Galaxy Digitalが機関投資家向けOTC予測市場取引を開始、Arcaと1,000万ドルの初回取引を約定

暗号資産金融大手のGalaxy Digitalは、機関投資家向けに店頭(OTC)での予測市場取引サービスを開始したことを発表しました。初回取引として、暗号資産特化のヘッジファンドであるArcaを相手に、米国デジタル資産法案の成否を対象とした1,000万ドル規模の取引を約定させています。本サービスは、大口取引における流動性不足という機関投資家の課題に対応するものであり、個人中心だった予測市場が「機関化」へと向かう重要な一歩として注目されます。

機関投資家が直面していた大口取引の壁とOTC取引の需要

Galaxy Digitalが機関投資家向けOTC予測市場取引を開始、Arcaと1,000万ドルの初回取引を約定

予測市場とは、将来の出来事の結果に対して「はい」または「いいえ」の建玉を売買する市場です。結果が確定すると的中した契約に一定額が支払われる仕組みで、その取引価格は出来事の発生確率と読み替えられます。代表的なプラットフォームとして、米商品先物取引委員会(CFTC)の監督下でイベント契約を扱うKalshiや、Polygon上で稼働する分散型のPolymarketが存在します。

予測市場全体の月間取引高は、2025年9月の50億ドル未満から2026年4月には約240億ドルへと急拡大しており、同月にはPolymarketの国際版だけで約90億ドルの取引高を記録しました。しかし、取引の中心はスポーツイベントの契約であり、政治や経済イベントの流動性は相対的に低いのが実情です。

このような市場環境において、機関投資家は既存のプラットフォームの使いにくさに直面していました。リテール向けのシステムは小口取引を前提としており、大口の建玉を一度に置くと流動性の低さから価格が動いてしまいます。また、建玉の上限や資金移動の制約もあり、ファンド規模に見合う取引が困難でした。Arcaの最高投資責任者であるジェフ・ドーマン氏も、既存プラットフォームの流動性不足により、ファンドの規模に合った取引ができなかったと述べています。こうした課題から、公開市場を介さずに当事者間で条件を決めて約定するOTC(相対取引)の需要が生まれました。

Galaxy Digitalが提供するOTC取引サービスの仕組みと特徴

今回のサービスを担うのは、ナスダックに上場するGalaxy Digitalのトレーディング部門であるGalaxy Global Marketsです。同サービスは、Galaxy Digitalが自己勘定の取引相手(プリンシパル)として取引に入り、引き受けたリスクを自社の勘定で抱えるモデルを採用しています。

対象となるのは、KalshiとPolymarketに上場する経済、政治、地政学イベントの契約で、当初はスポーツ以外の契約に限定されます。Galaxy Digitalが複数の取引所をまたいで取引を仲介するため、クライアントは複数のプラットフォームで個別に口座を開設し建玉を積む手間が省けます。また、単一の相手方を通じてまとまった金額の取引を一度に執行でき、取引内容を市場に晒さない匿名性を確保できる点が特徴です。

さらに、予測市場の建玉を株式や商品(コモディティ)など他の資産でのヘッジと組み合わせる取引にも対応しています。これにより、単一の出来事を軸に、複数の資産をまたいだ包括的なリスク管理戦略を組み立てることが可能になります。

初回の取引では、Arcaを相手にKalshi上で1,000万ドル規模が約定されました。対象となったのは、米国で暗号資産の規制区分を定める市場構造法案「CLARITY法」が成立するかどうかという結果です。CLARITY法案は、米国におけるデジタル資産規制の明確化を目的とし、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の監督権限を整理することなどを盛り込んだ包括的な法案とされています。規制動向そのものをヘッジの対象として扱う試みであり、政治・規制イベントが機関投資家の大口取引の対象となった象徴的な事例といえます。

予測市場の機関化がもたらす影響と今後の展望

予測市場はこれまで、2025年末のRobinhoodやCoinbaseの参入、2026年のPolymarketによる手数料導入など、個人向けの普及と収益化が先行してきました。Galaxy Digitalによる今回のサービス提供は、そこに機関投資家向けの層を加える動きにあたります。

一方で、法的な位置づけには流動的な側面も残されています。米CFTCは2026年3月に予測市場の扱いを巡る規則制定に向けた意見募集を開始し、デリバティブ規制の枠組みでの監督を検討しています。一方で、同じ3月にアリゾナ州がKalshiを無許可の賭博運営などの容疑で刑事訴訴するなど、州レベルでの摩擦も生じています。

機関の資本が流入することで、政治や経済イベントの取引高と流動性が増し、価格がより専門的な分析を反映するようになると見られます。価格が出来事の発生確率を映す予測市場において、参加者の層が厚くなるほど価格が持つ情報の精度が高まり、投資家だけでなく政策担当者や企業が参考にする場面も想定されます。

一方で、相対取引(OTC)の比率が高まれば、公開市場で見える価格と、大口が実際に約定する価格との間に差が生じる可能性もあります。Galaxy Digitalがリスクを抱えるこのモデルはデリバティブのディーラー市場に近く、予測市場が単に結果に賭ける場から、イベントのリスクを管理・ヘッジする場へと用途を広げつつある動きと捉えられます。複数資産をまたぐヘッジへの対応は、予測市場の建玉がポートフォリオの一部として位置づけられ、オプション市場に近い役割を担い始める兆しと考えられます。機関化が定着し、予測市場がリスク管理の手段として根づくかどうかは、規制の明確化と非スポーツ契約の流動性の広がり次第になると見られます。

ポイント

  • Galaxy Digitalが機関投資家向けにOTCでの予測市場取引サービスを開始し、個人中心だった予測市場にプロの資本を呼び込む「機関化」の動きが本格化しました。
  • 初回取引として、ヘッジファンドのArcaを相手に、米国の暗号資産規制法案「CLARITY法」の成否を対象とした1,000万ドル規模の取引が約定されました。
  • 既存のリテール向けプラットフォームで課題となっていた大口取引における流動性不足や価格への影響を、Galaxy Digitalが自己勘定の取引相手(プリンシパル)となることで解消しています。
  • 予測市場の建玉を株式や商品などの他資産と組み合わせたヘッジ取引に対応しており、予測市場が単なる投機の場から、ポートフォリオのリスク管理手段(オプション市場に近い役割)へと進化する可能性が示されました。
  • 機関化が定着するかは、米CFTCの規則制定や州レベルでの訴訟といった規制環境の明確化、および政治・経済イベントにおける流動性の拡大にかかっていると見られます。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta