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ブロックチェーン総研by Pacific Meta

デジタル円とは?日銀CBDCの仕組みと検討状況、ステーブルコインとの違い【2026年10月時点】

デジタル円とは、日本銀行が発行を検討している円建ての中央銀行デジタル通貨(CBDC)です。2026年10月時点で発行は決まっておらず、使える時期も未定です。

円のデジタル決済は、どう変わる?
現金と預金から円建てデジタルマネーへ

日銀は2023年4月からパイロット実験で技術面の検証を続けており、導入するかどうかは国民的な議論を経て判断される段階にあります。その間に、円建ての決済では民間のステーブルコインが制度のもとで先に動き始めました。AIエージェントの支払いのように人を介さない決済も、まずは民間のデジタルマネーの上で検討が進んでいます。

  • デジタル円は日銀の債務として発行が検討される円建てCBDC
  • 2026年10月時点で発行は未決定、時期も未定
  • 日銀が台帳を管理し、銀行など仲介機関が利用者に届ける二層構造の想定
  • 円建てのデジタル決済は民間ステーブルコインが先行

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監修:ブロックチェーン総研編集部

株式会社Pacific Metaが運営する編集チームです。ステーブルコイン、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン、NFTなどのトークン活用や、オンチェーン金融、AI×ブロックチェーン領域の事業開発・実装、暗号資産の基礎知識と国内取引所の使い方まで、ブロックチェーン事業の支援で得た知見をもとに記事の企画・執筆・監修を行っています。編集部や運営会社の詳細は公式サイトと編集方針をご覧ください。

デジタル円とは日銀が発行する円建てのCBDC

デジタル円とは、日本銀行が発行を検討している円建ての中央銀行デジタル通貨(CBDC)である。日銀はCBDCを一般に、デジタル化されていること、円などの法定通貨建てであること、中央銀行の債務として発行されることの3点を満たすものと説明しています。

日銀が説明するCBDCの3つの条件

現金(日銀券)と同じく日銀の債務である点が、民間企業が発行する電子マネーとの大きな違いです。電子マネーは発行企業の信用に支えられますが、デジタル円は中央銀行そのものが価値を裏付けることになります。日銀は、誰でも24時間365日使える「現金をデジタル化したような支払決済手段」を主に想定しています。

「デジタル円」は一般的な呼び方で、日銀の資料では個人や企業を含む幅広い主体の利用を想定した「一般利用型CBDC」と呼ばれます。金融機関どうしの大口決済に使う「ホールセール型」と区別するための名称です。日銀は2021年4月に一般利用型CBDCの実証実験を始めました。ホールセール型を含むCBDC全体の仕組みと各国の動きは、CBDCの解説にあります。

デジタル円はいつから使えるか

デジタル円が使える時期は決まっていません。日銀が2026年6月に公表したパイロット実験の進捗報告書は、発行するかどうかは現時点では決定しておらず、今後の国民的議論のなかで決まっていくと記していました。

日銀と政府の検討の歩み

検討はこれまで次の順で進んできました。

時期出来事
2020年10月日銀が「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表
2021年4月実証実験(概念実証フェーズ1)を開始。発行・送金・還収などの基本機能を検証
2022年4月概念実証フェーズ2を開始。周辺機能を検証
2023年4月パイロット実験を開始。民間事業者が参加する「CBDCフォーラム」を設置
2024年1月政府の「CBDCに関する関係府省庁・日本銀行連絡会議」が初会合
2024年4月同連絡会議が「中間整理」を公表
2025年5月同連絡会議が「第2次中間整理」を公表
2026年6月日銀がパイロット実験の進捗報告書を、連絡会議が進捗報告を公表

パイロット実験は、中央システムから仲介機関、利用者の端末までを一体で組んだ実験用システムで行われています。店舗や消費者が関わる実取引は想定されていません。

発行には法整備も必要です。連絡会議の中間整理は、CBDCを現金と同じ法貨とするのが基本で、その場合は法律で定める必要があると整理しました。数年のうちに業務がデジタル円前提に切り替わる状況ではなく、先に制度ができた民間デジタルマネーへの対応が目の前の論点になります。最新の検討状況は日銀のCBDCに関するページに順次掲載されています。

デジタル円と電子マネー・ステーブルコイン・預金トークンの違い

円建てでデジタルに支払う手段は、デジタル円のほかにも複数あります。違いは誰が発行し、何が価値を支えるかです。

円建てのデジタルマネー4種
項目デジタル円ステーブルコイン(JPYC等)預金トークン電子マネー
発行主体日本銀行資金移動業者・信託会社など銀行民間企業
価値の裏付け中央銀行の債務発行体が保全する裏付け資産銀行預金発行企業の信用
発行状況未発行(検討中)国内で発行済み海外で取り組みが広がり始めた段階普及済み
主な想定用途現金に代わる支払い送金・決済・ブロックチェーン上の取引預金の決済機能の拡張店頭やオンラインの少額決済

ステーブルコインは、法定通貨と価値が連動するよう設計されたデジタルマネーです。日本では令和4年の資金決済法等の改正により、法定通貨の価値と連動するステーブルコインの仲介などを扱う新制度が2023年6月1日に始まりました。国内でこの仲介業を営むには、資金決済法または銀行法に基づく登録が必要です。

国内の代表例がJPYCです。JPYC株式会社が資金移動業者として発行する日本円建てのステーブルコインで、2025年10月27日に発行が始まりました。JPYCは資金決済法上の電子決済手段にあたり、日本円(預貯金および国債)で発行残高の100%以上を保全するとしています。

預金トークンは、銀行預金をブロックチェーンなどの技術で扱えるようにしたものです。日銀レビュー(2024年6月)は、海外で預金のトークン化の取り組みが広がり始めていると整理しました。既存の預金制度との親和性が理由に挙げられる一方、私法上の位置づけなどの論点が残るとしています。なお暗号資産は価格が変動するため、円建てで価値を保つこれらの手段とは別のものです。

デジタル円の仕組みと制度設計の論点

デジタル円は、日銀が直接個人に配るのではなく、銀行などの仲介機関を通じて届ける「間接型」が基本とされています。日銀の2020年の取り組み方針は、中央銀行と民間部門による決済システムの二層構造を維持することが適当と整理しました。

デジタル円の二層構造

論点①:二層構造

利用者は仲介機関に依頼し、現金や預金と引き換えにデジタル円を受け取ります。このとき日銀は、仲介機関が日銀に持つ当座預金を減らし、同じ額のデジタル円を発行する流れが示されています。

デジタル円を受け取るときの流れ

仲介機関は、口座の開設・解約や顧客管理、アプリなどの接点の提供、送金依頼への対応を担う想定です。取り組み方針は、民間事業者がこの上にさまざまなサービスを上乗せすることが、安定的で効率的な決済システムにつながる可能性にも触れています。

論点②:台帳の管理

中間整理は、日銀が自らの債務として一元的に発行することから、記録と確認の仕組み(台帳等)は日銀が管理するのが適当としました。ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を使うかどうかを含め、具体的な台帳設計は引き続き検討されています。

台帳の管理で決まっていること

論点③:保有上限

一人あたりの保有額に上限を設ける場合の扱いも論点です。中間整理は、上限を超える受け取りを事前に登録した口座へ自動で振り替える方法などを例に、上限を超える受け払いへの対応を検討する必要があるとしました。

保有上限を超えたときの扱いの例

論点④:オフライン決済

通信がない状態でも支払える機能は、自然災害時などの強靭性を高めるとされています。一方で提供には課題もあり、技術の進展を踏まえて検討する扱いです。

オフライン決済の利点と課題

デジタル円が検討される背景と海外のCBDC

日銀は、誰でもいつでも使える現金の役割をデジタルの決済でも保つための選択肢として、CBDCの検討を進めてきました。海外でも判断は分かれています。連絡会議の中間整理は2024年4月時点で、主要国・地域はCBDCの明確な発行判断をしていないと整理していました。

主要国と地域のCBDCへの姿勢
国・地域確認できる動き
ユーロ圏ECBが2023年10月に、デジタルユーロの準備フェーズ(2023年11月開始・当初2年間)へ移ることを決定。発行自体は将来の判断
中国中国人民銀行の白書(2021年7月)によると、デジタル人民元の実証は2019年末に深圳・蘇州などで始まり、2020年11月から上海などが加わった
米国2025年1月23日の大統領令で、法律で求められる場合を除き政府機関によるCBDCの創設・発行・推進を禁止

ユーロ圏は2023年に準備フェーズへ移り、米国は2025年に発行しない方針を明確にしました。日本は実験と制度設計の整理を進めつつ、発行の判断は保留している状態です。

デジタル円のメリットとデメリット

デジタル円には期待される利点と、繰り返し指摘される懸念の両方があります。未発行の制度なので、どちらも設計次第で大きさが変わる点を前提に読む必要があります。

デジタル円の利点と懸念
観点メリットデメリット・懸念
決済現金をデジタルで扱え、送金や精算の手間が減るシステム障害時に支払えなくなるおそれ
信用中央銀行の債務で、発行体の破綻を心配しなくてよい銀行預金からデジタル円へ資金が移り、銀行の貸出余力に影響しうる
社会インフラ誰でも使える公共の決済手段として維持できる取引データの扱い次第でプライバシーの懸念が生じる

取引データが誰にどこまで見えるかというプライバシーの懸念と、預金からの資金移動の懸念は、どちらも制度設計で大きさが変わります。中間整理が保有上限の扱いを論点に挙げているように、導入の是非はこうした設計の詰めと国民的議論で判断されることになります。

金融機関・事業会社が今から確認しておくこと

デジタル円の発行を待ってから準備を始める必要はありません。円建てのデジタル決済は、電子決済手段の制度のもとで民間のステーブルコインがすでに使える状態にあり、決済・送金・精算の設計は今から始められます。

今から確認しておく4つの観点

金融庁・三井住友銀行・JPYC・Circleなどが登壇したJapan Stablecoin Summit #2(Pacific Meta主催)でも、民間のデジタルマネーを業務にどう組み込むかが議論の中心でした。デジタル円の二層構造で仲介機関の役割が想定されている点は、銀行や決済事業者が自社の立ち位置を考える材料にもなります。

検討の目的・論点確認すること確認先(一次情報)完了の判定
自社の業務で使えるかデジタルマネーに置き換える支払い・送金・精算の業務を特定する社内の業務フロー・決済実績対象業務と月間の件数が一覧になっている
規制上の区分扱う手段が電子決済手段か、自社に登録が要る行為が含まれるか金融庁の電子決済手段等取引業の案内・資金決済法区分と登録要否の見立てを法務が確認した
会計・税務の処理受け取ったステーブルコインの会計処理と税務上の扱い監査法人・税理士仕訳の方針が文書化されている
取扱事業者・委託先発行体の登録状況、裏付け資産の保全方法、償還条件金融庁の登録業者一覧・発行体の公表資料候補事業者の比較表ができている
デジタル円への備え二層構造で仲介機関・サービス提供者として関わる余地日銀のCBDC関連資料・連絡会議の公表資料関与の方針を社内で一度議論した

デジタル円を待つか、民間のデジタルマネーで先に決済を組むかは、規制の区分、システムの接続、会計処理が同時に絡む判断です。どれか一つの部門で答えが出る問いではないため、社内の検討は論点の洗い出しで止まりやすくなります。検討の進め方はステーブルコイン導入支援の内容で整理しています。

Pacific Metaのサービス

ステーブルコイン事業を構想から実装・運用まで。

自社でもステーブルコインを保有・運用し、決済まで実践しています。要件が固まっていない段階のご相談も歓迎です。

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デジタル円に関するよくある質問

デジタル円はブロックチェーンで管理されますか?

決まっていません。連絡会議の中間整理は、台帳は日銀が管理するのが適当としたうえで、分散型台帳技術を使うかどうかを含めて具体的な設計を引き続き検討するとしています。ブロックチェーンを使うことが前提になっているわけではありません。

デジタル円が出ると銀行口座は不要になりますか?

不要になるとは考えにくい設計です。デジタル円は銀行などの仲介機関を通じて受け取る間接型が基本とされ、保有上限を超えた分を登録口座へ自動で振り替える方法も検討されています。預金とデジタル円を併用する前提で議論が進んでいます。

デジタル円とJPYCは同じものですか?

別のものです。デジタル円は日本銀行が発行を検討している段階の通貨で、まだ発行されていません。JPYCは資金移動業者のJPYC株式会社が発行する日本円建てのステーブルコインで、2025年10月から発行されています。

デジタル円のまとめと実務の論点

デジタル円は日銀の債務として発行が検討される円建てのCBDCで、2026年10月時点で発行も時期も決まっていません。日銀が台帳を管理し、仲介機関が利用者に届ける二層構造が基本とされ、保有上限やオフライン決済の扱いが制度設計の論点として残っています。

デジタル円の現状と実務の論点

その間にも、円建てのデジタル決済は民間のステーブルコインで先に動いています。デジタル円の行方を見ながら、民間のデジタルマネーでどの業務から始めるかを決めるには、規制・システム・会計をまたいだ検討が欠かせません。

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