Tron(トロン)の創設者であるジャスティン・サン氏は、トランプ大統領の家族らが関与する分散型金融(DeFi)プロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」を相手取り、カリフォルニア州の連邦裁判所に訴えを提起しました。サン氏は、同プロジェクトが不正な手段で投資を勧誘したほか、自身のトークンを不当に凍結し、永久に破棄すると脅迫したと主張しています。この出来事は、暗号資産(仮想通貨)業界における著名投資家と政治的背景を持つプロジェクトとの深刻な対立を示すものとして、ビジネス界からも高い関心を集めています。
訴訟の主な内容とサン氏の主張
サン氏が提出した52ページに及ぶ訴状によると、WLFI側はサン氏に対して投資を不正に誘導した疑いがあるとしています。また、同氏は自身が保有するWLFIトークンのすべてを凍結され、ガバナンス(プロジェクトの意思決定)における投票権を剥奪されたと主張しています。さらに、WLFI側が正当な理由なくトークンを永久に焼却(バーン)すると脅迫したことについても、法的手段を講じる要因になったとしています。
サン氏は自身のSNSにおいて、これまでプロジェクトチームと非公式な解決を試みてきたものの、凍結解除や権利回復の要求が拒否されたため、トークン保有者としての権利を守るために訴訟に踏み切らざるを得なかったと説明しています。
スマートコントラクトの制御権限とガバナンスの透明性
今回の訴訟では、WLFIのスマートコントラクト(自動実行される契約プログラム)に、事前に開示されていない「ブラックリスト機能」が存在していたという疑惑が浮上しています。サン氏は、プロジェクト運営側がオンチェーンで公開することなく、ユーザーのウォレットを一方的にロックできる権限を保持していたと主張しています。同氏の主張によれば、2025年9月に自身のウォレットがブラックリストに登録されたことで、流動性と投票権が失われたとされています。
また、WLFIが提案した新しいガバナンスルールにおいて、アドバイザー向けトークンの10%焼却や、初期投資家に対する2年間のクリフ(権利確定開始までの期間)と2年間のベスティング(段階的な権利確定)の設定などが盛り込まれたことも、対立を深める要因となったと見られます。サン氏は、こうしたルール変更が投資家に服従を強いるものであると批判しています。
投資の経緯とプロジェクトへの影響
サン氏はWLFIに対して、当初3,000万ドル(約46億円)のアンカー投資を行い、その後も追加投資を重ねて合計で約7,500万ドルを投じたとされています。同氏はプロジェクトのアドバイザーも務めており、WLFIの初期段階における主要な支援者の一人でした。WLFIはドナルド・トランプ・ジュニア氏やエリック・トランプ氏らが主導するプロジェクトであり、サン氏の投資が政治的な意図を持つものではないかとの指摘もありましたが、本人はこれを一貫して否定しています。
WLFI側はサン氏の主張を「根拠がない」として全面的に否定しており、トークンの凍結はサン氏による何らかの不正行為や投資条件の違反に基づいた正当な処置であると反論しています。サン氏は訴状の中で、プロジェクトが現在「崩壊の危機にある」とも主張しており、今後の裁判の行方がプロジェクトの存続に影響を与える可能性があります。
ポイント
- ジャスティン・サン氏がWLFIを相手取り、カリフォルニア州の連邦裁判所に訴訟を提起しました。
- トークンの不当な凍結、投票権の剥奪、およびトークンの永久破棄の脅迫があったと主張されています。
- スマートコントラクトに開示されていないブラックリスト機能が存在した可能性が指摘されており、ガバナンスの透明性が問われています。
- サン氏は3,000万ドル以上のアンカー投資を行った主要な支援者であり、アドバイザーも務めていました。
- WLFI側はサン氏の主張を全面的に否定しており、投資条件の違反があったとして法的措置の正当性を主張しています。