米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は、ブロックチェーン基盤の金融市場およびAIを活用した金融アプリケーションに対する、新たな規制枠組みの検討を表明しました。従来の金融仲介者を前提とした規制から、ソフトウェアプロトコルが機能を統合するオンチェーンの特性に合わせたルール作りを目指すとしています。この動きは、Web3業界における規制の不確実性を低減し、市場の透明性を高める重要な転換点となる可能性があります。
オンチェーン取引システムに適した規制枠組みの検討
既存の証券規制は、ブローカー、ディーラー、取引所、清算機関といった伝統的な市場仲介者を前提に構成されています。しかし、現在のブロックチェーン型システムでは、一つのソフトウェアプロトコルが取引の執行から決済、担保管理、流動性のルーティングまでを統合して行うことがあります。アトキンス氏は、こうした構造が従来の規制カテゴリーに適合しにくい現状を指摘しました。
これを受け、SECはオンチェーン取引システム、ブロックチェーン決済インフラ、自動化された金融アプリケーションに関する正式なルール策定を検討しているとのことです。特に、オンチェーン取引システムが規制の範囲内で適切に運営できるよう、「取引所」の定義を見直すことも検討材料に含まれています。
暗号資産ボールトへの指針とAIへの規制姿勢
ユーザーの資産をオンチェーンの利回り機会へ配分し、収益獲得を可能にする「暗号資産ボールト(資産を安全に保管・運用するための仕組み)」についても、明確な指針が必要であると言及されました。アトキンス氏は、これらのアプリケーションと証券法や投資顧問法との接点について、市場参加者が理解を深められるようにすべきだとの考えを示しています。
また、金融市場におけるAIの活用については、電信や電子注文板と同様に「能力を拡張する道具」の一つとして位置づけています。AIは膨大な情報の処理やリスク管理に寄与する一方で、モデルの不透明性や誤りの急速な拡散といったリスクも併せ持っています。SECの役割は、特定のAIモデルを標準として固定することではなく、公正な市場維持のための「審判」としてルールを定めることにあると強調されました。
執行重視からルール策定重視への転換
今回のアトキンス委員長の発言は、ゲーリー・ゲンスラー前委員長時代の執行を重視する姿勢から、より明確なルール策定を通じて規制の不確実性を低減する方向への転換を示唆しています。市場参加者に対して、オンチェーン環境での運営に関する具体的な指針を提供し、資本形成の促進と投資家保護の両立を目指す姿勢が伺えます。
ポイント
- SECがオンチェーン取引システムや決済インフラに対する正式なルール策定を検討している。
- 単一プロトコルで機能が統合されるオンチェーンの特性に合わせ、「取引所」の定義を見直す可能性がある。
- 暗号資産ボールトに関する証券法・投資顧問法上の指針を明確化し、規制の透明性を高める意向。
- AIを金融市場の効率性を高める道具と定義し、特定の技術に偏らない中立的な規制姿勢を維持する。
- 従来の執行重視の規制から、明確なルール作りによる不確実性の排除へと方針を転換する姿勢が見られる。