国内初の信託型日本円ステーブルコインであるJPYSCを共同展開するSBI VCトレードとStartale Groupは、2026年度内に流通規模を1000億円規模まで拡大する目標を掲げました。両社はステーブルコイン単体での事業化にとどまらず、独自チェーンやトークン化資産と垂直統合したオンチェーン金融のインフラ構築を目指しています。100万円の送金上限がない信託型の強みを活かし、まずはアセットマネジメント分野から普及を図る方針です。
2026年度末までに流通規模1000億円を目指す背景
2026年7月13日に開催されたWebX 2026のパネルセッション「JPYSCが描く信託型円ステーブルコインの未来 — 決済インフラとしての可能性と課題」において、Startale GroupのCEOである渡辺創太氏と、SBI VCトレードの代表取締役社長である近藤智彦氏が登壇しました。両氏は、JPYSCが社会的な影響力やビジネスとしてのインパクトを生み出すための最低ラインとして、2026年度末までに流通規模を4桁億円、すなわち1000億円規模に到達させる必要があるという共通の認識を示しました。
現在、JPYSCはSBI VCトレードの口座内でのみ利用可能となっていますが、両氏は、パブリックチェーン上での流通開始が普及拡大の前提条件になると指摘しています。
ステーブルコイン単体ではないオンチェーン金融の垂直統合
渡辺氏は、JPYSCを単一の事業としてではなく、より広範なオンチェーン金融戦略の一部として位置づけていることを強調しました。海外においてCoinbaseやStripe、Circleなどの企業がステーブルコインを中心にエコシステムを構築している例を挙げ、SBIグループとStartaleグループも同様に、独自チェーン「Strium(ストリウム)」、ステーブルコイン、トークン化資産、ウォレットを垂直統合したインフラ展開を進める考えを示しました。
なお、Striumは、SBIホールディングスとStartale Groupが共同開発する、あらゆる金融資産のオンチェーン取引・決済に特化したレイヤー1ブロックチェーンとされています。
株式や債券、不動産などの資産がオンチェーン化されるほど日本円ステーブルコインの需要も拡大し、配当金や利払いなどの決済手段としての利用が広がるとの見通しが語られました。
決済は最後──信託型の強みを活かした資産運用からのアプローチ
日本円ステーブルコインの用途について、渡辺氏は「決済は最後に来る」と指摘し、当面は日本と海外の金利差を活用した資産運用やキャリートレードなど、アセットマネジメント分野での活用が有望であるとの見解を示しました。世界中の投資家が日本円ステーブルコインを数秒で取得・利用できるようになれば、日本のプレゼンス向上にもつながるとされています。
また、近藤氏は、JPYSCが信託型ステーブルコインであるため、資金移動型電子決済手段に適用される100万円の送金上限の対象外となる点を強調しました。JPYSCは日本の資金決済法における第3号電子決済手段に分類されており、そのため100万円の送金・滞留上限を受けないとされています。これにより、法人取引や大口送金など、これまでのUSDC等では難しかった大口取引での活用が期待されています。
具体的なユースケースとして、SBI VCトレードは2026年7月16日から、国内初となる信託型ステーブルコインレンディングサービス「JPYSCレンディング」を開始することを発表しました。当初募集は12週間満期、年率3%で提供される予定です。
ポイント
- 流通規模1000億円の目標:社会的なインパクトを生み出すため、2026年度末までに1000億円規模への拡大を目指しており、パブリックチェーン上での流通が普及の鍵とされています。
- オンチェーン金融の垂直統合:ステーブルコイン単体のビジネスではなく、独自チェーンであるStriumやトークン化資産、ウォレットなどを統合した、日本発のオンチェーン金融インフラの構築を狙いとしています。
- 100万円制限なしの強み:信託型ステーブルコインであるため、資金移動型に適用される100万円の送金上限がなく、法人や大口送金において大きな優位性があります。
- 資産運用からの普及アプローチ:用途としての決済は長期的視野とし、まずは金利差を活かした資産運用や、7月16日から開始される年率3%のJPYSCレンディングなどのアセットマネジメント分野から普及を進める方針です。