イングランド銀行(英国の中央銀行)は、2027年から導入予定の新たなステーブルコイン規制フレームワークの計画を発表しました。今回の発表では、これまで検討されていた個人や企業に対するステーブルコインの保有上限が撤廃される一方、金融システムの安定性を維持するため、個々の発行体に対して400億ポンド(約530億ドル)の発行上限が設定されます。この規制は、デジタル通貨を英国の正式な金融システムに安全に統合し、システムリスクを軽減することを目的としています。
保有上限の撤廃と発行上限の設定
イングランド銀行が提案した新たな規制フレームワークでは、ユーザー側の保有制限から発行体側の発行規模管理へと方針が転換されました。当初検討されていた個人や企業に対するステーブルコインの保有上限は撤廃され、代わりにシステム上重要なステーブルコインの個々の発行体に対し、400億ポンド(約530億ドル)の一時的な発行上限(ガードレール)が課されます。
この措置は、従来の銀行システムからデジタル通貨への急激な資金流出を防ぎ、金融市場や信用供与の安定性を維持するための措置とされています。米国や欧州連合(EU)の規制では、自国通貨建てステーブルコインに対してこのような一律の発行上限は設けられておらず、英国独自の慎重なアプローチが維持される形となります。
裏付け資産の管理とコンプライアンス要件
新フレームワークでは、ステーブルコインの信頼性を担保するため、厳格な裏付け資産の管理が義務付けられます。発行体は、裏付け資産の少なくとも30パーセントを中央銀行に直接、無利息預金として保持する必要があります。残りの最大70パーセントについては、短期の英国政府債などの適格資産で運用することが認められる見通しです。
さらに、消費者保護要件の遵守や、すべての認可された発行体に対する義務的なコンプライアンス監査の実施も規定されています。これらの措置により、ユーザーがいつでも確実に償還できる環境を整え、デジタル決済への信頼を高める狙いがあります。
業界への影響と今後のスケジュール
この規制フレームワークは、2027年からの運用開始を予定しています。保有上限の撤廃により、企業や大口の利用者がステーブルコインを制限なく保有・活用できるようになるため、実用性が向上する可能性があります。
一方で、厳しい発行上限や中央銀行への預入義務は、発行体のビジネスモデルや収益性に影響を与える可能性があると指摘されています。イングランド銀行は、安全性を最優先しながらも、決済市場における選択肢とイノベーションを広げるためのマイルストーンとしてこの規制を位置づけています。
ポイント
- 個人や企業に対するステーブルコインの保有上限が撤廃され、ユーザー側の制限がなくなりました。
- 金融安定性を維持するため、個々のステーブルコイン発行体に対し、400億ポンド(約530億ドル)の一時的な発行上限が設定されます。
- 発行体は裏付け資産の最低30パーセントを中央銀行に直接保持することが義務付けられます。
- 消費者保護の徹底や、すべての認可された発行体に対する義務的なコンプライアンス監査が導入されます。
- この新たな規制フレームワークは2027年からの運用開始を予定しており、英国金融システムへのデジタル通貨の正式な統合に向けた重要な一歩となります。