金融庁は海外8カ国・地域の金融制度に関する委託調査報告書を公表しました。本調査は渥美坂井法律事務所・外国法共同事業がまとめた609ページの報告書で、国内金融制度の企画・立案の参考とすることを目的としています。国内では2026年7月に暗号資産規制を資金決済法から金融商品取引法へ移行する改正法が成立しており、先行する主要国の制度設計を把握する上で極めて重要な資料となります。報告書では暗号資産交換業者への監督体制に加え、米欧のステーブルコイン規制や中国・香港におけるトークン化資産への対応などが整理されています。
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国内の金商法移行と海外調査の目的
金融庁が公表した調査報告書は、2026年3月付で作成された全609ページの資料です。米国、英国、EU、中国など8つの国と地域の監督体制を網羅し、銀行、証券、保険に加えて暗号資産交換業者に関する規制を章ごとに取り上げています。
日本国内では、2026年7月15日に暗号資産を資金決済法から金融商品取引法(金商法)の枠組みへと移行する改正法が成立し、同月23日に公布されました。暗号資産に関する規定は公布日から1年以内に施行されるスケジュールとなっており、金融庁は国内の金融制度に関する企画や立案を進めるための参考資料として本調査を実施しました。
米欧で進むステーブルコイン規制の具体化
欧米ではステーブルコインに関する法整備が着実に進展しています。
米国においては、2025年7月18日に成立したジーニアス法が、ステーブルコインに関する初の包括的な連邦規制枠組みとして位置づけられました。施行日は2027年1月18日、または規制当局が最終規則を公布してから120日後のいずれか早い日と定められており、米通貨監督庁(OCC)が2026年10月21日に最終規則を公表したことから、2027年1月18日に施行される見通しです。また、2026年3月17日には米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)が共同で解釈指針を公表し、暗号資産取引が連邦証券法の対象となる判断基準を明確にしました。
EUでは、2024年12月30日に全面適用されたMiCA規則(暗号資産市場規則)の経過措置が国別に整理されました。既存業者に対する最長18カ月の猶予期間を選択したフランスやイタリアなど12カ国では、2026年6月末をもって猶予が終了しています。
英国においては、金融行為規制機構(FCA)の協議文書をもとに、ステーブルコイン発行者に対する規制案が紹介されています。具体的には、裏付け資産を発行者グループと関係のない第三者に預託することや、裏付け資産から得られる利息を保有者に分配することを禁じる方針が盛り込まれました。さらに償還請求を受けた際は、金融犯罪対策に必要な情報がそろった時点から遅くとも翌営業日の終わりまでに支払いを指図することが求められます。
中国のRWA原則禁止と香港の市場拡大
アジア地域においては、中国本土と香港で規制姿勢の二極化が顕著になっています。
中国では、中国人民銀行など8部門が2026年2月6日に暗号資産のリスク防止に関する新通知を連名で出し、2021年の旧通知を廃止しました。新通知では法定通貨との交換や取引仲介を違法な金融活動として禁止する方針を維持し、人民元連動ステーブルコインの無許可での海外発行も禁じました。さらに新通知はRWA(現実資産トークン化)も対象としており、国内での発行や取引、仲介・技術サービスの提供を原則禁止としています。例外は主管部門の正式承認を得て特定の金融インフラ上で行う場合に限定され、海外事業者が中国国内向けにRWA関連サービスを提供することも認められていません。
これに対し香港では、証券先物委員会(SFC)が2025年11月3日に通達を出し、認可を受けた取引所が取り扱えるトークン化証券の範囲を拡大したほか、海外グループ会社とのオーダーブック(注文板)の統合を認めました。また、香港財経事務及庫務局(FSTB)とSFCが2025年12月に公表した協議結論では、規制の対象を取引所の運営にとどまらず店頭取引や仲介業務にまで広げる方針が示されています。
ポイント
- 金融庁が海外8地域の金融制度に関する609ページの調査報告書を公表し、国内金融制度の企画・立案に活用する方針を示した点で注目されます。
- 国内で2026年7月に成立した暗号資産の金商法移行改正法が1年以内に施行されるスケジュールを控え、各国の交換業者規制の比較情報として重要です。
- 米国でジーニアス法が2027年1月18日に施行される見通しとなり、欧州でもMiCAの猶予期間が終了するなど、米欧でステーブルコインの包括規制が先行している点で注目されます。
- 中国が新通知により国内でのRWA(現実資産トークン化)の発行・仲介を原則禁止とする一方、香港はトークン化証券の取扱いを拡大しており、アジアにおける制度設計の方向性が二極化している点で注目されます。
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