米イリノイ州のJB・プリツカー知事は、暗号資産の取引やサービスに対して0.2パーセントの税を課すデジタル資産税法に署名しました。この法律は2027年1月1日からの施行が予定されており、取引所やカストディアンなどのサービス提供者が納税義務を負う仕組みです。業界団体や投資企業からは、技術革新の阻害や事業者の州外流出を懸念し、極めて厳しい規制であるとする反発の声が上がっています。
デジタル資産税法の概要と施行スケジュール
イリノイ州のJB・プリツカー知事は2026年6月16日、デジタル資産税法(Digital Asset Tax Act)に署名しました。この法律は同州の2027年度予算案の一部として組み込まれており、2027年1月1日より施行される予定です。
この法律に基づき、イリノイ州の顧客向けに行われる暗号資産(仮想通貨)の取引やサービスの価値に対して、0.2パーセントの税金が課されます。納税の義務は主に、暗号資産取引所やカストディアン(資産保管業者)、ブローカーといったサービス提供者が負うことになります。これらの事業者は、売上税と同じように顧客から税を徴収し、州政府へ納付する役割を担います。
州政府の試算によると、この新しい税制の導入により、年間で最大6,000万ドル(約96億円、1ドル=160円換算)の歳入が見込まれています。
課税対象となる事業者の範囲と課題
課税の対象となるのは、イリノイ州内に物理的な拠点を置く事業者、または同州の顧客から年間10万ドル(約1,600万円)を超える総収入を得ている事業者です。
一方で、個人間で直接行われるウォレット間の送金については、課税の対象外とされています。しかし、イリノイ州のデジタル商工会(Digital Chamber)は、法律の条文に不明確な部分があることを指摘しています。この曖昧さにより、取引の損益に関わらず、保有している資産の価値そのものに対して課税されかねないとの警告を発しており、実務上の運用において混乱が生じる懸念があります。
暗号資産業界からの反発とビジネスへの影響
この法案の成立に対して、暗号資産業界からは強い反発が起きています。
業界団体の暗号資産イノベーション評議会(CCI)は、知事宛てに送付した書簡の中で、この税制をアメリカ国内で最も懲罰的なデジタル資産税であると非難しました。CCIは、デジタル資産を利用するだけで住民に対して不均衡な負担を強いることになり、結果として技術革新や開発者を州外へと追いやることになると訴えています。
また、ベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)の政策責任者を務めるマイルズ・ジェニングス氏も、この法律をアメリカで最も反暗号資産的な法律の一つであると表現しました。ジェニングス氏は、ビットコインの購入や、大手の取引所であるコインベース(Coinbase)での資産保有自体に課税される仕組みを問題視しています。さらに、この税制が複数の連邦法に違反して暗号資産を狙い撃ちにしていると主張しており、今後さらに業界からの反発が強まる可能性があります。
ポイント
- イリノイ州で2027年1月1日より、暗号資産の取引やサービスの価値に0.2パーセントを課税するデジタル資産税法が施行されます。
- 納税義務は主に取引所やブローカーなどのサービス提供者が負い、売上税のように徴収・納付を行います。
- 課税対象は、州内に拠点があるか、州内の顧客から年間10万ドル超の収入がある事業者と規定されています。
- 業界団体や投資企業は、技術革新の停滞や開発者の州外流出を招く、極めて懲罰的な税制であるとして強く反発しています。
- 条文の曖昧さから、取引の損益に関わらず資産価値そのものに課税される懸念が指摘されており、実務への影響が注視されます。