米国の予測市場(未来の出来事に対して予測を売買する市場)大手であるKalshi(カルシ)は、イリノイ州が新たに可決した州法「上院法案3019号(SB3019)」を不服として、同州を連邦地方裁判所に提訴しました。この州法は、スポーツイベント契約を提供する予測市場に対して高額な州ライセンスの取得を義務付けるものであり、連邦法に違反すると主張されています。また、同法には暗号資産(仮想通貨)取引への課税も盛り込まれており、業界全体から強い反発を招いています。本件は、連邦政府と州政府による規制の管轄権を巡る象徴的な法廷闘争として、今後のWeb3ビジネスに大きな影響を及ぼす可能性があります。
イリノイ州法SB3019とKalshiによる提訴の背景
予測市場プラットフォームを運営するKalshiは2026年6月23日、米イリノイ州北部地区連邦地方裁判所に訴状を提出しました。先週成立した同州の「上院法案3019号(SB3019)」は、スポーツに関連する予測市場の運営企業に対し、州独自のライセンス取得を義務付けています。Kalshi側は、このライセンス取得に数百万ドルの費用を要し、これに応じない場合は刑事罰の対象になり得るとして、7月1日の法律施行によって「取り返しのつかない損害」を被ると訴えています。
さらに、この州法に関連して7月1日に発足する「Sports Wagering Fund(スポーツ賭博基金)」では、スポーツ関連の予測市場における賭けの総収入に対して15%の課税が行われます。また、同予算法には暗号資産取引に対する0.2%の課税も含まれており、業界関係者からは「最も懲罰的な」税制であるとして激しい非難が上がっています。
連邦と州の管轄権を巡る対立構造
今回の提訴における最大の争点は、予測市場に対する「規制の管轄権」がどこにあるかという点です。
連邦機関であるCFTC(アメリカ商品先物取引委員会)は、商品取引所法(CEA)に基づき、予測市場で取引されるイベント契約を「スワップ」と位置づけ、自らが独占的に管轄する権限を持つと主張しています。これに対し、イリノイ州などの地方自治体は、予測市場を州が規制すべき「スポーツ賭博」として位置づけており、双方の解釈が真っ向から対立しています。
こうした管轄権の争いはイリノイ州に留まらず、全米規模に拡大しています。トランプ政権下のCFTCは、イリノイ州のほかにもニューメキシコ州、ケンタッキー州、ミネソタ州などの複数州を相手に、独自の規制施行を阻止するための提訴を行っています。専門家の間では、この連邦と州による管轄権の対立は、最終的に連邦最高裁の判断によって決着するとの見方が示されています。
Web3業界およびビジネスへの影響
今回の動向は、暗号資産やブロックチェーン技術を活用したサービスを展開するWeb3業界のビジネスパーソンにとって、極めて重要な意味を持ちます。
第一に、州独自のライセンス制度や高額な課税が認められた場合、予測市場を運営する企業の参入障壁や運営コストが劇的に上昇します。これは、米国市場におけるWeb3ビジネスの成長を阻害する要因となり得ます。
第二に、イリノイ州が導入した暗号資産取引への0.2%課税のように、州レベルで独自の厳しい税制が整備されることは、仮想通貨取引の流動性低下や企業の州外流出を招く懸念があります。
第三に、CFTCによる独占的管轄権が法的に認められるか、あるいは各州による個別の賭博規制が適用されるかという司法判断は、今後のWeb3関連サービスが準拠すべき法的なフレームワークを決定づけることになります。
ポイント
- 予測市場大手のKalshiが、スポーツイベント契約に関する州ライセンスの義務付けに反発し、イリノイ州を提訴しました。
- イリノイ州の州法「SB3019」は、スポーツ予測市場への15%課税や暗号資産取引への0.2%課税を含んでおり、業界から強い反発を招いています。
- 連邦機関であるCFTCが予測市場の独占的管轄権を主張する一方、州側はスポーツ賭博として規制を試みており、管轄権の争いが全米で激化しています。
- この法廷闘争は最終的に連邦最高裁で決着する可能性があり、今後のWeb3関連ビジネスの法的な安定性や運営コストに大きな影響を与える点で注目されます。