Anthropicが脆弱性発見AI「Claude Fable 5」を一般公開、DeFiのセキュリティへの影響に懸念も

米AIスタートアップのAnthropicは2026年6月10日、これまでアクセスが制限されていた強力な脆弱性発見AIモデル「Mythos」の一般公開バージョンとなる「Claude Fable 5」をリリースしました。これにより、サブスクリプションを契約しているユーザーであれば誰でも、高度な脆弱性検出能力を持つAIを利用できるようになります。一方で、この技術が分散型金融(DeFi)のスマートコントラクトの脆弱性悪用に利用されるのではないかという懸念も急速に高まっています。

高度な脆弱性発見AI「Mythos」の一般公開

Anthropicが脆弱性発見AI「Claude Fable 5」を一般公開、DeFiのセキュリティへの影響に懸念も

今回一般公開されたClaude Fable 5は、これまで「Project Glasswing(プロジェクト・グラスウィング)」と呼ばれるセキュリティイニシアチブの枠組みの中で厳格に管理されていた「Mythos」モデルをベースにしています。

これまでMythosへのアクセスは、GoogleやMicrosoft、JPMorgan Chaseなどを含む約150の厳選された組織のみに制限されていました。この限定公開されていたバージョンは、すでに世界中の極めて重要なソフトウェアにおいて1万件以上の重大な脆弱性を自律的に発見した実績があるとされています。Claude Fable 5のリリースにより、この強力なAIの能力が一般のサブスクリプションユーザーにも解放されることになりました。

安全対策としてのセーフガードと切り替え機能

Anthropicは、これほど強力なAIモデルの一般公開には相応のリスクが伴うことを認識しており、Claude Fable 5に厳格なセーフガード(安全対策)を導入しています。

具体的には、サイバーセキュリティ、生物学、化学、モデル蒸留といった高リスクな領域に関するクエリが検出された場合、AIは自動的に回答をブロックし、1つ前の世代のモデルである「Claude Opus 4.8」に処理を切り替える(フォールバックする)仕組みになっています。同社はこの安全対策を検証するため、1,000時間以上にわたる外部のバグバウンティプログラムを含むストレステストを実施しました。その結果、通常の利用においてこの切り替えが発生するのはセッション全体の5%未満にとどまるとされています。

DeFiスマートコントラクトにおける悪用の懸念

強力なセーフガードが施されている一方で、DeFi(分散型金融)業界からは懸念の声が上がっています。その理由は、スマートコントラクト(自動実行される契約プログラム)の脆弱性を探るクエリが、Anthropicのブロック対象とするサイバーセキュリティのカテゴリに明確に分類されない「グレーゾーン」に位置する可能性があるためです。

例えば、Solidityなどのスマートコントラクト記述言語におけるコードの脆弱性を特定する行為は、安全対策フィルターをすり抜けて実行できてしまう懸念が指摘されています。これにより、悪意のあるユーザーがDeFiプロトコルの脆弱性を容易に発見し、悪用(ハッキング)につなげる手段としてFable 5を利用するリスクが懸念されています。一部の専門家は、DeFiユーザーに対してスマートコントラクトのトークン承認(アプルーバル)を取り消し、資産をハードウェアウォレットに移動するなどの自己防衛策を講じるよう推奨しています。

ポイント

  • Anthropicが、高度な脆弱性発見能力を持つAIモデル「Claude Fable 5」を一般向けにリリースしました。
  • 元となった「Mythos」モデルは、これまでGoogleやJPMorgan Chaseなど約150の組織に限定して提供され、世界的なソフトウェアで1万件以上の重大な脆弱性を発見していました。
  • Fable 5にはサイバーセキュリティなどの高リスクなクエリを検知した際、前世代モデル「Claude Opus 4.8」へ自動で切り替える安全対策が組み込まれています。
  • DeFiのスマートコントラクトの脆弱性探索が安全対策の対象外となるグレーゾーンである可能性があり、ハッキングへの悪用が懸念されています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta