2010年に紛失した約7億ドルのビットコイン、最新のCUDAツールで復元なるか

2010年にStone Man(ストーンマン)と呼ばれるユーザーが不慮の事故で紛失した8,999BTCの復元を目指す、新たな計算ツールが開発されました。この資産は現在、時価約6億8,800万ドル(約1,000億円超)に相当し、ビットコイン史上最も有名な紛失事例の一つとされています。GPUを活用した高速計算により、初期のソフトウェアの脆弱性を突くことで、アクセス不能となった秘密鍵の特定を試みる取り組みです。

Stone Man事件の背景と8,999BTCの紛失

2010年に紛失した約7億ドルのビットコイン、最新のCUDAツールで復元なるか

2010年8月、ビットコインの初期ユーザーであったStone Man氏は、当時のビットコインクライアント(バージョン0.3.2)を使用して1BTCを自分宛てに送信するテストを行いました。この際、残りの8,999BTCはシステムによって自動生成された「お釣りアドレス(change address:取引の際、送金額以外の残高を一時的に格納するために自動生成される新しいアドレス)」へと送られました。しかし、同氏がLinuxのブートCD環境を使用しており、適切なバックアップを取る前にシステムを終了・消去してしまったため、新しいアドレスの秘密鍵が失われてしまいました。この結果、巨額の資産が15年以上にわたり、誰にも動かせない状態でブロックチェーン上に残されることとなりました。

CUDAを活用した秘密鍵の特定手法

今回報じられたツールは、NVIDIA社が提供する並列コンピューティングプラットフォームであるCUDA(クーダ:GPUを用いて膨大な計算処理を高速化する技術)を利用しています。このツールは、初期のビットコインクライアントにおける秘密鍵生成プロセスの「エントロピー(乱数の不規則性)」が不十分であった可能性に着目しています。GPUによる高い計算能力を駆使して秘密鍵の候補を高速で総当たり(ブルートフォース)することにより、紛失したアドレスへのアクセス権を再構築することを目指しています。

復元の可能性と業界への影響

開発者の主張によれば、当時のハードウェア構成やOSの起動タイミング、ネットワーク状態などの詳細な情報があれば、探索範囲を大幅に絞り込むことが可能です。一方で、こうした情報がない場合の探索範囲は依然として膨大であり、現時点では復元が成功するかは未知数です。しかし、この手法が確立されれば、同様の脆弱性を持つ初期の紛失ウォレット(推定で計400万BTCが失われているとされる一部)の回収につながる可能性も示唆されており、技術的な関心を集めています。

ポイント

  • 2010年に技術的なミスでアクセス不能となった8,999BTCの回収が試みられている。
  • 対象資産の時価は約6億8,800万ドルから7億ドルに達する。
  • 復元にはGPUを活用した並列計算プラットフォームであるCUDAが使用されている。
  • 初期のビットコインクライアントにおける秘密鍵生成の脆弱性を突くアプローチとして注目される。
  • 成功すれば、ビットコイン史上最大規模の資産回収事例となる可能性がある。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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