タイ中央銀行とSECがUSDT取引の共同監査を開始、大口の現金預金にも資金証明を義務付けへ

タイ中央銀行とタイ証券取引委員会は、地下経済の抑制や不正な資金流出の防止に向け、ステーブルコインであるテザー(USDT)の大口取引に対する共同監査を開始しました。また、2026年第4四半期からは、500万バーツ(約15万ドル)以上の現金預け入れに対して資金源の証明を義務付ける新たな規制の導入も検討されています。これらの措置は、所有権の隠匿や正規の送金ルートを回避する取引を特定し、国内の金融安定性を維持することを目的としています。

USDT大口取引に対する共同監査の背景と目的

タイ中央銀行とSECがUSDT取引の共同監査を開始、大口の現金預金にも資金証明を義務付けへ

タイ中央銀行のVitai Ratanakorn総裁は、2026年7月11日に一連の規制強化策を発表しました。中央銀行と証券取引委員会による共同監査は2026年第3四半期から開始されており、同年第4四半期に向けて本格的に拡大される予定とされています。

この監査がUSDT(米ドルに価値が連動する暗号資産)に焦点を当てている背景には、タイ国内の暗号資産取引プラットフォームにおける取引実態があります。2026年1月に行われた調査によると、タイのプラットフォームでUSDTを売却している主体の約40%が外国人(非居住者)であることが判明しました。当局は、本来国内で取引を行うべきではない外国人が、所有権を隠匿したり、正規の送金チャネルを回避したりするためにUSDTを利用している可能性を懸念しています。

タイの暗号資産市場の1日平均取引高は約28億バーツと、外国為替市場の100億から150億バーツに比べて小規模ですが、グレーな資金移動の温床となるリスクを排除するため、当局は厳格な監視に乗り出しました。

500万バーツ以上の現金預け入れに対する資金証明の義務化

USDT取引の監査と並行して、タイ中央銀行は現金取引に対する規制も強化します。2026年第4四半期より、500万バーツ(約15万ドル)以上の現金を銀行に預け入れる際、預け入れ人に対して資金の出所を証明する書類の提出を義務付ける措置が検討されています。

タイでは、2026年4月に500万バーツ以上の現金引き出しに対して、電子送金や小切手を使用できない商業的な理由の提示を義務付ける規制をすでに導入しています。この規制により、高額な現金引き出し件数は全国で35%減少しました。また、規制の影響はゴールド(金地金)市場にも及び、月間の金引き出し量は4,000kgから約700kgへと82%減少したとされています。

今回の預け入れ側への規制導入は、引き出し側と合わせて資金の流れを双方向からコントロールし、グレーな資金が銀行システムに流入するのを防ぐ狙いがあります。

業界およびビジネスへの影響

タイの証券取引委員会は、2025年3月にICO(イニシャル・コイン・オファリング)関連の活動においてUSDTやUSDCなどのステーブルコインの取引を承認したばかりでした。しかし、今回の共同監査の開始により、タイ国内の暗号資産取引所や関連事業者に対するコンプライアンス(法令遵守)要求は急速に高まると見られます。

大口のUSDT取引を行うユーザーや事業者に対しては、実質的な所有者の開示や、取引の正当性を証明する手続きが求められる可能性が高く、取引プロセスの厳格化や流動性への影響が懸念されます。

ポイント

  • タイ中央銀行と証券取引委員会は、所有権の隠匿や不正送金を防ぐため、USDTの大口取引に対する共同監査を開始しました。
  • 2026年第4四半期より、500万バーツ(約15万ドル)以上の現金預け入れに対して、資金源の証明を義務付ける新たな規制が検討されています。
  • 2026年1月の調査で、タイ国内のプラットフォームにおけるUSDTの売り手の約40%が外国人であることが判明し、規制強化の大きな要因となっています。
  • すでに2026年4月に導入された現金引き出し規制により、大口の現金引き出しが35%減少、金の引き出しが82%減少するなどの成果が出ており、預け入れ規制と合わせて金融監視体制が強化されます。
  • 2025年3月にステーブルコインの取引を認可したタイですが、今回の共同監査により、暗号資産事業者や大口取引者へのコンプライアンス要件が厳格化する可能性があります。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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