米証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス委員長は、急成長する予測市場を米商品先物取引委員会(CFTC)が十分に監督できるのかという懸念に対し、CFTCのマイケル・セリグ委員長を擁護しました。予測市場の拡大に伴い、CFTCの予算や人員の少なさ、委員の空席といった体制面の課題が注目されています。しかしアトキンス氏は、セリグ氏が革新的な商品の整理において素晴らしい仕事をしていると評価しており、今後の規制体制の行方に高い関心が集まっています。
予測市場の急成長とCFTCが抱える体制面の課題
予測市場は、スポーツの試合結果や社会的な出来事の予測に対して取引を行う市場であり、代表的なプラットフォームであるポリマーケット(Polymarket)やカルシ(Kalshi)は、2024年の米大統領選を経て数十億ドル規模の評価を受けるまでに成長しています。
一方で、この市場を監督するCFTCの体制には懸念が指摘されています。現在、CFTCで在任している委員はセリグ委員長のみで、残りの4つの委員ポストは空席となっています。
また、SECと比較した際のリソースの差も顕著です。2027会計年度に向け、CFTCは前年度比約12.3パーセント増となる4億1000万ドル(約656億円、1ドル=160円換算)の予算と、650 FTE(フルタイム当量)の職員数を議会に要求しています。これに対し、SECは19億800万ドルの予算を要求しており、職員数も4000人を超えています。このような体制や予算の規模の違いから、CFTCの監督能力を不安視する声が上がっていました。
SECアトキンス委員長による擁護とCFTCの技術活用
こうした懸念に対し、SECのアトキンス委員長はCNBCのインタビューにおいて、セリグ委員長を「有能だ」と評価しました。アトキンス氏は、セリグ氏がCFTCにおいて素晴らしい仕事をしており、世界中で取引されている革新的な商品の扱いを整理しようとしていると説明しています。
また、セリグ委員長自身もSNS(X)の投稿で、組織の採用活動を進めていることを明かすとともに、インサイダー取引(未公開の重要情報を利用した不公正な取引)の検知などに人工知能(AI)を活用していると言及し、限られたリソースの中で技術を用いた監督体制の強化を図っている姿勢を示しています。
州当局との管轄権争いと包括的な規則案の公表
予測市場の規制をめぐっては、連邦政府と州当局との間で管轄権の争いが発生しています。CFTCはスポーツベッティング(スポーツ賭博)に関連する予測市場において、自らの「専属的管轄権」を主張し、複数の州を相手に訴訟を起こしています。一方、州側はスポーツベッティングの規制権限は州にあると主張し、対立が深まっています。
このような状況の中、CFTCは先週、予測市場におけるスポーツベッティングを大枠で認める一方、テロや暗殺に関する賭けには制限を設ける包括的な規則案を公表しました。
暗号資産業界および今後のビジネスへの影響
今回の規制をめぐる動向は、Web3や暗号資産(仮想通貨)業界全体の将来にも大きな影響を与える可能性があります。
現在、米国議会ではデジタル資産市場を連邦レベルで初めて包括的に規制する法案の審議が進んでおり、これが成立した場合、CFTCに広範な権限が与えられる見通しです。そのため、CFTCが予測市場のような革新的な分野において実効性のある監督体制を確立できるかどうかは、今後の暗号資産市場全体の規制の方向性を占う上でも極めて重要であると見られています。
ポイント
- 米SECのアトキンス委員長が、予測市場の監督能力に懸念が持たれているCFTCのセリグ委員長を「有能」と評価し、擁護しました。
- CFTCはSECに比べて予算や職員の規模が大幅に小さく、さらに現在は委員の4ポストが空席でセリグ氏のみが在任しているという体制上の課題を抱えています。
- 急成長する予測市場をめぐり、CFTCは専属的管轄権を主張して複数の州当局と対立し、訴訟に発展しています。
- CFTCは、スポーツベッティングを大枠で容認しつつ、テロや暗殺に関する賭けを制限する包括的な規則案を先週公表しました。
- 暗号資産を包括的に規制する法案が成立すれば、CFTCに広範な監督権限が与えられる見通しであり、同委員会の規制体制の整備はWeb3業界の今後を左右する重要な要素として注目されます。