米国のデジタルインフラ企業TeraWulf(テラウルフ)は、2026年度第1四半期の決算において、高性能コンピューティング(HPC)事業の収益が初めてビットコインマイニング事業を上回ったことを明らかにしました。同社はビットコインマイニングを主軸としてきましたが、AIやハイパースケーラー(大規模なクラウドサービス提供事業者)向けのインフラ提供へと大きく舵を切っています。この変化は、マイニング企業が持つ電力インフラをAI需要に転用する業界の潮流を象徴する動きとして注目されます。
収益構造の劇的な変化とHPC事業の台頭
テラウルフの2026年第1四半期における総売上高は3400万ドル(約53億円)で、前年同期の3440万ドルとほぼ同水準を維持しました。しかし、その内訳は大きく変化しています。HPC(高性能コンピューティング:膨大な計算処理を高速に行う技術)のリース収益が2100万ドルに達し、ビットコインマイニングを含むデジタル資産関連収益の1300万ドル弱を上回りました。
同社のポール・プラガーCEOは、今回の決算がHPC事業の収益が財務に実質的な影響を与えた初めての期間であると説明しています。また、パトリック・フルーリーCFOは、現在の状況を「移行期の事業」と位置づけ、収益構造がより安定したコンピュート契約(計算リソースの提供契約)へと結びつき始めているとの見解を示しました。
データセンターの転用とパートナーシップの拡大
同社はニューヨーク州にあるLake Mariner(レイク・マリナー)施設において、Core42向けに60メガワットのHPC容量を稼働させており、3月末時点で収益化を開始しています。また、2社目のテナントであるFluidstack(フルイドスタック)とも調整を進めており、これにはGoogle(グーグル)も関与する形で技術配備のタイミングを合わせているとされています。
テラウルフはHPCキャンパスの開発を進めるにあたり、従来のビットコインマイニング設備の一部を、より高付加価値なAI等のワークロード(コンピュータで実行される作業の負荷)向けに転用する戦略を採っています。
事業転換に伴うコストと財務への影響
一方で、マイニングからHPCへの事業転換には多額のコストが伴っています。同四半期のコストは約2億ドルに増加し、その中にはマイニング事業の停止に関連する2570万ドルの減損(資産価値の減少を帳簿に反映させる処理)も含まれています。
結果として、第1四半期の純損失は4億2760万ドルとなり、前年同期の6140万ドルから拡大しました。ただし、この損失の約半分はワラント(新株予約権)の再評価による非現金性の費用であると同社は説明しています。
ポイント
- HPC事業の収益が初めてビットコインマイニングを上回り、事業構造の転換が明確になりました。
- 従来のマイニング設備を高付加価値なAI・HPC向けインフラへ転用し、収益の安定化を図っています。
- Core42やFluidstackといった企業との提携を通じ、大規模な計算リソースの提供を開始しています。
- 事業転換に伴う設備停止や減損により損失が拡大しており、移行期特有の財務状況となっています。