ステーブルコインを「Web2の実店舗」へ導入する現実解──ネットスターズ、JPYC、Bitget Walletが示す既存インフラとの接続

QRコード決済ゲートウェイ大手のネットスターズは、都内で「StarPay-X Web3 Payment Innovators Meetup Vol.1」を開催しました。イベントには、日本円ステーブルコイン「JPYC」を手がけるJPYC社や、自己管理型ウォレットを提供する「Bitget Wallet」が登壇し、ステーブルコインを日常の決済手段にするための役割や課題について議論が交わされました。店舗側に新たな負担を強いることなく、既存の決済インフラを活用する「StarPay-X」構想は、ステーブルコインの社会実装を加速させる現実的な解決策として注目されます。

既存の決済インフラに接続する「StarPay-X」の役割

ステーブルコインを「Web2の実店舗」へ導入する現実解──ネットスターズ、JPYC、Bitget Walletが示す既存インフラとの接続

店舗と多様な決済サービスをつなぐマルチキャッシュレス決済ソリューション「StarPay」を提供するネットスターズは、既存の決済プラットフォームにおいて約70万規模の加盟店・アカウントを抱え、年間取扱高は約1兆円に上るとされています。同社が推進する「StarPay-X」は、これらWeb2の既存決済インフラにブロックチェーンやステーブルコインを組み込むためのゲートウェイとして構想されています。

これまで同社は、羽田空港第3ターミナルなどでステーブルコインを用いた店舗決済の実証実験を行ってきました。実店舗での利用可能性に一定の手応えを得たものの、一般ユーザーや加盟店の使いやすさの面で課題が残ったことから、今後はWeb3事業者や金融・決済事業者との連携を広げる方針です。StarPay-Xを通じて、空港やショッピングモール、スーパーなどの実店舗で、ユーザーが従来のQRコード決済と同じ感覚でステーブルコインを使用できる環境の整備を目指しています。

JPYCが描く「循環する経済圏」とAI決済の未来

日本円と1対1で交換可能なステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC社は、ステーブルコインの普及において、既存の加盟店網や決済サービスとの接続が極めて重要であると考えています。同社代表取締役の岡部典孝氏は、発行体が独自の決済網を閉じて構築するのではなく、さまざまな事業者がJPYCをシステムに組み込める環境を整えることが重要だと説明しました。

JPYC社は今後、暗号資産取引所での流通開始、DeFi(分散型金融)用途の拡大、ウォレット間決済、POSと連動したB2C決済などを進めるロードマップを掲げています。将来的には、これらの用途が相互に補完し合い、JPYCが経済圏の中で循環する状態を目指すとしています。

さらに、その先にある用途として「AIエージェントによる決済」が挙げられました。ユーザーがAIエージェントに商品の購入やホテルの予約を依頼すると、ウォレット内のJPYCを用いて自動で注文から支払いまでが完了するような未来像です。プログラムから直接扱いやすいデジタルな決済手段として、ステーブルコインの重要性が今後さらに高まると見られています。

店舗側の追加負担をゼロにする「Bitget Wallet」との協業

ネットスターズは、世界で9000万人以上のユーザーを抱える自己管理型ウォレット「Bitget Wallet」と、Web3型決済の普及に向けた基本合意書を締結しました。両社は、StarPay-Xのマルチウォレット化に向け、Bitget Walletを通じたステーブルコイン決済の導入可能性を検討します。

自己管理型ウォレット(ノンカストディアル型ウォレット)は、ユーザー自身が秘密鍵を管理する仕組みのウォレットとされていますが、初心者にとってはシードフレーズの管理やガス代(取引手数料)、チェーンの違いなどが負担になりやすい課題があります。Bitget Walletでは、ソーシャルログインや危険サイトのブロック、ガス代負担を軽減する仕組みなどを提供することで、ユーザー側のハードルを下げています。

StarPay-Xとの連携構想では、ユーザーがBitget WalletアプリでQRコードを提示し、店舗側は既存のPOS端末や読み取り端末でそれを読み取るだけで決済が完了します。店舗側は新たな機材を導入する必要がなく、運用の変更も不要なため、加盟店側の導入ハードルを大幅に下げられる点が強調されました。

国内で加速するデジタル決済・ステーブルコインの実装

日本国内では、ステーブルコインやデジタル通貨を活用した決済実装の動きが相次いでいます。

JPYC社とトレーダムは、海外の買い手がステーブルコインで支払い、JPYC EXを通じて円貨精算まで完了するクロスボーダー決済の実施を発表しました。また、北陸銀行とディーカレットDCPも、デジタル通貨「DCJPY」を活用した決済事業の商用化に向け、2027年度中の開始を目指して基本合意書を締結しています。

こうしたデジタル決済の社会実装が進む中で、実店舗における日常決済への普及は大きなテーマです。店舗側に新たな機材や運用の負担をかけることなく、既存のインフラに接続できるかどうかが、今後の普及の大きな鍵を握ると見られます。

ポイント

  • 既存インフラの有効活用:約70万の加盟店網を持つネットスターズのプラットフォームに「StarPay-X」を接続することで、店舗側が新たな決済端末を導入することなくステーブルコイン決済に対応できる点が注目されます。
  • 発行体・ウォレット・ゲートウェイの連携:ステーブルコイン発行体のJPYC社、ウォレットを提供するBitget Wallet、決済ゲートウェイのネットスターズがそれぞれの役割を担い、日常決済への導入ハードルを下げる現実解が提示されました。
  • AI決済など未来のユースケース:プログラムと相性の良いステーブルコインは、AIエージェントが予約や購買、支払いを自動で代行する次世代のデジタル決済手段として期待されています。
  • 国内の商用化に向けた動き:JPYCによる越境決済の完了や、北陸銀行とディーカレットDCPによる「DCJPY」決済事業の基本合意など、国内でも実用化に向けた動きが活発化しています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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