日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の代表理事を務める小田玄紀氏が、新たに「株式会社日本経済財政再生機構」というシンクタンクを設立し、活動の軸足を同組織へ移していく方針を明らかにしました。暗号資産規制が資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移行する法的な転換点を迎える中で、小田氏はマーケットの実態に基づいた政策提言をより広範な産業分野で行う考えです。この動きは、今後の国内暗号資産業界の規制の在り方や、自主規制団体の運営体制にも影響を与える可能性があります。
新組織設立の背景とSBIグループ役職からの退任
小田氏は2026年4月13日、自身のnoteにおいて新組織の設立を公表しました。これに合わせ、SBIホールディングスは4月16日に小田氏が常務執行役員およびSBI VCトレード等の関連子会社における全役職を退任する人事を発表しています。
小田氏は約10年単位で新しい社会スタンダードを創出してきた自身の経歴を振り返り、暗号資産業界に関わって10年が経過した現在、法改正の目処が立ったことで「次の10年」を見据えた活動に入ると説明しています。新組織である「株式会社日本経済財政再生機構」は、収益を目的としたビジネスモデルを持たず、マーケットの実態と法律改正プロセスの乖離を埋めるための政策提言を行う場として機能する予定です。
対象とする領域は暗号資産だけでなく、半導体、生成AI、核融合、宇宙産業など多岐にわたります。小田氏によれば、自身の活動全体における暗号資産関連の割合は現在も15%程度であり、新組織での活動はこの比率を維持しつつ、より本格的な提言活動を行う位置づけとなります。
金商法移行に伴うJVCEAの体制強化と今後の舵取り
国内の暗号資産規制は、資金決済法から金商法へ移行する法案が国会に提出されており、成立を待つ段階にあります。この移行に伴い、JVCEAは金商法下の認定自主規制団体として、より重い役割を担うことになります。
小田氏はJVCEAの体制について、今後2年間で年間予算(現行4億円)と職員数(現行32名)をそれぞれ倍以上に拡大し、経営管理態勢を抜本的に強化する方針を示しています。この予算案はすでに3月末に会員企業の承認を得ており、今後は中立的な第三者による審査委員会の設置などが進められる見通しです。
自身のJVCEA会長職については、現在は無報酬の非常勤職であり、今後も対応は可能としています。ただし、次期会長の選任は2026年6月に開催予定の定時社員総会および理事会で決定される事項であり、要請があれば対応するとの意向を示しています。
政策提言の在り方と税制改正へのスタンス
新組織を通じた政策提言において、小田氏は「適切なルール整備により、国家の投資を伴わずに産業開発が可能である」との見解を示しています。特に、マーケットの実態に即した改善を政府や当局に促す役割を重視しています。
一方で、業界の懸案事項である暗号資産の分離課税化(税制改正)については、JVCEAという認定自主規制団体の立場から直接前倒しを提案することは不適当であるとの考えを述べています。現時点では、金商法が2027年に施行された場合、税制改正は2028年1月になるというスケジュール感が示されています。小田氏は、この時期の前倒しには自民党や政府による判断と、メディア等を通じた世論の形成が必要であると指摘しています。
また、日本の経済成長については、暗号資産そのものが直接的にGDPを大きく押し上げるわけではないものの、暗号資産を通じて国民の金融資産が増加することが、結果として日本経済の再生に寄与するという考えを示しています。
ポイント
- JVCEAの小田会長が新シンクタンク「株式会社日本経済財政再生機構」を設立し、活動の軸足を移す方針を表明しました。
- SBIホールディングスおよびSBI VCトレード等の全役職を退任し、特定の企業に属さない立場で政策提言活動を本格化させます。
- 暗号資産の金商法移行を見据え、JVCEAの予算と人員規模を2年間で倍増させる体制強化策が既に会員間で合意されています。
- 税制改正(分離課税化)については、自主規制団体からの直接提案ではなく、政治判断や世論形成が必要であるとの慎重な姿勢を示しています。
- 6月の定時社員総会を経て、JVCEAの次期会長人事を含む新体制が決定される見通しです。