米コインベース、量子コンピューティングがブロックチェーンに与える脅威に関する提言書を公開

米大手暗号資産取引所のコインベース(Coinbase)が設置した「量子コンピューティングおよびブロックチェーンに関する独立諮問委員会」は、量子技術の進展が暗号資産に及ぼすリスクを分析した初の提言書を公開しました。現時点では既存のブロックチェーンの安全性は保たれているものの、将来的に暗号化技術が突破される可能性に備え、業界全体で量子耐性を持つ技術への移行を早期に開始することを強く推奨しています。分散型エコシステムのアップグレードには数年単位の時間を要するため、脅威が現実化する前に対策を講じることが重要であるとされています。

署名技術に潜む将来的な脆弱性とビットコインへの影響

米コインベース、量子コンピューティングがブロックチェーンに与える脅威に関する提言書を公開

提言書によると、量子コンピューティングによる最大の脅威は、資産の所有権を証明するために使用されるデジタル署名(秘密鍵から公開鍵を導出する技術)などのウォレット層に存在します。将来的に十分な性能を持つ量子コンピュータが実現した場合、公開されている情報から秘密鍵を特定されるリスクがあると指摘されています。

特にビットコインにおいては、オンチェーンで公開鍵が既に露出している古い形式のウォレットなどが対象となり、約690万BTCが将来的なリスクにさらされる可能性があると推計されています。一方で、ビットコインのマイニングで使用されるハッシュ関数(データの整合性を守る計算)や、ブロックチェーンの履歴そのものについては、現時点で大きなリスクはないとの見解が示されています。また、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)を採用するネットワークでは、バリデーター(ネットワークの承認者)が使用する署名スキームにも同様の脆弱性が及ぶ可能性があるとされています。

量子耐性への移行に向けた課題と各プロジェクトの動向

量子耐性を持つ暗号技術(PQC)への移行は、技術的な標準化が進んでいるものの、実装には大きな課題が伴うとされています。提言書では、現在の署名を量子耐性のある代替案に置き換えた場合、データのサイズが最大で38倍に拡大する可能性があるという試算が示されており、これに伴うエンジニアリングコストやネットワークのパフォーマンス低下が懸念されています。

各主要プロジェクトの対応状況については、イーサリアム(Ethereum)が既にレイヤー1のアップグレードを視野に入れた明確なロードマップを提示しているほか、ソラナ(Solana)、アルゴランド(Algorand)、アプトス(Aptos)などのプロジェクトも、量子耐性ソリューションの提供や計画を進めていると報告されています。諮問委員会は、スタンフォード大学やイーサリアム財団、アイゲンレイヤー(EigenLayer)などの著名な研究者や開発者で構成されており、今後も量子技術の進展に応じた分析と指針を提供していく方針です。

ポイント

  • コインベースの諮問委員会が、量子コンピューティングに関する初の公式提言書を公開しました。
  • 現時点での暗号資産の安全性は確認されていますが、将来的にデジタル署名が突破されるリスクが指摘されています。
  • ビットコインでは、約690万BTCが将来的な量子攻撃に対して脆弱な状態にある可能性があると推計されています。
  • 量子耐性技術への移行はデータサイズの増大などの課題を伴うため、早期の準備開始が推奨されています。
  • イーサリアムをはじめとする主要なブロックチェーンプロジェクトでは、既に量子耐性に向けたロードマップの策定が進んでいます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用を専門とする編集チームです。Web3・ブロックチェーン領域に特化したコンサルティングファームである株式会社Pacific Metaが、国内外41カ国・150社以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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