旧セルシウス債権者に売却の道か:ビットコイン採掘からAIインフラへと舵を切るIonic Digitalがナスダック直接上場を申請

かつて破綻した暗号資産レンダーであるセルシウス(Celsius)の資産を引き継ぐ形で設立されたアイオニック・デジタル(Ionic Digital)が、ナスダックへの直接上場を申請しました。同社はビットコインの採掘(マイニング)事業から、需要が急増する人工知能(AI)や高性能計算(HPC)に対応するデジタルインフラ企業への事業転換を急ピッチで進めています。今回の直接上場は、破産再建手続きによって同社株を割り当てられた旧セルシウス債権者に対し、公の市場で株式を売却できる出口を提供する重要な節目となります。

セルシウス再建のシンボルがナスダックへ直接上場を申請

旧セルシウス債権者に売却の道か:ビットコイン採掘からAIインフラへと舵を切るIonic Digitalがナスダック直接上場を申請

アイオニック・デジタルは2026年6月29日、米証券取引委員会(SEC)に対し、ナスダック(Nasdaq Global Select Market)への直接上場を申請しました。予定されているティッカーシンボルは「IOND」で、登録された既存株主は最大1080万株のクラスA株を売却できる見通しです。

同社は、2022年に破綻した暗号資産レンディング大手セルシウスの破産再建計画に基づき、セルシウスのマイニング部門(セルシウス・マイニング)の資産を引き継ぐ形で2024年に設立されました。今回の直接上場は、同社が新たに資金を調達するものではなく、既存の株主に公開市場での取引機会を提供することを目的としています。これにより、再建計画の過程でアイオニック株を受け取った旧セルシウスの債権者らが、保有株を公の市場で売却できる可能性が開かれます。

ビットコイン採掘からAIインフラへの大胆な転換

アイオニック・デジタルは2025年以降、従来のビットコインマイニング事業から、AIや高性能計算(HPC)の需要に応えるデジタルインフラ企業へと事業の軸足を移し始めています。

この転換の象徴となっているのが、テキサス州ウォード郡に位置する234メガワット規模のデータセンター施設です。もともとはビットコイン採掘用に開発されたこの拠点を、同社は2025年10月にAIインフラ企業のエヌスケール(Nscale)へ126カ月間にわたりリースする契約を結びました。このリース契約による契約済み収益は約20億ドル(約3252億円)に上るとされています。

さらに、必要な電力容量や承認が確保されれば、契約規模をさらに89メガワット分拡大する可能性もあり、その場合の将来的な契約済み収益は約26億ドル(約4228億円)に達する見込みです。

財務状況への影響と今後のインフラ開発

この大胆な事業転換は、同社の業績にも顕著に現れ始めています。提出されたSECの書類によると、同社は2026年第1四半期に、デジタルインフラのリース収益として4400万ドル(約71億5000万円)を計上しました。

一方で、テキサス州の施設を転用し、稼働するビットコイン採掘機を減らした影響により、同四半期のビットコイン採掘収益は前年同期比82%減の740万ドル(約12億円)にまで落ち込んでいます。

なお、今回の上場申請に先立ち、同社は2026年6月26日に4億ドル(約650億円)の株式私募を完了しています。最高経営責任者(CEO)のアンディ・スチュワート氏は、この調達資金をデジタルインフラ資産の継続的な開発を支える一般的な企業目的に充てるとしています。

ポイント

  • 破綻したセルシウスの資産を継承したアイオニック・デジタルが、ナスダックへの直接上場(ティッカー:IOND)を申請しました。
  • 今回の上場は直接上場であり新規の資金調達は行わず、旧セルシウス債権者を含む既存株主に市場での売却機会を提供することを目的としています。
  • 同社はビットコイン採掘からAIおよび高性能計算(HPC)向けのデジタルインフラ企業への転換を進めています。
  • テキサス州の施設をAIインフラ企業エヌスケールに長期リースし、すでに約20億ドルの契約済み収益を確保しています。
  • 事業転換に伴い、2026年第1四半期にはビットコイン採掘収益が減少した一方で、4400万ドルのリース収益を計上しています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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