デジタルアイデンティティプロジェクトであるHumanity Protocol(ヒューマニティ・プロトコル)は、3600万ドル(約3600万米ドル)規模のハッキング被害に遭ったことを受け、企業向けAI(人工知能)事業へと戦略的な方針転換を行うことを明らかにしました。創設者のTerence Kwok氏によると、流出した資金が回収できる可能性は低いと見られています。今回のハッキングを契機に、以前から検討されていた事業計画を前倒しし、AI企業向けのアイデンティティおよび資産認証製品の開発に注力する方針です。
ハッキング被害の概要と対応状況
報道によると、Humanity Protocolは2026年6月にセキュリティ侵害を受け、約3600万ドルに相当する「H」トークンが流出する被害に遭いました。この攻撃は、開発者のノートパソコンがフィッシングメールによって侵害され、秘密鍵が流出したことが原因とされています。攻撃者はマルチシグ(複数署名)ウォレットにアクセスし、トークンの不正流出や新規発行を行い、結果としてトークンの価格は急落しました。
創設者のTerence Kwok氏は、盗まれた資金の回収可能性は極めて低いと認めています。プロジェクトは現在、香港などの法執行機関に報告して捜査に協力しているほか、新たなトークンの移行や被害者への補償手続きなどのエコシステム再建に向けた取り組みを進めているとされています。
企業向けAI事業へのシフトと背景
Humanity Protocolはこれまで、ブロックチェーン技術を用いた「Proof of Personhood(人間性証明:実在する人間であることを証明する技術)」のアイデンティティプラットフォームとして活動してきました。しかし今後は、企業向けAI顧客を対象とした製品やサービスの構築に焦点を移す方針です。
Kwok氏によると、この企業向けAIへの移行はハッキングが発生する前の6〜9ヶ月前から社内で議論されていた戦略であり、今回のハッキング事件がその移行を加速させる引き金になったと説明されています。
AIシステムが普及する中で、人間や資格情報を検証するための強力な手段が必要となるため、デジタルアイデンティティ技術は今後も同社の事業において重要な位置を占めると見られています。同社はすでにAI企業向けの製品テストを開始しており、今後は企業向けサービスの提供をさらに拡大する計画です。
プロジェクトの現状と実績
Humanity Protocolはこれまでに、雇用や資産、信用スコアリングをサポートする資格情報プラットフォームを開発しており、クレジットカード大手のMastercardと共同で資産証明アプリケーションの開発に取り組むなどの実績があります。
同プラットフォームの登録ユーザー数は約1000万人に達しており、そのうち数百万人(a couple of million)が資格情報の登録を完了しているとされています。ハッキングという大きな困難に直面したものの、これまで培ったアイデンティティ技術を活用し、AI時代における企業向けソリューションとしての再起を図る形となります。
ポイント
- Humanity Protocolは、3600万ドル規模のハッキング被害を受け、企業向けAI(人工知能)分野へ戦略的に方針転換することを発表しました。
- 流出した資金の回収可能性は極めて低いとされており、プロジェクトは法執行機関への捜査協力や、トークン移行によるエコシステム再建を進めています。
- 今回の企業向けAIへの方針転換は数ヶ月前から計画されていたものであり、ハッキング事件を機にその移行スケジュールが前倒しされました。
- AIの普及に伴い、人間や資格情報の信頼性を担保するデジタルアイデンティティ技術の重要性が増すと見られており、同社はこれまでの実績を活かしてAI企業向けの認証製品を強化していく方針です。