仮想通貨(暗号資産)およびAI業界が、2026年の米国中間選挙に向けて1億ドルを超える多額の資金を政治活動委員会(スーパーPAC)を通じて投入しています。しかし、最新の世論調査では有権者の多くがこれらの技術に対して懐疑的な姿勢を示しており、業界の資金力と公衆の意識の間に大きな乖離があることが浮き彫りになりました。この状況は、業界からの支援を受ける政治候補者にとって、有権者からの反発を招くリスクを含んでいます。
1億ドルを超える政治献金と主要なスーパーPACの動向
2026年の中間選挙に向けて、仮想通貨とAIに関連するスーパーPAC(特定の候補者から独立して無制限に資金を集め、広告活動などを行う政治団体)が巨額の資金を投じています。
AI推進派のスーパーPACである「Leading the Future」は、2025年8月の設立以来、7,500万ドル(約115億円)以上の資金を集め、ノースカロライナ州やテキサス州、イリノイ州、ニューヨーク州などの予備選挙にリソースを投入しています。一方、CoinbaseやAndreessen Horowitz、Ripple Labsなどが支援する仮想通貨推進派の「Fairshake」は、今回のサイクルですでに約2,800万ドルを競争の激しい予備選挙に費やしました。両業界を合わせた支出額は1億ドルを超えており、既存の政党組織の資金力に匹敵する勢いを見せています。
有権者の意識調査にみる新技術への懐疑的な視線
業界による積極的な政治関与の一方で、有権者の意識は慎重です。PoliticoのためにPublic Firstが2026年4月に実施した世論調査(米国成人2,035人を対象)によると、以下のような実態が明らかになりました。
- 仮想通貨への投資について、45%の受託者が「リスクに見合わない」と回答しています。
- AIの発展速度について、44%が「速すぎる」と感じています。
- 資金の安全性において、約50%が仮想通貨プラットフォームよりも伝統的な銀行を信頼しています。
- AIに対して、約3分の2が議会による厳格な規制や広範な監視を求めています。
また、AIが雇用を奪うと懸念する層や、AIのリスクが恩恵を上回ると考える層も一定数存在しており、技術革新に対する国民の不安が根強いことが示されています。
政治候補者が直面する「バックラッシュ」のリスク
現在、これらスーパーPACの存在を知る有権者は極めて少なく、「Leading the Future」の認知度は9%、「Fairshake」は3%にとどまっています。しかし、政治アナリストらは、有権者が候補者と業界団体の資金的な結びつきを認識した場合、急速な反発(バックラッシュ)が起きる可能性があると指摘しています。
特にAIに関しては、規制緩和を訴える候補者よりも、規制強化を支持する候補者を好む傾向が調査結果に表れています。多額の献金を受けることで技術推進派と見なされることが、選挙戦において必ずしも有利に働くとは限らない状況です。仮想通貨・AI業界が政治的影響力を強めようとする中で、有権者の不信感をいかに解消し、規制当局とのバランスを図るかが、今後の大きな課題になると見られます。
ポイント
- 仮想通貨とAI業界が2026年米国中間選挙に向け、スーパーPACを通じて1億ドル以上の資金を投入しています。
- 有権者の45%が仮想通貨投資をリスク過多と見なし、44%がAIの発展速度に懸念を抱いています。
- 業界団体(Leading the FutureやFairshake)の有権者認知度は1割未満と低い水準にあります。
- 巨額の献金が有権者に認知された際、支援を受ける候補者が反発を受ける「バックラッシュ」のリスクが指摘されています。
- 有権者の多くはAIに対する厳格な規制を求めており、業界の意向と民意の乖離が注目されます。