不動産セキュリティトークン(不動産ST)とは、不動産信託受益権などの権利をブロックチェーン上の「電子記録移転権利」として小口化した有価証券です。国内の公募セキュリティトークン(ST)は2025年度に累積発行額3,333億円へ達し、その約85%を不動産を裏付けとする案件が占めました(BOOSTRY集計)。
本記事では、不動産STの利回りの目安、REIT・不動産クラウドファンディングとの違い、税金と確定申告、最新事例までを2026年8月時点の一次情報で整理します。あわせて、不動産のST化による資金調達を検討する事業者向けに、着手の進め方も解説します。不動産STは権利の記録と移転をプログラムで扱える証券のため、AIエージェントが決済や資産管理を担う経済圏でも扱いやすい資産クラスといえます。
この記事の要点です。
- 本記事で確認した公表4件の想定利回りは年3.5〜4.9%(発行体公表値・2026年8月時点)
- REITとの主な違いは、物件を特定して保有する点と、上場市場がなく流動性が限られる点
- 収益の分配は20.315%で源泉徴収される。確定申告の要否は口座区分と元本の払戻しの有無で変わる
- 発行事例は大型化が進み、2025年8月にはW OSAKA案件(291.5億円)が国内最大規模を更新
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不動産セキュリティトークン(不動産ST)とは
不動産セキュリティトークンとは、不動産信託受益権などを裏付けとして、ブロックチェーン上で権利を記録・移転できるようにした有価証券(電子記録移転権利)です。「不動産をデジタル証券にして、1口10万円〜100万円程度の小口で買えるようにした商品」と捉えると実態に近いです。
法的には金融商品取引法上の有価証券として扱われます。2019年成立の金融商品取引法改正(2020年5月施行)で「電子記録移転権利」という区分が設けられ、信託受益権やファンド持分をトークン化した商品が証券規制の枠内で発行できるようになりました。ビットコインなどの暗号資産とは根拠法も規制体系も異なり、発行・販売には金融商品取引業の登録が必要です。
セキュリティトークン全般の制度や種類はデジタル証券とはで整理しています。本記事は、そのうち発行額の大半を占める不動産型に絞って解説します。
不動産STの利回りの目安
本記事で確認した公表4件の想定分配率は年率3.5〜4.9%でした。個別案件の公表値を挙げると次のとおりです。
| 案件名(発行体・運用者) | 想定分配率(税引前) | 運用期間 | 最低投資額 |
|---|---|---|---|
| 湯けむりの宿 雪の花(ケネディクス・リアルティ・トークン) | 年率4.6% | 2022年12月〜2029年9月 | 1口100万円 |
| 月島-リバーシティ21イーストタワーズⅡ(同) | 年率3.5% | 2023年8月〜2033年8月 | 1口100万円 |
| Kolet-1(同) | 年率4.9% | 2024年7月〜2029年7月 | 1口100万円 |
| ALTERNA過去販売案件の平均(三井物産デジタル・アセットマネジメント) | 年率3.8%(2026年2月18日現在のサイト表記) | 案件ごとに設定 | 原則10万円から |
いずれも各社の商品ページ・公式サイトに掲載された各社の公表値です(2026年8月13日確認)。上の3件は募集時の想定分配率、ALTERNAの行だけは過去販売案件の平均値で、性質が異なります。物件のタイプや運用期間、レバレッジの有無で水準は変わるため、個別案件の目論見書で分配の前提条件まで確認する必要があります。
注意したいのは、想定分配率が保証された数字ではない点です。分配の原資は物件の賃料収入で、テナントの退去や稼働率の低下、金利や売却価格の変動によって実際の分配は上下します。ALTERNAの平均値も売却損益を考慮しない数字であり、元本保証はありません。次章で整理する流動性・価格変動・税制もあわせて比較する必要があります。
不動産STとREIT・不動産クラウドファンディングの違い
個人が少額で不動産に投資する手段としては、不動産STのほかにJ-REIT(上場不動産投資信託)と不動産クラウドファンディングがあります。3商品を根拠法から税制まで6つの軸で比べると次のようになります。
| 比較軸 | 不動産ST | J-REIT | 不動産クラウドファンディング |
|---|---|---|---|
| 根拠法 | 金融商品取引法(電子記録移転権利) | 投資信託及び投資法人に関する法律 | 不動産特定共同事業法 |
| 投資対象 | 特定の物件(信託受益権) | 複数物件のポートフォリオ | 特定の物件(匿名組合出資など) |
| 最低投資額 | 案件により10万円〜100万円程度 | 銘柄の市場価格による | 少額から(事業者・案件ごとに異なる) |
| 流動性・中途換金 | 証券会社の店頭やPTSで売却できる場合がある(案件による) | 取引所でいつでも売買可能 | 原則満期まで保有(中途解約不可が多い) |
| 価格の付き方 | 上場市場での日々の値付けなし | 市場価格で日々変動 | 持分の時価表示なし(償還時に確定) |
| 分配への課税 | 配当所得(源泉徴収20.315%) | 配当所得(源泉徴収20.315%) | 匿名組合型の分配金は総合課税の対象になる場合がある |
J-REITは流動性が最も高い一方、市場全体の値動きに連動しやすい商品です。不動産クラウドファンディングは少額から投資できますが、中途換金が難しく、匿名組合型では分配金が総合課税の対象になる場合があり税負担の計算が変わります。不動産STはこの中間に位置し、特定物件への投資でありながら証券税制が適用され、案件によっては中途売却の経路も用意されています。
どれが向くかは目的で分かれます。いつでも売買できることを重視するならJ-REIT、より少額から試すなら不動産クラウドファンディング、特定物件への投資と証券税制の組み合わせを求めるなら不動産STが検討対象になります。
不動産STの仕組みと投資スキーム
不動産STは、不動産を信託してその受益権をトークン化し、証券会社を通じて投資家に販売する仕組みです。原資産の管理は信託銀行、販売は証券会社、権利の記録はブロックチェーン基盤と、既存の金融インフラと新しい技術を組み合わせて運用されます。

投資のフロー
投資家から見た資金と権利の流れは次のとおりです。
- 不動産の保有者(オリジネーター)が物件を信託し、信託受益権を設定する
- 受益権をブロックチェーン基盤上でトークン化し、発行条件を設計する
- 証券会社が募集・販売を行い、投資家が申し込む(公募の場合は目論見書等が交付される)
- 運用期間中、賃料収入などを原資とする分配金が投資家に支払われる
- 中途売却は取扱証券会社の店頭や私設取引システム(PTS)で行う(案件により可否が異なる)
- 運用終了時に物件を売却し、償還金が投資家に支払われる
発行基盤と流通市場
国内の発行基盤としては、BOOSTRY(野村ホールディングス系)が運営するコンソーシアム型ブロックチェーン「ibet for Fin」と、三菱UFJ信託銀行グループ発の「Progmat」が主要な選択肢です。2023年に公表された月島のタワーマンションSTはibet for Finを基盤に発行されました。
売買の場としては、大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)が運営する私設取引システム「START」があります。STARTは金融庁の認可を得たPTSとしてSTのセカンダリ取引を扱っており、2025年8月に発行が完了したW OSAKA案件でも将来的な取扱申請が検討されています(東海東京証券公表)。発行から流通までの市場インフラが揃ったことで、不動産STは「満期まで持ち続けるだけの商品」から売買可能な商品へ移行しつつあります。
不動産STのメリット
2022年に募集された「湯けむりの宿 雪の花」は、新潟県の温泉旅館を裏付けとするSTで、1口100万円から温泉旅館という個人では取得しにくい資産に投資できる設計でした。この案件が示すように、不動産STの便益の中心は個人では取得しにくい大型資産へ小口で投資できる点にあります。投資家側と発行体側に分けて整理します。
投資家側のメリット
- 小口投資。都心のタワーマンションやホテルなど、現物では数十億円規模の資産に10万円〜100万円単位で投資できる
- 特定物件への直接性。REITと異なり投資先の物件が特定されており、どの資産の収益に投資しているかが明確
- 証券としての投資家保護。金融商品取引法に基づく開示(目論見書・運用報告)と分別管理の枠組みが適用される
- 収益構造の明示。分配の原資は物件の賃料収入で、その前提条件は目論見書に記載される
発行体側のメリット
- 調達手段の多様化。銀行借入・現物売却・REIT組入れに並ぶ調達手段になる
- 投資家層の拡大。機関投資家だけでなく個人投資家から広く資金を集められる
- 商品設計の自由度。物件単位で募集条件を設計し、投資家に直接開示できる
不動産STのリスクとデメリット
投資判断の前に押さえるべきリスクは、元本・分配の変動、流動性、発行体と信託の信用、制度・税制の変更です。

元本・分配の変動リスク
不動産STの分配原資は賃料収入で、償還金は物件の売却代金です。テナントの退去、稼働率の低下、賃料相場の下落、売却時の不動産市況によって、分配金の減少や元本割れが起こりえます。想定分配率は募集時点の計画値であり、達成が約束されたものではありません。
流動性リスク
STARTのようなセカンダリ市場は整備されつつありますが、取扱案件数と売買の厚みはまだ限られています。売りたいときに買い手がつかない、希望する価格で売れないという事態は現時点で十分に起こりえます。運用期間が5〜10年に及ぶ案件も多く、原則として満期まで保有できる資金で投資する前提が要ります。
発行体・信託の信用リスク
物件の運用はアセットマネジメント会社、資産の管理は信託銀行が担います。信託により投資家の資産は運用会社の倒産から分離されますが、運用会社の運用能力や信託スキームの設計次第で成果は変わります。目論見書で関係当事者と物件情報を確認することが、この商品では特に重要です。
制度・税制の変更リスク
不動産STは制度がまだ動いている領域です。実際に、後述する元本払戻しの税務上の取扱いは2026年4月以降の変更が公表されています。投資期間中に税制や規制が変わり、手取りや手続きが変化する可能性は織り込んでおく必要があります。
不動産STの法規制と制度
不動産STは金融商品取引法の規制下にある有価証券です。2019年に成立した金商法改正(2020年5月施行)により、トークン化された信託受益権やファンド持分は「電子記録移転権利」として第一項有価証券並みの開示規制の対象になりました。公募には有価証券届出書の提出と目論見書の交付が必要で、募集・販売を担えるのは第一種金融商品取引業の登録を受けた証券会社などに限られます。
混同されやすいのが暗号資産との規制の違いです。暗号資産は資金決済法、不動産STは金融商品取引法と、適用される法律自体が異なります。2026年7月に成立した金商法等の改正法は暗号資産を金商法の枠組みへ移す内容ですが(施行日未確定)、不動産STはもともと証券規制の中で設計されており、この改正を待たずに投資家保護の仕組みが機能しています。
不動産STには分別管理・情報開示・販売時の適合性確認といった証券投資と同水準の保護が働きます。
なお、本章の記載は2026年8月13日時点の公表情報に基づく一般的な整理です。個別のスキームの適法性や許認可の要否は、弁護士など専門家に確認してください。
不動産STの税金と確定申告
不動産STの税金は、REITに近い証券税制が適用される点が不動産クラウドファンディングとの大きな違いです。国内の公募不動産STの多くは「特定受益証券発行信託」という形式をとっており、野村證券が公表する税務上の取扱い(2026年3月付)に基づくと、個人投資家の課税は次のように整理できます。
| 場面 | 課税の取扱い |
|---|---|
| 収益の分配(利益超過分配を含まない) | 20.315%(所得税15%+復興特別所得税+地方税5%)の源泉徴収・特別徴収 |
| 元本の払戻し(2026年4月1日以降) | 原則として上場株式等に係る譲渡所得等として申告分離課税 |
| 中途売却による譲渡 | 譲渡所得として課税(口座区分により手続きが異なる) |
確定申告が必要になる場合
2026年4月1日以降に元本の払戻しを受ける場合、特定口座(源泉徴収なし)および一般口座の投資家は確定申告が必要と公表されています。計算に用いる「元本減少割合」は各商品のアセットマネジメント会社が公表する予定です。
確定申告が原則不要な場合
収益の分配は源泉徴収で課税が完結するため、分配を受け取るだけであれば申告は原則不要です。特定口座(源泉徴収あり)を使えば、譲渡損益についても証券会社側で税額の計算・納付が行われます。
匿名組合型の不動産クラウドファンディングの分配金が総合課税の対象になる場合があるのと比べると、課税方式(申告分離と総合課税)の違いが実質的な差になります。ただし税務上の取扱いは商品のスキームによって変わり、上記の変更のように運用中に改正される可能性もあります。個別の税務判断は税理士に確認してください。
不動産ST市場の規模と今後の見通し
BOOSTRYの市場総括レポート(2026年4月2日公表)によると、国内の公募STの発行額は2025年度に単年度1,650億円、累積で3,333億円に達しました。累積額は前年度の約2倍で、アセット別では不動産を裏付けとする特定受益証券発行信託型が単年度1,408億円と全体の約85%を占めます。社債型が204億円でこれに続き、丸井グループがエポスカード会員向けに発行したデジタル社債(2022年6月・1億3,000万円)のように、不動産以外へもSTの裾野は広がっています。Pacific Metaもトークナイズ領域の動向をまとめた総括レポートを公表しています。
拡大を支えているのは、W OSAKA(291.5億円)のような大型案件の登場と、STARTによる流通市場の整備、大手証券・信託銀行の参入です。BOOSTRYは2026年度の発行を単年度2,000億円・累計5,300億円と見込んでいます(同レポートの予測値)。
一方で、課題はセカンダリ市場の厚みです。発行市場の成長に対して売買の流動性は発展途上で、「買った後にいつでも売れる」状態には至っていません。個人投資家の認知度もまだ限定的です。
不動産STの主要事例
国内の不動産STは、住宅からホテル・旅館まで資産タイプを広げながら大型化してきました。ここでは資産タイプと規模の広がりを示す3つの事例を紹介します。いずれも各社が公表した国内事例です。
公募不動産STを切り拓いたケネディクス
不動産アセットマネジメント会社のケネディクスは、国内の公募不動産STを最も多く手がけてきた発行体です。2022年12月に運用を開始した「湯けむりの宿 雪の花」は新潟県の温泉旅館を裏付けとし、1口100万円で募集されました。前述のとおり、月島・Kolet-1など住宅系の案件も継続的に組成しています。
2023年当時最大の134億円を集めた月島タワーマンションST
2023年8月30日に公表された月島のタワーマンションST(リバーシティ21イーストタワーズⅡ)は、発行額134億円と、公募型の不動産STとして2023年当時の国内過去最大規模でした。ケネディクス・みずほ信託銀行・野村證券・みずほ銀行の協業による受益証券発行信託で、発行基盤にはBOOSTRYのibet for Finが使われています。都心の大型レジデンスを個人が小口で保有できることを示した案件です。
国内最大291.5億円のホテルST「W OSAKA」
2025年8月28日には、大阪のラグジュアリーホテル「W OSAKA」を裏付けとする不動産STが発行を完了しました。発行額は291.5億円で、公募の不動産STとして国内最大規模です(東海東京証券公表)。ケネディクスと三菱UFJ信託銀行が組成し、東海東京証券・大和証券・SMBC日興証券・SBI証券が共同主幹事を務めました。対象資産が大型の運営型資産へ広がり、複数の大手証券が販売網を担う体制になったことを示しています。
不動産STの購入方法
個人が不動産STを購入する手順は、株式投資と大きく変わりません。
- 取扱証券会社で口座を開設する(野村證券・SBI証券・東海東京証券など。本人確認とマイナンバー登録が必要)
- 募集中の案件を確認し、目論見書で物件・想定分配率・運用期間・リスクを読む
- 募集期間内に申し込む(応募多数の場合は抽選となる案件があります)
- 当選・約定後に購入代金が口座から引き落とされ、STが割り当てられる
- 運用期間中は分配金を受け取り、運用報告書で物件の状況を確認する
- 中途売却する場合は取扱証券会社の店頭などで売り注文を出し、償還時には償還金を受け取る
取扱案件と売却手段は証券会社ごとに異なります。募集は不定期で、人気案件は抽選倍率が高くなることもあるため、口座開設を済ませたうえで各社の募集情報を継続的に確認する流れになります。ALTERNAのようにオンラインで完結するプラットフォームと、対面証券の店頭で扱う案件の両方があり、投資したい案件のタイプによって開設すべき口座が変わる点にも注意が必要です。
不動産STによる資金調達の進め方
ここからは不動産を保有する企業やアセットマネジメント会社向けに、ST発行で資金調達する場合の進め方を整理します。発行までの実務は概ね次の工程で進みます。
| 順番 | 作業 | 主担当 | 関与部門・外部 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 対象資産の選定・調達目的の整理 | 経営企画・財務 | 不動産部門 | 候補物件と調達額・目的が経営会議で承認されている |
| 2 | スキーム設計(信託方式・発行基盤の選定) | 財務 | 信託銀行・基盤事業者・弁護士 | 信託スキームと基盤(ibet for Fin/Progmat等)が確定している |
| 3 | 引受・販売会社の選定 | 財務 | 証券会社 | 主幹事証券と販売条件の基本合意がある |
| 4 | 当局対応・開示書類の作成 | 法務・財務 | 弁護士・監査法人・不動産鑑定士 | 有価証券届出書・目論見書の記載が確定している |
| 5 | 募集・販売 | 証券会社 | 広報 | 募集が完了し払込が終わっている |
| 6 | 運用・投資家レポーティング | アセットマネジメント | 信託銀行 | 分配と運用報告が計画どおり実行されている |
着手前に、次のチェックリストで社内の論点を洗い出しておくと検討が進めやすくなります。
| 論点 | 確認すること | 確認先 | 完了の判定 |
|---|---|---|---|
| 対象資産の適性 | 収益の安定性・規模・鑑定評価がST化に見合うか | 不動産鑑定士・アセットマネジメント会社 | 対象物件の収支計画と評価書が揃っている |
| スキーム・発行基盤 | 受益証券発行信託か匿名組合型か。基盤をどれにするか | 信託銀行・基盤事業者 | スキーム比較表と選定理由が文書化されている |
| 法務・ライセンス | 自社に必要な登録の有無。販売委託の範囲 | 弁護士・主幹事証券 | 必要な許認可と委託範囲が確定している |
| 会計・税務 | オフバランス化の可否。発行体・投資家双方の課税関係 | 監査法人・税理士 | 会計処理方針と税務意見が揃っている |
| 販売チャネル | 想定投資家層と販売網。最低投資額など商品条件の設計 | 証券会社 | 販売計画と商品条件が合意されている |
スキームの選定、発行基盤の比較、投資家への訴求設計は互いに絡み合う論点で、社内の一部門だけで結論を出しにくい領域です。上表の論点は工程1〜3と並行して検討することになります。
Pacific Metaのサービス
セキュリティトークンによる資金調達を検討段階から支援します。
スキーム選定・規制対応・パートナー選定まで、STO・デジタル証券の発行検討を伴走します。
STO支援サービスの詳細を見る不動産セキュリティトークンについてよくある質問
Q1. 不動産セキュリティトークンは安全な投資ですか
金融商品取引法に基づく開示・分別管理の枠組みが適用され、制度面の投資家保護は株式などの証券と同水準です。ただし制度が守るのは取引の公正さであり、投資成果ではありません。賃料や物件価格の変動で元本割れが起こりうる商品のため、目論見書でリスクを確認したうえで判断する必要があります。
Q2. 利回りはどのくらいですか
本記事で確認した公表4件では年率3.5〜4.9%でした(2026年8月13日時点の各社商品ページ掲載値)。うちALTERNAの過去販売案件の平均は年率3.8%です(2026年2月18日現在のサイト表記)。いずれも各社の公表値で、保証された数字ではありません。
Q3. 税金と確定申告はどうなりますか
収益の分配は20.315%の源泉徴収で原則完結します。2026年4月1日以降の元本払戻しは申告分離課税の対象となり、特定口座(源泉徴収なし)・一般口座では確定申告が必要と公表されています。スキームにより取扱いが変わるため、詳細は取扱証券会社の税務資料と税理士に確認してください。
Q4. いくらから購入できますか
案件によって異なります。ALTERNAの取扱案件は原則10万円から、ケネディクス・リアルティ・トークンの案件は1口100万円で募集されてきました。募集要項の最低投資額を確認して、自分の資金計画に合う案件を選ぶことになります。
Q5. 発行体が不動産STで資金調達するメリットは何ですか
銀行借入・現物売却・REIT組入れに並ぶ調達手段が増えることと、個人を含む幅広い投資家から資金を集められることです。一方でスキーム設計や当局対応の工数がかかるため、調達規模と目的に照らした比較検討が前提になります。
投資と調達それぞれから見た不動産セキュリティトークンのまとめ
不動産セキュリティトークンは、金融商品取引法の規制下で不動産を小口化した有価証券であり、本記事で確認した公表4件の想定分配率は年率3.5〜4.9%、課税は証券税制ベースという特徴を持ちます。国内公募STの累積発行額は2025年度に3,333億円へ達し(BOOSTRY集計)、その中心を不動産型が占めています。
投資を検討する個人は、取扱証券会社の口座を開設し、募集案件の目論見書で物件とリスクを確認するのが最初の一歩です。REITや不動産クラウドファンディングとの違いは流動性と税制に表れるため、セキュリティトークンとはもあわせて商品の全体像を掴んでおくと比較しやすくなります。
資金調達を検討する事業者は、対象資産の選定とスキーム設計から着手することになります。信託・基盤・証券会社にまたがる論点を初期に整理できるかが、その後の工数を左右します。外部の専門知見を早い段階で組み込むことも含めて、自社の調達目的に合う進め方を検討してみてください。Blockchain Magazineでは、セキュリティトークン関連の制度・事例を継続的に整理しています。