米連邦準備制度理事会(FRB)は2026年5月20日、適格金融機関が決済や清算という限定目的で利用できる「簡易版マスターアカウント」(ペイメントアカウント)の提案を公表し、意見募集を開始しました。この制度は、連邦預金保険の対象外である金融機関などのコスト削減や決済速度向上を目的としており、暗号資産企業の金融システムへの接続に影響を与える可能性があります。前日にはトランプ大統領が大統領令に署名するなど、政府や規制当局の間で議論が活発化しています。
簡易版マスターアカウント提案の背景と概要
多様なビジネスモデルを持つ金融機関、特に連邦預金保険の対象外である企業は、コスト削減や決済速度の向上を目的として、FRBの決済サービスへの直接アクセスを求めてきました。今回提案された簡易版マスターアカウントは、特定の適格金融機関の清算や決済ニーズに対応しつつ、FRBおよび決済システムに対する重大なリスクを軽減するよう設計されています。
FRBは2025年12月に情報提供要請(RFI)を発表し、45日間の意見募集を経てこの構想の策定に着手しました。今回の提案は、その際に示されたプロトタイプと実質的に類似しているとされています。
このアカウントの特徴は以下の通りです。
- 日中信用供与や窓口貸出(ディスカウントウィンドウ)は利用できない
- 残高に対する利息は得られない
- 期末残高の上限は、各機関の予想決済活動に基づいて設定され、最大期末残高も引き上げられる(2025年12月以降に寄せられた意見を考慮した変更点)
また、制度の透明性と一貫性を高めるため、FRBは制度策定プロセスが完了するまでの間、特定のアクセス申請の審査を一時停止するよう各連邦準備銀行に求めています。
トランプ大統領令と業界の動向
本提案が公表される前日の5月19日、ドナルド・トランプ米大統領はマスターアカウントに関連する大統領令に署名しました。この大統領令は、暗号資産(仮想通貨)企業を含むフィンテック企業に対してFRBマスターアカウントへの直接アクセスを許可する方針について、見直すようFRBに指示する内容となっています。
暗号資産企業へのマスターアカウント付与を巡っては、2026年3月5日にクラーケン(Kraken)がデジタル資産銀行として初のFRBマスターアカウントを取得した際、銀行業界から深い懸念が表明されるなど、これまでも議論が交わされてきました。さらに、2026年5月14日には、暗号資産に友好的とされるケビン・ウォーシュ氏のFRB議長就任が米上院で承認されており、今後の政策の方向性に注目が集まっています。
今回の提案には60日間の意見募集期間が設けられており、寄せられた意見を反映した上で最終的な制度設計が進められる見通しです。
ポイント
- FRBが適格金融機関向けの簡易版マスターアカウントの提案を公表し、60日間の意見募集を開始しました。
- このアカウントは支払いの清算や決済に目的が限定されており、日中信用供与や窓口貸出の利用、残高への利息付与は行われません。
- トランプ大統領がマスターアカウントへのアクセス許可方針の見直しを指示する大統領令に署名するなど、政府側の動きも連動しています。
- 2026年3月のクラーケンによるアカウント取得や、5月のケビン・ウォーシュ氏のFRB議長就任など、業界を取り巻く環境は急速に変化しています。
- 制度策定が完了するまでの間、特定のアクセス申請の審査は一時停止されるため、今後の正式な制度導入のスケジュールが注目されます。