国内のデジタル証券(セキュリティ・トークン、以下ST)の発行・管理プラットフォームとしてトップシェアを誇る「Progmat(プログマ)」は、2026年7月13日、分散型台帳「Corda5」から「Avalanche L1」への移行プロセスを完了したと発表しました。これにより、Progmat上で取り扱う総額4,520億円超のすべてのST案件がEVM互換となり、パブリックチェーン環境におけるコンポーザビリティ(相互運用性)が実現します。今回の基盤刷新は「Project Keystone(プロジェクト・キーストーン)」として進められてきたもので、既存の利用企業や発行済み案件への影響を最小限に抑えつつ実行されました。
EVM互換化と「mediator」の導入がもたらす高い相互運用性
今回の移行により、Progmat上の全ST案件が、イーサリアムと同一の開発環境で動作する「EVM(イーサリアム仮想マシン)互換」となりました。これにより、金融機関が求める厳格な利用要件やコンプライアンス(法令順守)水準を維持しながら、パブリックチェーン上の異なるプロトコルやアプリケーションとの間で、コンポーザビリティ(異なるプロトコルやアプリケーションを組み合わせて連携できる性質)を確保することが可能になります。スマートコントラクトは従来のJavaベースのCorda形式から、SolidityベースのEVM形式へと切り替えられました。
また、基盤刷新に伴い、新たにブロックチェーン連携レイヤー「mediator(メディエーター)」を導入しました。これにより、業務機能と台帳の実装が分離され、特定のブロックチェーンに依存しない柔軟なアーキテクチャへと変更されています。この仕組みの整備により、将来的な複数チェーンへの対応や、ステーブルコイン、トークン化預金との連携、異なるチェーンをまたいだ同時決済など、機関投資家の本格参入に伴う高度な業務要件にも対応できるようになる見込みです。
なお、移行前の基盤であったCorda5は許可(パーミッション)型の分散型台帳とされており、移行先のAvalanche L1はアバランチ(Avalanche)ネットワーク上に構築されたEVM互換のブロックチェーンとされています。
処理速度の向上と構築コストの削減
新基盤への移行は、システム性能や運用の効率性においても大きなメリットをもたらします。
権利移転処理の速度は、従来のCorda5と比較して約3倍から5倍に向上しました。これにより、Avalanche L1上でのトランザクションのファイナリティ(決済確定時間)は2秒未満となり、ほぼ即時の決済が可能になります。
さらに、これまで利用企業ごとに個別で構築する必要があったCordaノードの追加が不要となったため、新規利用企業が環境を構築する際にかかるリードタイムやコストの大幅な削減が見込まれます。既存の機能や仕様は維持されたまま移行が実現したため、発行済み案件や既存利用企業への影響は最小限に抑えられたとしています。
金融インフラとしての安全性とオンチェーン化への展望
今回の移行にあたり、セキュリティ面や信頼性の確保も重視されています。アバ・ラボ(Ava Labs)が提供するクラウドサービス「AvaCloud(アバクラウド)」が、SOC1およびSOC2 TypeII(受託業務の内部統制に関する保証報告書)認証を追加で取得したことで、金融事業者が求める水準のコンプライアンスが担保されました。また、Progmat社とアバ・ラボは休日や夜間を含む障害対応体制も整備しています。
国内のWeb3・金融業界では、三井住友信託銀行がイーサリアム上でトークン化MMF(マネー・マーケット・ファンド)の実証を進めるなど、パブリックブロックチェーンの活用を視野に入れた取り組みが広がっています。Progmatの代表取締役Founder & CEOである齊藤達哉氏は、今回の移行完了を「日本のST市場がグローバルなRWA(現実資産)エコシステムと本格的につながる象徴的な成果」と位置付けています。
今後の具体的な展開として、Progmatが運営するデジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)は、日本国債のトークン化とステーブルコインを活用したオンチェーン・レポ取引の検討を開始しており、2026年10月に報告書を公表する予定です。
ポイント
- Progmat上の全デジタル証券(ST)案件(総額4,520億円超)の「Avalanche L1」への移行が2026年7月13日に完了しました。
- 全案件がEVM(イーサリアム仮想マシン)互換となり、金融機関の要件を満たしながらパブリックチェーンとの相互運用性が実現する点で注目されます。
- ブロックチェーン連携レイヤー「mediator」の導入により、特定のチェーンに依存しない設計となり、将来的な複数チェーン対応やステーブルコイン等との連携が視野に入ります。
- 権利移転の処理速度が従来比3〜5倍に高速化され、2秒未満のファイナリティによる「ほぼ即時決済」が可能になりました。
- 既存の利用企業や発行済み案件への影響を最小限に抑えつつ移行が行われ、新規利用企業における構築コストやリードタイムの削減も期待されます。