世界最大のカストディ銀行(有価証券の保管・管理を主業務とする銀行)であるBNYは、アブダビの現地パートナーと提携し、機関投資家向けの暗号資産カストディサービスの提供を開始することを明らかにしました。今回の提携は、アブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)を拠点に、規制に準拠したデジタル資産の保管インフラを構築することを目的としています。伝統的金融とデジタル資産エコシステムの橋渡しを担うこの動きは、アラブ首長国連邦(UAE)がデジタル資産の世界的ハブを目指す戦略を一段と進めるものと見られます。
アブダビを拠点とした機関投資家向けインフラの構築
BNYは現地パートナーであるFinstreet LimitedおよびADI Foundationと戦略的提携を結び、機関投資家向けの暗号資産保管サービスを展開します。本サービスは、国際金融センターであるアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)を拠点として提供される予定です。
提供されるサービスの範囲については、段階的な拡大が計画されています。当初はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)といった主要な暗号資産のカストディに注力し、その後、ステーブルコインやトークン化された現実資産(RWA:不動産や債券などの物理的資産をブロックチェーン上でトークン化したもの)など、対象を広げていく方針です。
BNYのハニ・カブラウィ副会長は、UAEの金融市場がデジタル化と国際的な接続性を深めている現状に触れ、デジタル資産エコシステムにおける同社の役割を強調しています。
伝統的金融大手によるデジタル資産分野への進出背景
BNYは240年以上の歴史を持つアメリカの金融大手であり、2026年3月末時点で約59兆4000億ドルの資産を保管・管理しています。同社はアメリカのグローバルなシステム上重要な銀行(G-SIB)として、初めて暗号資産カストディを提供した実績を持ちます。
また、BNYはビットコイン現物ETF(上場投資信託)のカストディアンとして複数のファンドに採用されているほか、2026年1月には機関投資家向けにトークン化預金サービスを開始するなど、デジタル資産分野での取り組みを継続的に強化してきました。
今回の提携は、UAEがトークン化金融とデジタル資産の世界的ハブとなることを目指す国家戦略に合致するものです。アブダビでは、Web3特区「Hub71」に日本のスターテイル・ラボが採択されるなど、国際的なWeb3企業の誘致が進んでおり、BNYの参入により機関投資家向けのインフラがさらに拡充されることになります。
ポイント
- 世界最大のカストディ銀行であるBNYが、アブダビで機関投資家向けの暗号資産保管サービスを開始する点。
- ビットコインやイーサリアムから開始し、将来的にはRWA(現実資産)のトークン化にも対応を広げる計画である点。
- 59兆ドルを超える預かり資産を持つ伝統的金融大手が参入することで、デジタル資産市場の信頼性と機関投資家向けのインフラが強化される点。
- UAEが掲げる「デジタル資産の世界的ハブ」という戦略において、伝統的金融とデジタル資産を繋ぐ重要な動きとなる点。