2026年4月14日、決済大手のVisaが、StripeとParadigmが共同で立ち上げた決済特化型ブロックチェーン「Tempo」において、自社によるバリデーターノードの運用を開始したと発表しました。同時にStandard Chartered傘下のZodia Custodyも参加しており、Visa、Stripe、Zodia Custodyの3社がTempoの初期主要バリデーターとなります。この動きは、決済ネットワークの巨人がブロックチェーンの合意形成層に直接関与し、AIエージェントによる自律的な決済インフラの構築を本格化させる重要な一歩と見られます。
Visaによるバリデーター運用の開始と背景
Visaはこれまで、決済インフラの上位レイヤーでサービスを提供してきましたが、今回のTempoへの参加では、ネットワーク上の取引を検証・記録する「バリデーター」というインフラの基盤部分を自社で担います。Visaはすでに機関向けブロックチェーンであるCanton Network(金融機関同士の資産移動やデータ共有を目的としたネットワーク)でも「スーパーバリデーター」を務めており、ブロックチェーンインフラを自社運用する領域を段階的に広げています。
今回の参加の背景には、Tempo上で稼働する「Machine Payments Protocol(MPP)」の存在があります。Visaはバリデーターとして取引の正当性を担保するだけでなく、MPPにおけるカードベース決済の仕様策定にも関与しています。これにより、従来のカード決済網と次世代のブロックチェーン決済を深く統合させる狙いがあると考えられます。
決済特化型L1「Tempo」の技術的特徴と優位性
Tempoは、2026年3月18日にメインネットが公開された、決済処理に最適化されたLayer 1(独自の基盤を持つブロックチェーン)です。既存の汎用的なブロックチェーンとは異なり、決済実務における課題を解決するために設計されています。
主な特徴として、約0.6秒という極めて短い時間で取引が確定し、一度確定した取引が覆らない(ファイナリティの確保)点が挙げられます。また、取引手数料(ガス代)を独自の変動トークンではなく、米ドルステーブルコインで直接支払える仕組みを導入しています。これにより、決済事業者は法定通貨ベースでコストを正確に予測することが可能になります。
さらに、チェーン自体にステーブルコイン同士を交換する機能(AMM:自動マーケットメーカー)が組み込まれており、特定のステーブルコイン発行体に依存せず、複数の銘柄を柔軟に扱える設計となっています。設計段階からAnthropicやOpenAIといったAI企業、ShopifyやCoupangなどのEコマース企業が参加している点も、実需を重視した特徴です。
AIエージェント決済を実現するMachine Payments Protocol
Tempoの核心的な機能の一つが、AIエージェントやソフトウェアが人間を介さずに決済を行うための「Machine Payments Protocol(MPP)」です。これはWebの標準的な通信プロトコルであるHTTPを拡張したもので、IETF(インターネット技術標準化委員会)への標準案提出も行われています。
MPPは、リソースの要求に対してサーバーが「402 Payment Required(支払いが必要)」というステータスコードを返し、それを受けたAIエージェントがデジタル署名によって支払いを証明するというプロセスを、一度の通信サイクルで完結させます。
このプロトコルには、リクエストごとに決済する「一回払いモード」と、事前に入金した範囲内で小額取引をまとめる「セッション・モード」の2種類が用意されています。特にセッション・モードは、数千件のマイクロペイメント(極小額決済)を1件のブロックチェーン取引に集約できるため、AIエージェントによる高頻度なサービス利用に適しています。Visaがこのプロトコルの策定に関与し、バリデーターとして支えることで、AIによる経済活動が既存の金融システムと接続される可能性が高まっています。
ポイント
- VisaがStripe主導のブロックチェーン「Tempo」のバリデーターとなり、インフラ運用に直接関与した。
- Tempoは決済に特化した設計で、約0.6秒の高速確定とステーブルコインによる手数料支払いを実現している。
- AIエージェントが自律的に決済を行うための標準プロトコル「MPP」が実装され、Visaもその仕様策定に参加している。
- Google Cloudの「GCUL」やCircleの「Arc」といった競合プロジェクトの中で、Tempoは最も早くメインネット稼働と大手決済企業の参画を実現した。
- 決済の巨人が検証ノードを運用することは、ブロックチェーン決済の信頼性と実用性を企業レベルで担保する動きとして注目されます。