トランプ・メディアが暗号資産ETF3本の申請を自主取り下げ、激化する市場競争が背景か

米ソーシャルメディア「Truth Social」を運営するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(Trump Media & Technology Group)が、申請していた3本の暗号資産関連ETF(上場投資信託)の登録届出書を自主的に取り下げたことが明らかになりました。開発側はより投資家保護や税効率に優れた法制度への移行を理由に挙げていますが、専門家からは大手金融機関の参入による市場競争の激化が影響しているとの見方も出ています。本決定は、暗号資産ETF市場における競争環境の急激な変化を示す事例として注目されます。

申請が取り下げられた3本の暗号資産ETF

トランプ・メディアが暗号資産ETF3本の申請を自主取り下げ、激化する市場競争が背景か

トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループが米国証券取引委員会(SEC)に提出した5月19日付けの書類により、申請中だった3本の暗号資産ETFの登録届出書を自主的に取り下げたことが判明しました。

取り下げの対象となったのは以下の3つの商品です。

  • Truth Social Bitcoin ETF(ビットコイン現物ETF)
  • Truth Social Bitcoin & Ethereum ETF(ビットコインおよびイーサリアムの現物ETF)
  • Truth Social Crypto Blue Chip ETF(複数の主要暗号資産を組み入れたETF)

これらのETFはいずれも、当初は1933年証券法に基づいて登録届出書が提出されていました。

制度移行を掲げる開発側と、競争激化を指摘するアナリスト

これらのETFでスポンサー兼投資顧問会社を務めるヨークビル・アメリカ・デジタル(Yorkville America Digital)は、取り下げと同日の5月19日にプレスリリースを発表しました。

同社社長のスティーブ・ニームツ(Steve Neamtz)氏は、慎重な検討の結果、1940年投資会社法の枠組みに移行する方針を示しました。同氏は、1940年投資会社法の枠組みが、1933年証券法の下では不可能だった差別化された投資戦略を投資家に提供することを可能にすると説明しています。この枠組みは、投資家保護の強化、アクセス性の向上、税効率の向上、透明性の確保などの面で投資家にメリットがあるとしています。

一般的に、米国の暗号資産現物ETFの多くは1933年証券法に基づいて上場していますが、投資信託などの組成によく用いられる1940年投資会社法は、より厳格な開示ルールや投資家保護の仕組みが適用されるとされています。

一方で、ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストであるジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏はこの説明に懐疑的な見方を示しています。同氏は、1933年証券法に基づくETFは1940年投資会社法に基づくものよりも保護措置が少ないことは業界関係者にとって周知の事実であると指摘しました。その上で、今回の取り下げの背景には、ビットコイン現物ETFを巡る競争環境が関係しているのではないかと推測しています。

大手金融機関の参入と手数料競争の影響

セイファート氏が競争激化の具体的な要因として挙げているのが、大手金融機関であるモルガン・スタンレー(Morgan Stanley)の市場参入です。

モルガン・スタンレーは4月にビットコイン現物ETFである「Morgan Stanley Bitcoin Trust(ティッカー:MSBT)」をローンチし、0.14%という極めて低い手数料(経費率)を設定して参入しました。このような実績とブランド力を持つ大手金融機関が低コストで参入してきたことにより、トランプ・メディアらのETF計画が影響を受けた可能性があるとみられます。

トランプ・メディアは、2025年12月時点でビットコインを追加購入して総保有額が10億ドルを超えるなど、暗号資産分野へのコミットを強めていました。しかし、2026年5月に発表された同年の第1四半期決算では4億600万ドルの損失を計上しており、暗号資産の含み損が業績の重荷になっていると報告されています。厳しい財務状況の中で、さらに激化するETF市場での手数料競争を避けるという判断に至った可能性も考えられます。

ポイント

  • トランプ・メディアが、ビットコインやイーサリアムなどに関連する3本の暗号資産ETF申請を自主的に取り下げました。
  • スポンサー企業は、より投資家保護や税効率に優れる「1940年投資会社法」の枠組みへ移行し、差別化された投資戦略を提供することを理由としています。
  • 専門家は、モルガン・スタンレーが手数料0.14%の低コストETFで参入したことによる、市場競争の激化が真の理由である可能性を指摘しています。
  • トランプ・メディアは暗号資産の含み損による財務的な重荷を抱えており、激化するETF市場での競争回避を選択したと見られます。
  • 本決定は、大手金融機関の参入に伴い、暗号資産ETF市場における新規参入者の戦略や立ち位置が急激に変化していることを示す事例として注目されます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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