を超えており、頻繁なポートフォリオ調整を通じて効率的に利回り機会を捉えている実態が示されました。
利用者は資金をコントラクト(自動実行される契約プログラム)に預けるだけで、その後の運用が自動化されるため、運用の手間を削減できる点がビジネス上の特徴です。ただし、これらのエージェントが主要なDeFiプロトコルと同等の大規模運用において安定して機能するかについては、今後の検証課題として残されています。
複雑なトレーディングでは人間がAIを5倍超圧倒
一方で、高度な判断が求められるトレーディング分野では、依然として人間が大きな優位性を持っています。
Trade.xyzが実施した人間とAIエージェントの取引競争では、トップの人間トレーダーの成績が、トップのエージェントを5倍以上も上回る結果となりました。現在のAIモデルの多くが、人間が設定した入力やルールに依存していることが背景にあると分析されています。機械学習によって状況に応じた調整は進んでいるものの、複雑な市場環境下で安定した成果を出す「完全自律型」のエージェントの実現には、まだ距離があるのが現状です。
モデル別の性能比較と戦略的傾向
複数モデルを用いた比較試験(Nof1による実施)では、モデルごとの特性と成績の差が顕著に表れました。
主要なモデル(GPT-5、Claude、Gemini等)の中で、Grok 4.20が他モデルを22%以上上回る最高成績を記録しました。Grok 4.20は、異なるプロンプト(AIへの指示)戦略全体を通じ、平均ベースで利益を確保できた唯一のモデルだったと報告されています。
また、成績上位のモデルには共通する特徴が見られました。
- 取引頻度:平均保有時間が2〜3時間程度のモデルが、頻繁に売買を繰り返すモデルを上回った。
- レバレッジ:平均6〜8倍程度に抑えたモデルが好成績で、10倍を超える高レバレッジは損失を早める傾向があった。
- 戦略:外部情報への依存を抑え、リスク管理を重視する「Monk Mode」と呼ばれるプロンプト戦略が最も良好な結果を示した。
ポイント
- オンチェーン活動の約19%をAIエージェントが占め、2025年以降に1万7,000以上のエージェントが誕生している。
- 流動性供給などの明確なタスクでは、既存のDeFiプロトコルを上回る利回りを出す実用例が登場している。
- 複雑な取引判断では人間がAIを5倍以上圧倒しており、完全自律型エージェントの普及には課題が残る。
- モデル別ではGrok 4.20が首位となり、リスク管理を重視し取引頻度を抑えた戦略が有効である可能性が示された。
- AIエージェントの活用は、運用の自動化や効率化の観点からWeb3ビジネスにおける重要性が高まっている。