米コインベース(Coinbase)が展開するイーサリアムのレイヤー2(L2)ネットワーク「Base」が、セキュリティ基盤にゼロ知識証明(ZK証明)を導入することを発表しました。暗号技術スタートアップのサクシンクト・ラボ(Succinct Labs)が提供するゼロ知識仮想マシン「SP1」を採用し、安全な実行環境(TEE)と組み合わせたシステムへと移行します。この技術刷新により、これまで最大7日程度を要していたイーサリアムメインネットへの出金時間が、1日程度まで大幅に短縮される見通しです。
ゼロ知識証明の導入による出金プロセスの高速化
Baseはこれまで、取引の検証に「オプティミスティック・ロールアップ(Optimistic Rollup)」という手法を採用していました。この仕組みでは、ネットワーク上の取引が正しいことを前提としつつ、不正がないかを確認するための「チャレンジ期間」が設けられており、そのために資産の引き出しには最大7日程度の待機時間が必要となっていました。
今回導入されるZK証明は、計算結果の正しさを暗号学的に直接証明できる技術です。サクシンクト・ラボによると、この数学的な証明を用いることで、従来の経済的インセンティブ(不正への監視と異議申し立て)に依存した仕組みを代替できるようになります。その結果、安全性を維持したまま待機期間を大幅に短縮し、約1日での出金が可能になるとされています。
サクシンクト・ラボの仮想マシン「SP1」の役割
今回のシステム移行において中核を担うのが、サクシンクト・ラボが開発するオープンソースのゼロ知識仮想マシン「SP1」です。SP1は、Rust言語などで記述されたプログラムの計算結果に対してZK証明を生成できる設計となっています。
通常、ZK証明を導入するには複雑な証明インフラを独自に構築する必要がありますが、SP1を活用することで、ロールアップやブリッジなどのプロトコルは既存の言語を用いて効率的にZK証明によるセキュリティを実装できるようになります。サクシンクト・ラボのブライアン・トランクゾ氏は、今回のBaseによる採用について、ZK証明がイーサリアムのスケーリングにおける「最終形」であることを示す重要な出来事であると述べています。
ネットワークの成長とインフラの強化
Baseの責任者であるウィルソン・カサック氏は、ネットワークの利用者や活動が増加する中で、インフラの強化が不可欠であると説明しています。ZK証明の導入は、Baseのセキュリティとレジリエンス(回復力)を高めるための重要な一歩と位置付けられています。
オンチェーン活動の拠点としてネットワークを成長させるために、より高度な暗号技術を導入することで、ユーザーの利便性とネットワークの信頼性を同時に向上させる狙いがあると考えられます。出金時間の短縮は、ユーザーの資金効率を改善するだけでなく、L2ネットワークとしての競争力を高める要因になると見られます。
ポイント
- サクシンクト・ラボのゼロ知識仮想マシン「SP1」をBaseのセキュリティ基盤に採用
- イーサリアムメインネットへの資産出金時間が、従来の最大7日から1日程度に短縮される見通し
- 従来のオプティミスティック・ロールアップに、ZK証明とTEE(安全な実行環境)を組み合わせた新システムを導入
- 経済的な検証プロセスを数学的な証明に置き換えることで、ネットワークの効率性と安全性を両立
- ネットワークの利用者増加に対応するため、インフラのレジリエンス強化を目的としている