世界最大の資産運用会社であるブラックロック(BlackRock)が、米通貨監督庁(OCC)に対し、ステーブルコインの準備金におけるトークン化資産の保有比率を20%に制限する案の撤廃を求めました。同社は、この制限が自社のトークン化ファンド「BUIDL」の成長を阻害し、市場のイノベーションを妨げる可能性があると警告しています。この動きは、デジタル資産が既存の金融規制枠組みに統合される過程での重要な議論として注目されます。
GENIUS法に基づく規制案への反対表明
ブラックロックは、2025年7月に成立した「GENIUS法(決済用ステーブルコインの連邦枠組みを定める法律)」の実施に向けたOCCの規則草案に対し、17ページに及ぶ意見書を提出しました。この中で同社は、決済用ステーブルコイン発行体(PPSI)が保有できるトークン化された準備資産に20%の上限を設ける提案について、強く反対しています。
ブラックロック側の主張によれば、資産の性質が「トークン化されているか(分散型台帳上で管理されているか)」は、その資産の本質的なリスクとは無関係であるとしています。資産のリスクは、流動性、信用力、および期間(デュレーション)に基づいて判断されるべきであり、特定の技術を使用していることを理由に一律の制限を設けることは、規制の目的にそぐわないと指摘しています。
BUIDLファンドの成長と市場への影響
この要請の背景には、ブラックロックが運用するトークン化ファンド「BUIDL(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund)」の急速な拡大があります。BUIDLは、現金、米国財務省証券、およびレポ契約に投資するトークン化ファンドで、現在の運用資産残高(AUM)は約26億ドルに達しています。
現在、BUIDLはステーブルコイン市場において重要な役割を果たしており、Ethena(エセナ)の「USDtb」やJupiter(ジュピター)の「JupUSD」といったステーブルコインの準備金の90%以上を裏付けているとされています。もし20%の上限規制が導入された場合、これらのステーブルコイン発行体はBUIDLの利用を大幅に制限せざるを得なくなり、BUIDLが連邦枠組みにおける主要な準備資産として規模を拡大することが困難になると見られています。
対象資産の拡大と明確化の要求
ブラックロックは上限撤廃のほかにも、準備資産として認められる範囲の拡大と明確化をOCCに求めています。
具体的には、財務省証券を投資対象とする上場投資信託(Treasury ETF)が準備資産として適格であることを明文化するよう要請しました。ガイドラインが不明確なままでは、発行体がETFを準備金として保有することを躊躇する可能性があると警告しています。また、適格資産リストに「2年物の変動利付財務省証券」を追加することも提案しており、より柔軟で原則に基づいた分散投資の枠組みを求めています。
ポイント
- ブラックロックは、ステーブルコイン準備金におけるトークン化資産の20%上限案を撤廃するようOCCに要請しました。
- この制限は、同社のトークン化ファンド「BUIDL」が連邦規制下のステーブルコイン準備金として採用される際の障壁になると見られます。
- リスク判断は技術(トークン化)の有無ではなく、資産の流動性や信用力に基づくべきだと主張しています。
- 財務省証券ETFの適格性確認や、対象資産の拡充(2年物変動利付債など)もあわせて求めています。
- 伝統的金融機関が、トークン化資産を決済インフラの基盤として本格的に位置づけようとしている姿勢が示されています。