FRBなど米5機関がステーブルコイン発行体に銀行並みの本人確認を義務付ける規則案を公表

FRBなど米5機関がステーブルコイン発行体に銀行並みの本人確認を義務付ける規則案を公表

米連邦準備制度理事会(FRB)をはじめとする米国の5つの金融規制当局は2026年6月18日、決済用ステーブルコインの発行体に対し、銀行と同水準の顧客識別プログラム(CIP)の維持を義務付ける規則案を共同で公表しました。この規則案は、2025年7月に成立した「GENIUS(ジーニアス)法」の施行に向けた取り組みの一環であり、マネーロンダリングやテロ資金供与への対策を強化することを目的としています。ステーブルコイン発行体が銀行秘密法に基づく金融機関として扱われることで、米国のデジタル資産市場における規制の明確化が進む一方で、従来の匿名取引が困難になるなど、今後のビジネスモデルや実務への影響が注目されます。

共同規則案の背景とGENIUS法に基づく位置づけ

FRBなど米5機関がステーブルコイン発行体に銀行並みの本人確認を義務付ける規則案を公表

今回公表された130ページに及ぶ規則案は、FRBのほか、米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)、米通貨監督庁(OCC)、米連邦預金保険公社(FDIC)、全米信用組合監督庁(NCUA)の5つの規制当局が共同で策定したものです。

この提案の法的根拠となっているのが、2025年7月にトランプ大統領が署名し成立した「GENIUS(ジーニアス)法(Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act)」です。同法は、決済用ステーブルコインの発行者を銀行秘密法(BSA)上の金融機関として位置づけています。今回の規則案はこれを受けたもので、認可された決済用ステーブルコイン発行体(PPSI)に対し、銀行や信用組合が実施しているものと同等の顧客識別プログラム(CIP)の構築および維持を義務付ける内容となっています。

義務付けられる顧客識別プログラム(CIP)の具体的内容と影響

規則案が正式に採択された場合、対象となるステーブルコイン発行体は、顧客との取引開始前(口座開設や直接のトークン償還時など)に、銀行口座の開設時と同様の厳格な本人確認(KYC)を実施することが求められます。

これにより、発行体と直接取引を行う利用者は、匿名のままで取引を行うことが困難になるとされています。ブロックチェーンの技術的特徴である「ウォレットアドレスに氏名が紐付かない」という性質と、従来の金融システムにおける本人確認手法をどのように運用面で整合させるかが、今後の実務的な課題になると見られます。一方で、この規制はステーブルコインを用いた不正資金の移動リスクを軽減し、米国の金融システムと国家安全保障を保護するための適切な枠組みを構築する狙いがあるとされています。

米国におけるステーブルコイン規制をめぐる最近の動向と今後の予定

米国内では、ステーブルコインに対する規制整備の動きが急速に進んでいます。2026年4月には米財務省が新規制案を発表し、ステーブルコインの利回りをめぐる伝統的金融機関との対立が報じられました。さらに、2026年6月11日にはニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)がジーニアス法に合わせて準備資産要件を強化する規則案を提示したほか、6月17日には米超党派議員がステーブルコイン規制において州の権限を維持するよう財務省に要請するなど、連邦政府と州政府の役割分担をめぐる議論も活発化しています。

今回公表された規則案については、連邦官報に掲載された後、60日間にわたってパブリックコメント(意見公募)が募集されます。現時点では法的拘束力はなく、今後は寄せられた意見をもとに最終的な規則内容の調整が進められる予定です。

ポイント

  • FRBやFinCENなど米5機関が、決済用ステーブルコイン発行体に銀行と同水準の本人確認(KYC)を義務付ける規則案を公表しました。
  • 2025年7月に成立した「GENIUS法」に基づき、ステーブルコイン発行体を銀行秘密法上の金融機関として規制対象に位置づけるための具体的なステップとなります。
  • 規則案が導入された場合、発行者と直接取引を行う利用者の匿名取引が困難になるため、ウォレットの運用やビジネスモデルに大きな影響を与える可能性があります。
  • 米国内では、州の規制権限や準備資産要件、利回りをめぐる議論など、ステーブルコインを巡る法整備が多角的に進められています。
  • 規則案は連邦官報への掲載後、60日間の意見公募期間を経て、最終的な調整が行われる見通しです。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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