決済サービス大手のストライプとプライベートエクイティ大手のアドベント・インターナショナルが、決済大手のペイパルに対して共同で買収提案を行ったことが明らかになりました。提示された総額は530億ドルを超え、直近の株価に対して約28パーセントのプレミアムを上乗せした規模となっています。この買収提案が実現すれば、デジタル決済市場の勢力図が大きく塗り替わるだけでなく、近年両社が注力しているステーブルコインやブロックチェーンを活用した次世代決済領域での統合が進む可能性があると見られます。
530億ドル規模の共同買収提案と今後の交渉プロセス
ストライプとプライベートエクイティ(PE)大手のアドベント・インターナショナルは、ペイパルの買収に向けて、1株あたり60.50ドル、総額530億ドルを超える共同提案を提示しました。この提案は7月上旬にすでに提出されており、銀行団による約500億ドル規模の融資確約が背景にあるとされています。提示価格は、ペイパルの7月14日の終値である47.37ドルを約28パーセント上回る水準です。
関係者の証言によると、両社は4月上旬に最初の打診を行っており、今回の提示は再提案にあたります。現時点でペイパル側からの回答は得られていませんが、ストライプとアドベントは7月中における交渉の進展を目指しているとされています。ただし、この買収交渉が最終的に合意に達し、成立する保証はありません。
提案されている枠組みでは、買収後にペイパルを分割するのではなく、ストライプとアドベントが均等の出資比率で共同保有する形が想定されています。
ステーブルコインと決済特化型ブロックチェーン「Tempo」がもたらすシナジー
今回の買収提案は、従来の決済ビジネスの規模拡大にとどまらず、Web3や暗号資産の領域における両社の取り組みの統合という観点からも注目されています。両社はともに、実社会におけるステーブルコインの活用に深く関わってきました。
ペイパルは2023年8月に、信託会社パクソスを発行体とする米ドル建てステーブルコイン「PYUSD」をイーサリアム上で発行し、自社サービス内での決済や送金への活用を進めてきました。
一方でストライプは、近年Web3決済インフラの構築を急速に進めています。2025年には、ステーブルコインを用いた決済インフラを提供する企業であるブリッジを約11億ドルで買収しました。ブリッジは、欧州連合(EU)の暗号資産規制であるMiCAや、電子マネー機関(EMI)のライセンスを取得しており、欧州でのステーブルコイン事業の拡大を目指しています。
さらにストライプは、暗号資産投資会社のパラダイムと共同で、決済に特化したレイヤー1(基盤となる独自のブロックチェーンネットワーク)ブロックチェーン「Tempo」を開発しました。Tempoは2026年3月にメインネットを稼働させており、ステーブルコイン決済の効率化や安定した手数料設計を特徴とするネットワークとされています。このプロジェクトには、大手金融決済企業のビザや、デジタル資産カストディのゾディア・カストディがバリデーター(ネットワークの承認者)として参加しています。
もし買収が実現すれば、ストライプが構築してきた「Tempo」や「ブリッジ」などの最先端のWeb3決済インフラと、ペイパルが持つ広範なユーザー基盤や「PYUSD」などのステーブルコイン事業が統合され、Web3決済の実用化がさらに加速する可能性があると見られます。
ポイント
- ストライプとアドベント・インターナショナルが、ペイパルに対し1株あたり60.50ドル、総額530億ドルを超える共同買収提案を行いました。
- 提案は7月上旬に提出され、約500億ドルの融資確約を背景に7月中の合意を目指していますが、現時点でペイパルからの回答はなく、成立の保証はありません。
- 買収が成立した場合、ペイパルは分割されず、ストライプとアドベントが均等に出資して共同保有する体制が想定されています。
- ペイパルは米ドル建てステーブルコイン「PYUSD」を展開しており、ストライプはステーブルコイン決済基盤のブリッジ買収や決済特化型ブロックチェーン「Tempo」の稼働など、Web3決済領域を強化しています。
- 両社の統合は、次世代のデジタル決済およびステーブルコイン決済の普及において、業界全体に大きな影響を与える可能性があるとして注目されます。