G7サミット共同声明で北朝鮮の暗号資産窃取への共同対処を呼びかけ

フランスのエビアン・レ・バンで開催されたG7(主要7カ国)サミットにおいて、加盟国の首脳らは北朝鮮による暗号資産の窃取やサイバー犯罪に対する共同対処を求める声明を採択しました。北朝鮮による暗号資産の窃取は同国の兵器開発の資金源になっていると指摘されており、国際的な安全保障上の大きな課題となっています。本声明はWeb3業界のセキュリティ意識や将来的な規制環境に影響を与える可能性がある一方で、現時点では具体的な行動計画は示されていません。

G7サミットにおける声明と共同対処への背景

G7サミット共同声明で北朝鮮の暗号資産窃取への共同対処を呼びかけ

フランスのエビアン・レ・バンで2026年6月に開催されたG7サミットにおいて、加盟国の首脳らは北朝鮮の核・弾道ミサイル開発計画に対して深い懸念を表明しました。これに伴い、開発の資金源を断つため、北朝鮮による暗号資産(仮想通貨)の窃取やサイバー犯罪に対して共同で対処する必要性を改めて強調する声明が採択されました。

G7によるこうした呼びかけは今回が初めてではなく、2025年6月に開催されたカナダ・サミットの後にも同様の言及がなされていました。当時はサミットの議長が加盟国に対し、核・弾道ミサイル開発を助長する暗号資産窃盗への共同対処を呼びかけていました。

しかし、今回の共同声明においても、加盟国が具体的にどのように行動すべきかという詳細な方針は示されませんでした。特に、暗号資産の資金洗浄対策として議論されることが多い暗号資産取引所の審査プロセスの強化、制裁措置の適用、あるいは取引履歴を不透明にするミキシングサービスへの具体的な規制対策などについては、明文化された言及はありませんでした。

相次ぐ大規模ハッキング事件と被害の規模

今回のG7による新たな共同対処の呼びかけは、北朝鮮関係者の関与が疑われる注目度の高いサイバー攻撃が相次いで発生したことを受けたものと見られます。

直近の事例としては、2026年4月に発生したSolanaブロックチェーン基盤の分散型金融(DeFi)プロトコルとされるDrift Protocol(ドリフト・プロトコル)への攻撃があり、約2億8500万ドル(約456億円)相当の暗号資産が流出しました。さらに、2026年6月には、手のひらスキャン技術などを用いて人間であることを証明する技術を提供するプロトコルとされるHumanity Protocol(ヒューマニティ・プロトコル)が侵害を受け、約3600万ドル(約57億6000万円)相当の被害が発生しています。

国連や安全保障の研究者は、こうした暗号資産の窃盗行為が北朝鮮の兵器開発を支える重要な資金源になっていると指摘しています。ブロックチェーン分析を行う企業とされるChainalysis(チェイナリシス)の報告によると、北朝鮮のハッカーは2025年に少なくとも20億2000万ドル(約3232億円、1ドル=160円換算)相当の暗号資産を盗み出しました。これは前年比で51パーセントの増加を記録しており、北朝鮮に関連する行為者による累計被害額は、約67億5000万ドル(約1兆800億円)に達したとされています。また、2026年5月の報告書では、人工知能(AI)を用いた欺瞞工作を産業化させていることも指摘されています。

これに対し、北朝鮮側は一連のサイバー脅威に関する指摘を否定しています。北朝鮮の国営メディアであるKCNA(朝鮮中央通信)が5月3日に伝えた外務省報道官の談話では、米国が虚偽の情報を広めているとして強く非難する姿勢を示しています。

Web3ビジネスへの影響と今後の展望

G7による今回の共同声明は、暗号資産やブロックチェーンを用いたビジネスを展開する事業者にとって、セキュリティ対策と規制強化への備えという二つの側面で重要な意味を持つ可能性があります。

特に、Drift ProtocolやHumanity Protocolといった著名なWeb3プロジェクトが標的となり、巨額の資金が流出している現状は、技術的な脆弱性の克服だけでなく、厳格なセキュリティ運用の徹底が必要であることを物語っています。

共同声明では具体的な制裁や規制の枠組みには踏み込まなかったものの、国際社会が共同対処を掲げたことで、今後は各国政府による取引所の監視や、ミキシングサービスに対する規制圧力がさらに強まる可能性があります。Web3業界のビジネスパーソンは、こうした国際的な規制動向を注視しつつ、自社のサービスにおけるリスク管理体制を強化していくことが求められると考えられます。

ポイント

  • G7サミットにおいて、北朝鮮による暗号資産の窃取やサイバー犯罪に対して共同で対処することを求める声明が採択されました。
  • 北朝鮮によるハッキング行為は兵器開発の資金源とされており、2025年の被害額は少なくとも20億2000万ドル(約3232億円)に上るとされています。
  • 2026年4月のDrift Protocol攻撃や6月のHumanity Protocol侵害など、直近の大規模なハッキング事件が共同対処の呼びかけを後押ししたと見られます。
  • 共同声明では対処の必要性が強調されたものの、取引所の審査や制裁、ミキシングサービスへの対策といった具体的な行動指針は示されませんでした。
  • 北朝鮮は自国がサイバー脅威であるとする主張を全面的に否定しており、米国が虚偽情報を広めていると非難しています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

ビジネスでの活用から個人の学びまで、ブロックチェーンやトークンに関する情報を、最新動向と実務でのナレッジを踏まえてわかりやすくお届けします。編集部や事業内容の詳細は、公式サイトをご覧ください。

ニュース
ブロックチェーンマガジン by Pacific Meta