ビットコインステーキングの現在地と新興トレンド:Babylon CTOが語るAI転換・RWA・規制の影響

ビットコインエコシステムが、AIや現実世界資産(RWA)のトークン化といった新たな技術サイクルの台頭、そして法規制の変化に直面しています。ビットコインに特化したステーキングプロトコルであるBabylonの共同創業者兼CTO、フィッシャー・ユー氏は、マイナーのAIインフラへの転換や自律型エージェント経済におけるビットコインの役割について、必ずしも脅威ではなく補完関係になり得るとの見解を示しました。一方で、ステーブルコインの利回りをめぐる銀行とWeb3企業の対立や各国の規制整備は、今後のデジタル資産市場の構造を大きく左右する要因として注目されています。本記事では、同氏へのインタビューに基づき、ビットコインエコシステムの現在地と今後の展望を解説します。

AIとRWAの台頭がもたらすビットコインのドミナンスへの影響

ビットコインステーキングの現在地と新興トレンド:Babylon CTOが語るAI転換・RWA・規制の影響

2026年5月現在、ビットコインは約7万7000ドルで取引され、時価総額は1.6兆ドルに達しています。ビットコイン・ドミナンス(暗号資産市場全体におけるビットコインの時価総額シェア)は、2026年5月20日時点で61%を示しており、依然として暗号資産市場を代表する資産として強い存在感を放っています。

しかし、デジタル資産経済の中心にあるビットコインの立場は、新たな技術サイクルによって試されています。2026年5月時点で300億ドル規模に達しているRWA(現実世界資産)のトークン化市場や、台頭しつつあるエージェント型AI経済は、業界の次の成長段階をけん引する分野として注目されています。

米国や英国の政策当局がトークン化市場に向けた規制の枠組みを準備し、AI企業がインフラ確保を急ぐなか、投資家が拡張性とプログラム可能性を備えたブロックチェーンネットワークを優先すれば、ビットコインは再び後れを取るリスクに直面するとされています。実際、最大のトークン化ファンドであるBUIDLの発行体であるBlackRockのラリー・フィンクCEOは、Ethereumをトークン化の有料道路と表現しました。また、SolanaはAIエージェント実験の試験場として浮上しています。こうした動きに対し、投資家がプログラム可能性のあるネットワークを優先することで、ビットコインの優位性が脅かされるフリップニング(時価総額の逆転)が起きる可能性が懸念されています。

Babylonが切り拓くビットコインステーキングとマイナーのAIシフト

こうした新興トレンドに対し、ビットコインエコシステム内でも技術的な対応が進められています。その代表例が、スタンフォード大学教授のデビッド・ツェ氏が創設したステーキングプロトコルであるBabylonです。Babylonは、ビットコインをブリッジやラッピング(別トークンへの変換)することなく、自己カストディを維持したままプルーフ・オブ・ステーク(PoS)チェーンの安全性を支えて報酬を得られる非カストディ型のステーキングプロトコルとされています。

現在、エコシステム全体では約40億ドル相当のビットコインがステーキングされており、遊休資産であったビットコインにネイティブな利回り創出手段が提供されています。ユー氏は、実装設計におけるセキュリティやスラッシング条件、スマートコントラクトの設計が重要であるとし、信頼前提を最小化したシステム構築はまだ初期段階にあると述べています。

また、ビットコインマイナーが計算能力をAIデータセンター向けに転用する動きが増えていることについて、ユー氏は、AIがマイニング用ハードウェアをそのまま再利用することはないものの、電力や土地などのリソースをめぐって競合する可能性があると指摘しています。しかし、これがビットコインの長期的な安全性に対する差し迫った脅威になるとは見ていません。むしろ、AIがマイナーに別の収益源をもたらすことで、事業者が価格サイクルに左右されにくくなり、長期的には競合よりも補完的な関係になる可能性があると見解を示しています。

ステーブルコインの進展と国内外の規制動向

デジタル決済の領域では、現在ドル建てステーブルコインが市場シェアの99%超を占めていますが、地域経済における自国通貨建てステーブルコインの需要も続いています。日本では、SBIホールディングスとStartale Groupが共同開発し、SBI新生信託銀行が発行を担う、日本初の信託銀行バックアップによる円建てステーブルコイン「JPYSC」が2026年第2四半期中の正式ローンチを目指しているとされており、こうした自国通貨建ての代替手段を模索する動きが活発化しています。

一方、米国では暗号資産の法的な分類やSEC(証券取引委員会)とCFTC(商品先物取引委員会)の管轄権を明確にするための法案であるDigital Asset Market Clarity Act(通称Clarity Act)が2026年5月に上院銀行委員会を通過するなど、法整備が進展しています。しかし、ステーブルコインの利回りをめぐり、米国の銀行と暗号資産企業の間で対立が生じています。銀行側は、利回り付きステーブルコインが銀行預金の流出を招き、地域貸出などの経済活動を脅かすと懸念しています。

ユー氏は、預金流出への懸念は現実のものであるとしつつも、各国の金融システムは異なるため、米国の議論をそのまま他の地域に持ち込むべきではないと述べています。銀行とWeb3企業の双方が議論に参加し、金融政策や銀行の資金調達構造、国家レベルの決済インフラ戦略と結びついた不均衡のない規制枠組みを構築することが、今後のアジアを含む各地域において重要な教訓になると指摘しています。

ポイント

  • AIやRWA(現実世界資産)の台頭がビットコイン・ドミナンスに影響を与える懸念がある一方、ビットコインエコシステムではBabylonなどによるステーキングの活用が進んでいる点で注目されます。
  • マイナーのAIインフラ転換は、電力や土地などのリソースで競合するものの、新たな収益源の確保を通じて事業の強靭化につながる補完的な関係になり得る点で注目されます。
  • エージェント型経済において、BTCがスマートコントラクトと連携し、マシン・ツー・マシンの決済で役割を果たす可能性がある点で注目されます。
  • ステーブルコインの普及とそれに伴う銀行の預金流出懸念に対し、地域ごとの金融システムに応じた不均衡のない規制枠組みの構築が求められている点で注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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