米国政府は、ブラジルが推進する即時決済システム「Pix」をはじめとする非ドル決済チャネルやステーブルコインの成長を、ドルベースの貿易に対する潜在的な脅威とみなしています。これに対し米国は、ブラジル製品に対して25%の関税を課す方針を示しているとされています。しかしその一方で、ブラジル国内の暗号資産取引においては、米ドルに連動したステーブルコインが全体の約90%を占めるなど、米ドル決済が静かに浸透している実態があります。
米国がブラジルの非ドル決済推進を「潜在的脅威」と警戒
米国政府は、ブラジルによる即時決済システム「Pix」(ピックス)の普及やステーブルコインの成長など、非ドル決済チャネルの推進をドルベースの貿易に対する潜在的な脅威とみなしています。米国通商代表部(USTR)による調査の結果、米国は2026年7月22日よりブラジルからの輸入品の多くに対して25%の関税を課す方針を決定したとされています。この措置は、他国の国内決済システムを対象とした初の通商法301条の適用事例とされており、米国の決済企業であるVisaやMastercardなどに対する不利益を解消するための措置と主張されています。
ブラジル国内で急成長する決済システム「Pix」の現状
ブラジル中央銀行が2020年11月に導入した即時決済システム「Pix」は、現在ブラジルの成人人口の90%以上に利用されており、クレジットカードとデビットカードの合計を超える取引件数を処理するまでに急成長しているとされています。このシステムは消費者には無料で提供され、事業者への手数料も低く抑えられているため、ブラジル国内における金融包摂を大きく進めたとされています。しかし米国政府は、このシステムが米国の決済サービスプロバイダーを排除する不公正な貿易障壁であると批判しています。
暗号資産取引における米ドル連動型ステーブルコインの支配的地位
ブラジル政府が非ドル決済チャネルの構築を試みる一方で、民間レベルでは米ドルへの依存が逆に深まっている側面もあります。ブラジル国内における暗号資産(仮想通貨)取引のうち、米ドル連動型のステーブルコインが約90%を占めていることが報告されています。これは、ブラジル国内の決済において、米ドルを裏付けとするデジタル資産が静かに浸透していることを示しています。国家がドル依存からの脱却を目指す一方で、ユーザーは信頼性の高いドル連動型ステーブルコインを実質的な決済や資産保全の手段として選択していると見られます。
ポイント
- 米国政府は、ブラジルの即時決済システム「Pix」を含む非ドル決済チャネルの推進を、ドルベースの貿易に対する潜在的な脅威とみなしています。
- 米国はPixが自国決済企業に不利益を与えているとして、2026年7月22日よりブラジル製品に対し25%の関税を課す方針を示しているとされています。
- ブラジル政府が推進する「Pix」は、成人人口の90%以上が利用する極めて普及度の高い国内決済インフラとなっています。
- その一方で、ブラジル国内の暗号資産取引においては、米ドル連動型ステーブルコインが約90%を占めており、米ドル建て決済が実質的に浸透しています。
- 国家としてのドル依存脱却の動きと、民間におけるステーブルコインを通じたドル需要の拡大という、対照的な構図が浮き彫りになっています。