英国政府が支援する業界タスクフォースは、ホールセール(大口向け)金融市場における資産トークン化(ブロックチェーン技術を用いて資産をデジタル証券化すること)の推進ロードマップに関する報告書を発表しました。本報告書では、英国がトークン化された金融市場のリーダーとなることで、2035年までに年間経済出力を最大330億ポンド(約440億ドル)押し上げる可能性があると試算されています。ロードマップは、2027年初頭(2027年第1四半期)までに英国初となるトークン化されたデジタル国債(デジタル・ギルト)の発行を求めており、トークン化された債券の取引や担保としての実用化を目指しています。これにより、これまでの限定的な実証実験から、実際の市場で取引・決済・担保利用が可能な「実用化と規模拡大」の段階へと移行させることが期待されています。
経済効果と世界のトークン化市場の予測
報告書は、英国財務省から「ホールセール・デジタル・マーケット・チャンピオン」に任命されたクリス・ウーラード氏が、業界タスクフォースと共同で作成したものです。
この報告書によると、世界のトークン化された現実世界資産(RWA:不動産や国債などの現実資産をブロックチェーン上でトークン化したもの)市場は2035年までに88兆ドル規模に達すると予測されています。英国がこの分野で先導的な役割を果たすことで、2035年までに年間経済出力が最大330億ポンド(約440億ドル)増加するほか、年間140億ポンドの税収増をもたらす可能性があるとされています。
デジタル国債の発行と今後のスケジュール
本ロードマップの重要な柱の一つが、2027年第1四半期(2027年初頭)までの、英国初となるネイティブなデジタル国債(デジタル・ギルト、通称「DIGIT」)の発行です。
英国は2024年11月にデジタル・ギルトのパイロット計画を初めて発表し、2025年7月にはオンチェーン決済や二次市場開発の計画を更新、2026年2月にはHSBCの「Orion」プラットフォームを技術サポートとして指名するなど、段階的に準備を進めてきました。
今回のロードマップでは、単にデジタル国債を発行するだけでなく、二次市場でのライブ取引や、中央銀行の担保としての利用適格性を目指すなど、その役割を大幅に拡大する具体的なスケジュールが提示されています。
実証実験から市場での実用化への転換
報告書は、これまでの孤立したパイロットプロジェクト(実証実験)から、実際に有価証券が取引、決済、担保として活用される「ライブ市場(本番環境)」へと規模を拡大する重要性を強調しています。
具体的には、今後12ヶ月間で、有価証券を現金の借入(レポ取引など)に利用する金融取引においてブロックチェーン技術をテストする計画が盛り込まれています。
タスクフォースのメンバーであるRipple社などの業界企業もこの取り組みを支持しており、オンチェーンのファンドや債券、レポ取引はすでに従来のシステムよりも安価かつ迅速に機能することが証明されていると指摘しています。
ポイント
- 英国政府支援のロードマップにより、2035年までに最大330億ポンド(約440億ドル)の年間経済効果と140億ポンドの税収増がもたらされる可能性があると試算されています。
- 2027年第1四半期までに、英国初となるトークン化されたデジタル国債(デジタル・ギルト、「DIGIT」)の発行を目指す具体的なタイムラインが設定されました。
- これまでの限定的な実証実験(パイロット)の段階を脱し、実際の金融市場における取引、決済、担保利用が可能な「実用化と規模の拡大」を目指す点が注目されます。
- 今後12ヶ月間で、有価証券を用いた資金調達取引におけるブロックチェーン技術のテストが計画されています。