Project Elevenが発表した最新の報告書「The Quantum Threat to Blockchains 2026 Report」により、イーサリアム(ETH)とソラナ(SOL)が将来的な量子コンピュータの脅威に対して抱える脆弱性の実態が明らかになりました。調査によると、ソラナの100%、イーサリアムの約65%が量子計算によって解読されるリスクがあるとされています。この結果を受け、主要なブロックチェーンプロトコルでは、将来の量子計算能力がもたらす潜在的リスクを軽減するための対策が急務となっています。
ネットワーク別の脆弱性と具体的なリスク要因
報告書では、各ブロックチェーンが採用している暗号技術の特性に基づき、量子脆弱性を数値化しています。
ソラナについては、ネットワークの100%が脆弱であると判定されました。これはソラナの構造的な設計に起因しており、オンチェーンのアドレス内に各ウォレットの公開鍵が直接含まれているためとされています。これにより、量子コンピュータを用いる攻撃者に対して公開鍵が完全に露出した状態になると指摘されています。
一方でイーサリアムは、全体の約65%が脆弱であると報告されています。イーサリアムには量子的に脆弱な「プリミティブ(暗号技術の基本要素)」が3つ存在するとされており、具体的には以下の要素が挙げられています。
- ユーザーアカウントを保護する「ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)」
- プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のコンセンサスを処理する「BLS署名」
- EIP-4844で導入された「KZGコミットメント」
これらの要素が量子攻撃を受けた場合、バリデータの署名が偽造され、コンセンサスの不安定化やネットワーク全体でのスラッシング(ペナルティ)が引き起こされる可能性があるとされています。
「Q-Day」の予測と業界の対応策
報告書では、量子コンピュータが現行の暗号を打破する転換点である「Q-Day」についても言及しています。現在のモデルでは、Q-Dayの基準シナリオを2033年と予測しており、早ければ2030年に到達する可能性もあるとされています。
これに対し、各エコシステムでは対策が進められています。
- イーサリアム:2026年3月に「Post-Quantum Ethereum」のウェブサイトを立ち上げ、耐量子計算機暗号への移行を計画しています。レイヤー1のアップグレードは2029年までに完了する見通しですが、実行レイヤー全体の移行にはさらに時間を要すると見られています。
- ソラナ:バリデーター・クライアントの開発チーム(AnzaおよびFiredancer)が、米国立標準技術研究所(NIST)の承認を受けた耐量子署名スキーム「Falcon」を選択しました。テストネットでの検証では、耐量子署名の導入によりデータサイズが増大し、スループットが大幅に低下するという課題も確認されていますが、必要に応じて有効化できる準備を進めています。
ポイント
- Project Elevenの報告書により、ソラナの100%、イーサリアムの65%が量子攻撃に対して脆弱であることが示されました。
- ソラナの脆弱性は、アドレス構造において公開鍵が露出しているという設計上の特徴に由来します。
- イーサリアムでは、アカウント保護やコンセンサス形成に関わる3つの主要な暗号技術がリスク要因として特定されています。
- 暗号が破られる「Q-Day」は2033年が基準とされており、各プロジェクトは耐量子署名(Falcon等)の導入や移行ロードマップの策定を急いでいます。
- 耐量子技術の導入にはネットワーク性能(処理速度)とのトレードオフが発生する可能性があり、今後の実装における技術的課題として注目されます。