暗号資産サービス大手のBlockchain.comが、米国証券取引委員会(SEC)に対し、新規株式公開(IPO)に向けた登録届出書草案(S-1)を非公開で提出しました。同社は2026年内の米国での株式公開を目指していますが、現在の暗号資産関連のIPO市場は、先行企業の株価低迷や競合他社の計画一時停止などにより冷え込んでいます。このような厳しい市場環境において、老舗企業である同社が上場手続きを開始したことは、市場の動向や規制当局の反応を慎重に見極めるための戦略的な動きと見られています。
Blockchain.comのIPO申請と企業背景
テキサス州ダラスを拠点とするBlockchain.comは、2026年5月21日にSECへ非公開のS-1申請書を提出したことを発表しました。売り出す株式数や価格帯は現時点で決定しておらず、実際の株式公開はSECの審査完了や市場環境に左右されることになります。
2011年に創業された同社は、業界で最も古い暗号資産サービス企業の一つです。これまでに9500万件以上のウォレットを創出し、4300万人以上の認証済みユーザーを抱え、累計取引高は1.1兆ドルを超えています。一般利用者向けの取引所やウォレットサービスに加え、機関投資家向けの取引やレンディング商品も提供しており、調整後ベースで3年連続の黒字を達成しているとされています。
一方で、同社の評価額は市場の変動を反映しています。2022年の強気市場においては140億ドルの評価額を記録していましたが、FTXの崩壊を経た2023年後半の資金調達ラウンド(シリーズE)では70億ドルに減少しており、今回のIPOにおける市場の評価が注目されます。
冷え込む2026年の暗号資産IPO市場
2025年にはCircleやBullish、Gemini、eToroなどが株式公開を完了し、暗号資産企業のIPOは一時的な活況を見せました。しかし、2026年に入ると市場環境は一転して厳しいものとなっています。
2026年1月に上場したカストディ企業BitGoの株価が上場後に大幅に下落したことや、取引量の減少、トークン価格の変動などが逆風となり、投資家の意欲が冷え込んでいます。この影響を受け、多くの主要企業がIPO計画の一時停止を余儀なくされています。
例えば、大手取引所のKraken(運営会社Payward)は、2025年11月に非公開でIPO申請を行い、2026年第1四半期の上場を目指していましたが、市場環境の悪化を理由に2026年3月に計画を一時停止しました。また、ハードウェアウォレット大手のLedgerも、2026年5月に米国IPO計画を保留したことが報じられています。
非公開申請の意図と今後の見通し
今回のBlockchain.comによる非公開でのS-1申請は、詳細な財務情報や上場計画を公に開示することなく、SECから規制上のフィードバックを受けられる利点があります。これにより、同社は市場が回復するタイミングを見計らいながら、柔軟に上場時期を調整することが可能となります。
競合他社が計画を一時停止する中で、Blockchain.comがこのタイミングで手続きを開始したことは、今後の市場の窓が開く瞬間に向けて迅速に動けるよう、事前に準備を整える意図があると見られています。
ポイント
- Blockchain.comが2026年5月21日に米SECへ非公開でIPO申請(S-1)を提出しました。
- 同社は2011年創業の最古参企業の一つで、3年連続の黒字を維持しているものの、直近の評価額はピーク時の半額となる70億ドルに減少しています。
- 2026年の暗号資産IPO市場は、BitGoの株価低迷や、KrakenおよびLedgerの計画一時停止などにより、冷え込んだ状況が続いています。
- 非公開申請の手法をとることで、財務情報を伏せたままSECの審査を進め、市場環境が好転した際に柔軟に上場時期を決定する戦略と見られます。