大手暗号資産取引所のバイナンスおよび創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏らを相手取り、英国の投資家1,692人がロンドン高等裁判所に集団訴訟を起こしました。原告側は、バイナンスが2019年9月頃から英国の消費者に向け、認可なくデリバティブ(金融派生商品)を販売・宣伝したと主張しています。請求総額は1億5,000万ポンド(約323億円)以上に達しており、バイナンスはこれに対して争う方針を示しています。
訴訟の概要と原告側の主張
訴訟は2026年6月29日に提起されました。原告側の代理人を務めるKPロー法律事務所は、トーマス・スタス氏を代表原告として、バイナンスが2019年9月13日頃から英国の消費者に対してレバレッジトークン、暗号資産先物、オプション、証拠金取引商品を認可なく販売および宣伝したと主張しています。
原告側は、英国の金融サービス・市場法(FSMA)違反を根拠に、損害賠償や損失補填、そして1981年上級裁判所法に基づく利息の支払いを求めています。
訴訟の被告として、以下の3者および不特定多数の人物が列挙されています。
1. ケイマン諸島に登記されているバイナンス・ホールディングス
2. アブダビに登記されているネスト・エクスチェンジ
3. 創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏
4. バイナンスのプラットフォームを運営していた、または運営する不特定人物
原告側は、CZ氏とバイナンス・ホールディングスについて、実際のプラットフォーム運営主体と共同設計のもとで行動したとして、共同不法行為の責任があると主張しています。
請求額と英国における規制の経緯
裁判書類に記載された請求額は20万ポンド超となっていますが、これは提訴時の裁判所手数料を算定するための最低金額区分にすぎません。代理人であるKPロー法律事務所が明らかにした実際の請求総額は、1億5,000万ポンド(約323億円)以上に上るとされています。原告の中には、数万ポンド規模の損失を被ったと主張する個人投資家も含まれています。
英国の金融規制当局である金融行為規制機構(FCA)は、2021年に個人投資家向けの暗号資産デリバティブ商品の提供を禁止しました。バイナンスはこれを受けて、英国のユーザーに追加情報の入力を求めるなど、一部のアクセス制限を導入していました。しかし、2019年からの販売行為を問題視する原告側との間で、過去の営業活動に関する法的な責任が争点となっています。
欧州における規制強化とバイナンスの動向
バイナンスは欧州市場において、新たな規制への対応を迫られています。欧州連合(EU)で暗号資産市場規制(MiCA)が施行される中、ライセンスを未取得のバイナンスは欧州でのサービスを停止する動きを見せています。この状況を好機と捉え、コインベースやOKXといった他の大手取引所が、移行するユーザーを獲得するためのキャンペーンを展開しています。
また、バイナンスはギリシャで進めていたMiCAライセンスの申請を今月(2026年7月)取り下げました。CZ氏はメディアに対し、申請自体は要件を完全に満たしており承認間近であったものの、政治的な圧力によって頓挫したと説明しているとされています。
今回の英国における集団訴訟や欧州でのライセンス申請の取り下げは、グローバルに展開する暗号資産取引所が、過去のサービス提供に対する法的責任と、厳格化する最新の規制への適応という二重の課題に直面していることを示しています。
ポイント
英国の投資家1,692人がバイナンスと創業者のCZ氏らを相手取り、無認可でのデリバティブ商品販売をめぐって集団訴訟を提起しました。
実際の請求総額は1億5,000万ポンド(約323億円)以上に上り、原告側は英国の金融サービス・市場法(FSMA)違反による損害賠償などを求めています。
英国では2021年に個人向け暗号資産デリバティブの提供が禁止されており、バイナンスによるそれ以前からの販売行為が主な争点となっています。
欧州市場における暗号資産市場規制(MiCA)の施行に伴い、バイナンスがライセンス未取得のまま一部サービスを停止したり、ギリシャでのライセンス申請を取り下げたりするなど、規制をめぐる変化が相次いでいます。
暗号資産取引所に対する過去の無認可営業や規制違反への法的追及は、今後のWeb3ビジネスにおける法遵守やコンプライアンス体制の構築がいかに重要であるかを示す事例として注目されます。