日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行・運営するJPYC株式会社は、シリーズBラウンドのセカンドクローズにおいて、28億円の追加資金調達を完了する予定であることを発表しました。2026年2月に公表されたファーストクローズ分を合わせた累計調達額は、現時点で約46億円に達する見通しです。今回の増資は、急速に拡大する流通規模への対応と、AI時代に向けた新たな決済インフラの構築を目的としています。
資金調達の背景と拡大するJPYCの流通規模
今回の資金調達には、NCBベンチャーキャピタル、テクミラホールディングス、メタプラネット、北洋銀行、横浜キャピタルなどの幅広い企業・金融機関が参画しています。特にメタプラネットは、2026年3月に最大4億円を投資する方針を明らかにしており、ビットコインとステーブルコインに対応したウォレットサービスなどの展開を想定しています。
こうした資金獲得の背景には、JPYCの利用急増があります。2026年4月15日時点で累計発行額は21億円を突破しており、直近3カ月で約2.6倍の成長を遂げています。特徴的なのはその流動性の高さで、日次の資産回転率は流通額の100%を超えています。直接のアカウント開設数は1万7000件ですが、保有経験のあるウォレットアドレス数は13万7000件を超えており、特定のプラットフォームを超えた広範な流通が確認されています。
多チェーン展開と戦略的パートナーシップの進展
JPYCは、異なるデジタル経済圏をつなぐ共通通貨としての地位確立を目指し、技術基盤の拡充を進めています。現在はAvalanche(アバランチ)、Ethereum(イーサリアム)、Polygon(ポリゴン)の3つのブロックチェーンに対応していますが、今後はKaia(カカオとLINEのブロックチェーン統合により誕生したネットワーク)やArcの追加も検討されています。
実社会での活用に向けては、大手金融機関やプラットフォームとの連携が加速しています。
- ソニー銀行との提携に向けた基本合意(MOU)の締結
- LINE NEXTのWeb3ウォレット「Unifi」への採用
- 日本免税との共同による、次世代免税還付モデルの構築
- Hashport Walletを活用した決済導入やECサイトでの決済対応
これらの取り組みにより、国内の決済シーンだけでなく、国外でもエルサルバドルの実店舗でクロスボーダー決済(国境を越えた決済)に利用されるなど、為替や国境の障壁を低減する手段としての活用が始まっています。
AI時代の決済インフラとしての位置付け
JPYCは、今後の重点投資領域の一つとしてAI(人工知能)分野を掲げています。同社は、AIエージェント同士が自律的に価値を交換する時代の到来を見据え、その決済インフラとして日本円ステーブルコインを位置付けています。
2026年4月に開催された展示会では、日本円ステーブルコインを用いたAI決済の実演デモを公開しました。調達した資金は、こうしたAI時代に対応するためのシステムおよびアプリケーション開発、事業開発を担う人材の採用、そしてステーブルコインの管理・運用体制の強化に充てられる計画です。岡部典孝代表取締役は、日本を代表するステーブルコインとして、次世代の経済圏創出に挑戦し続ける姿勢を示しています。
ポイント
- シリーズBラウンドの累計調達額が約46億円に達し、資本基盤が大幅に強化されました。
- 累計発行額が21億円を突破し、直近3カ月で2.6倍という高い成長率を記録しています。
- 地方銀行や大手IT企業との連携により、免税還付やEC決済など実社会での利用シーンが広がっています。
- AIエージェント間の自律的な決済手段としての活用を掲げ、技術開発を加速させています。
- KaiaやArcへの対応検討など、マルチチェーン展開によるエコシステムの拡大が進められています。