FRB、暗号資産・フィンテック企業向けの限定的な決済アカウント創設を提案

FRB、暗号資産・フィンテック企業向けの限定的な決済アカウント創設を提案

米連邦準備制度理事会(FRB)は、暗号資産(仮想通貨)関連企業やフィンテック企業を含む、法的に適格な非銀行系金融機関に対して、中央銀行の決済システムへの直接アクセスを可能にする「決済アカウント(payment account)」の創設案を発表し、60日間のパブリックコメント募集を開始しました。この提案は、通称「スキニー・マスターアカウント」とも呼ばれ、従来の銀行が持つ特権の一部を制限した決済アクセスを提供するものです。トランプ大統領が非銀行金融機関へのアクセス拡大を促す大統領令に署名した翌日に発表され、業界の注目を集めています。

決済アカウントの概要と厳しい制限事項

FRB、暗号資産・フィンテック企業向けの限定的な決済アカウント創設を提案

この提案は、2025年12月に実施された情報提供要請(RFI)に基づいて進められたものです。対象となる非銀行系金融機関は、中間銀行を介さずにFRBの決済・清算インフラに直接接続できるようになり、コスト削減や決済速度の向上が期待されます。

一方で、このアカウントは従来の「マスターアカウント」とは異なり、以下のような厳しい制限が設けられています。

  • 日中信用(イントラデイ・クレジット)や、緊急貸付制度である割引窓口(ディスカウント・ウィンドウ)は利用できません。
  • FRBに預託した残高(準備金)に対して利息は支払われません。
  • 当座貸越(オーバードラフト)を自動的に防止する制御機能を備えた決済サービス(Fedwire Funds ServiceやFedNowなど)のみにアクセスが制限され、自動清算機関(FedACH)などは利用できません。
  • 銀行秘密法(BSA)やマネーロンダリング防止(AML)規制、制裁措置への準拠を証明する情報の提供が義務付けられます。

また、2025年12月時点のプロトタイプからの変更点として、1日の終わりに保有できる最大残高制限が、以前検討されていた5億ドルから10億ドルに引き上げられるなど、一部のパラメータが調整されています。

業界への影響と賛否両論の議論

この提案は、暗号資産企業やフィンテック企業にとって、米国の金融システムへ直接アクセスするための公式な道を開く可能性があるという点で極めて重要とされています。これまで、多くの暗号資産企業などは伝統的な銀行を仲介して決済を行う必要があり、コストや効率性の面で課題を抱えていました。

しかし、この方針には慎重論や反対意見も根強く存在します。

伝統的な銀行業界(アメリカ銀行協会など)は、規制が比較的緩い非銀行系企業が中央銀行のシステムに直接接続することで、流動性リスクやコンプライアンス上の懸念が生じるとして強く反対しています。

さらに、FRB内部でも意見が分かれており、金融規制担当のマイケル・バー副議長は、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止に向けた具体的な保護措置が不十分であるとして、この提案に対する不支持を表明しています。

今後のスケジュールと申請審査の一時停止

FRBは、この新たな決済アカウントに関するルール策定を進める間、暗号資産企業の多くが分類される「ティア3(Tier 3)」の申請案件について、各地区の連邦準備銀行に対し審査を一時的に停止するよう推奨しています。この一時停止措置は、ルールの策定が完了すると予想される2026年12月31日、またはそれ以前に終了する見通しです。

なお、2026年3月にはカンザスシティ連邦準備銀行が、暗号資産取引所Krakenの銀行部門であるKraken Financialに対し、制限付きのマスターアカウント(ティア3分類)を承認した実績もありますが、今回のルール策定によって今後のアクセス基準が統一化されると見られます。

ポイント

  • FRBが、暗号資産・フィンテック企業などの非銀行系金融機関向けに、限定的な決済アクセスを提供する決済アカウントの創設提案を発表しました。
  • このアカウントは、緊急貸付(割引窓口)や利息の受け取りができないなど、従来のマスターアカウントに比べて機能が大幅に制限されています。
  • 暗号資産企業にとっては、中間銀行を介さずにFedwireやFedNowに直接接続できるため、コスト削減や決済の高速化につながる点で注目されます。
  • 伝統的な銀行業界や一部のFRB高官からは、マネーロンダリングやシステムリスクへの懸念から反対意見も出ています。
  • ルール策定が完了する2026年12月31日、またはそれ以前まで、暗号資産企業が属するティア3の新規アカウント申請の審査は一時停止される見通しです。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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