米証券取引委員会(SEC)は、2005年に導入された「Regulation NMS(全国市場システム規則)」の一部規則を撤廃する案を提示しました。この提案について、調査会社のベンチマーク・エクイティ・リサーチは、米国の暗号資産およびトークン化資産の市場構造において、今年最も影響の大きい規制変更になる可能性があると評価しています。特に、分散型金融(DeFi)の自動マーケットメーカー(AMM)モデルにおける法的障壁が取り除かれ、トークン化株式の取引が活性化する契機になると見られています。
規則撤廃案の背景と具体的な内容
SECは2026年6月11日、米国株式市場における注文回送や執行の骨組みとなってきたRegulation NMSの「Rule 611」と「Rule 610(e)」の撤廃を提案しました。
Rule 611(注文保護規則)は、取引施設が他の市場に表示された最良価格(全国最良気配、NBBO)より不利な価格での取引執行を避けるよう義務付ける規則です。また、Rule 610(e)は、買い気配と売り気配が重なり合う「ロックド」または「クロスト」市場を禁止し、価格の序列を維持する役割を担ってきました。
SECは今回の提案について、市場構造を簡素化して市場参加者のコストを削減するとともに、競争とイノベーションを促進することを目的としていると説明しています。
DeFiおよび自動マーケットメーカー(AMM)への技術的な意味合い
ベンチマークのアナリストであるマーク・パーマー氏の指摘によると、これらの規則はこれまでDeFiの取引モデル、特に自動マーケットメーカー(AMM)にとって障害になっていたとされています。
AMMは、従来の取引所のような注文板(オーダーブック)を介して注文をマッチングするのではなく、スマートコントラクト上の連続的な価格曲線に基づいて取引を自動執行する仕組みです。そのため、従来の市場間での価格保護システムであるNBBOのような前提に対応していませんでした。
今回の撤廃案が実現すれば、トークン化株式をAMM上で取引する際の主要な法的障壁が取り除かれることになり、トークン化株式や暗号資産型の株式取引所が、既存の株式市場インフラとより直接的に接続しやすくなると見られています。
関連企業やビジネスへの影響と今後の見通し
ベンチマークは、この規制緩和によって最も直接的な恩恵を受ける企業として、セキュリタイズ(Securitize)を挙げています。同社は規制下のトークン化プラットフォームであり、ブラックロック(BlackRock)の「BUIDL」を含むトークン化証券の発行インフラを提供しているためです。
さらに、取引インフラやブローカレッジ、デジタル資産のマーケットメイク業務に関わるコインベース・グローバル(Coinbase Global)やギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)にとっても、今回の変更はビジネスの追い風になる可能性があると指摘されています。
本提案に対し、SECは60日間の意見募集期間を設けています。ベンチマークは、この撤廃案の採決が2027年初めに行われると予想しています。
ポイント
- 米SECが、約20年間にわたり米国株取引の基本構造となってきたRegulation NMSのRule 611およびRule 610(e)の撤廃を提案しました。
- この提案は、注文板を持たずに価格曲線で取引を行うDeFiの自動マーケットメーカー(AMM)モデルにとって、トークン化株式取引の法的障壁を解消する点で注目されます。
- 規制準拠のトークン化プラットフォームであるセキュリタイズが最も直接的な恩恵を受けると見られるほか、コインベースやギャラクシー・デジタルなどの取引・マーケットメイク関連企業にとっても追い風になる可能性があります。
- SECは60日間の意見募集を行っており、ベンチマークは2027年初めにも撤廃案の採決が行われると見込んでいます。