米国で審議が進められている「CLARITY法案(Digital Asset Market Clarity Act)」において、仮想通貨(暗号資産)詐欺師の追跡や不正行為の取り締まりを強化するため、法執行機関に対して1億5,000万ドルの資金が割り当てられる見通しであることが明らかになりました。この法案は現在、米上院の本会議での採決に向けて進められています。法執行機関への資金提供や取引凍結権限の付与などを通じて、業界の健全性と消費者保護を向上させることが期待される一方で、事業者へのコンプライアンス義務の強化も盛り込まれており、Web3業界のビジネスパーソンにとって注目の動向となっています。
1億5,000万ドルの資金割り当てと法執行の強化
CLARITY法案では、デジタル資産市場における詐欺やその他の違法行為を追跡するため、法執行機関へ1億5,000万ドルの資金を配分することが提案されています。米国のシンシア・ルミス上院議員のSNSでの投稿や報道によると、この資金は主に財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN:主にマネーロンダリングなどの金融犯罪を追跡する機関)の強化に充てられるとされています。
具体的には、マネーロンダリング防止(AML)プログラムの拡大や、新たに規制対象となる取引所からの不審活動報告書(SAR)の提出、さらにはブロックチェーン分析ツールの導入や、民間企業と連邦捜査機関が脅威データを共有するためのパイロットプログラムの支援などに活用される予定です。近年、米国では仮想通貨に関連するインターネット犯罪による被害額が急増しており、2024年にはFBIのデータで約93億ドルの被害が報告されていることから、法執行の強化が急務とされています。
取引凍結権限の付与と事業者への影響
本法案には、詐欺被害を未然に防ぐための新たな仕組みも盛り込まれています。報道によると、仮想通貨取引所やステーブルコインの発行体に対し、疑わしい取引を最大30日間一時的に凍結する権限を付与することが提案されています。さらに、法執行機関からの書面による命令があれば、この凍結期間を最大180日まで延長できるとされています。
また、デジタル資産事業者に対して、伝統的な金融機関と同様に「銀行秘密法(BSA)」に基づくコンプライアンスの遵守を義務付ける内容も含まれています。これにより、事業者は独自のAMLプログラムを維持し、不審な取引を検知した場合には不審活動報告書(SAR)を提出することが求められます。これらは、FTXの破綻のような事態を防ぎ、顧客資産の分別管理を徹底させるなど、市場の信頼性を高めるための措置として位置づけられています。
今後のスケジュールと法案の進捗状況
CLARITY法案はすでに一定の立法手続きを進めています。2025年7月に下院を294対134の賛成多数で通過し、2026年5月14日には上院銀行委員会において15対9の超党派の賛成で可決されました。現在は上院の本会議での採決に向けた調整が行われています。
しかし、上院での最終的な採決時期については不透明な状況が続いています。ケビン・クレイマー上院議員は、7月4日の休会前に法案が上院本会議に上程されることは見込んでおらず、8月の休会前の可決についても「困難な道のりになる」との見解を示していると報じられています。ステーブルコインに関する規定や倫理上の懸念、不正資金調達に関する規則など、依然として調整が必要な課題が残されているためとみられます。
ポイント
- CLARITY法案は、仮想通貨詐欺師の追跡や不正行為の取り締まり強化のため、法執行機関(主にFinCEN)に1億5,000万ドルの資金提供を計画している点で注目されます。
- 取引所やステーブルコイン発行体に対し、疑わしい取引を最大30日間一時的に凍結する権限を付与する仕組みが盛り込まれている点で注目されます。
- デジタル資産事業者に対し、銀行秘密法(BSA)の遵守や顧客資産の分別管理を義務付け、伝統的な金融機関と同等のコンプライアンス体制を求める点で注目されます。
- 法案はすでに下院を通過し上院銀行委員会でも可決されていますが、ステーブルコイン規制や倫理規定などを巡る議論が続いており、上院本会議での採決時期は不透明とされている点で注目されます。