Binanceの創設者であるChangpeng Zhao(CZ)氏は、将来的な量子コンピューティングの脅威からビットコインネットワークを保護するため、サトシ・ナカモト(Satoshi Nakamoto)が保有するとされるビットコインの凍結を提案しました。CZ氏は、量子耐性プロトコルへの移行後に一定期間動かされていない休眠アドレスを凍結するべきだと述べる一方で、この決定は個人ではなくコミュニティの合意によって行われるべきであると強調しています。この提案は、ビットコインのセキュリティ確保と資産の不変性という基本原則の間で議論を呼んでいます。
量子コンピューティングへの移行と資産凍結の提案
CZ氏は、Galaxy Research(暗号資産関連の調査・研究機関)のプレジデントであるAlex Thorn氏がホストを務めるポッドキャスト番組「Galaxy Brains」に出演し、量子コンピューティングがビットコインに与える影響について語りました。
CZ氏によると、量子コンピューティングはビットコインにとって克服不可能な脅威ではありません。すでに量子耐性(量子コンピューターによる解読に耐えうる技術)を持つ暗号アルゴリズムが存在するため、ネットワークをアップグレードすることでリスクを軽減できるとされています。しかし、最大の課題はネットワーク全体でこの移行をどのように調整するかという点にあります。
この移行に際し、CZ氏は「何もしないこと」は最善の策ではないと主張しています。同氏は、将来的に量子耐性プロトコルへのアップグレードが実施された場合、6ヶ月から12ヶ月程度の移行期間を設けることを提案しました。この期間中に、長期間動きがない休眠アドレス(サトシ・ナカモトが保有するとされる約100万BTCを含む)から新しい量子耐性アドレスへの資金移動を求めます。
もし指定期間内に移動が行われなかったアドレスについては、新プロトコルにおいて凍結し、流通から取り除くべきだというのがCZ氏の考えです。
提案の背景とコミュニティの合意の重要性
この提案の背景には、休眠アドレスを放置することによるハッキングリスクがあります。CZ氏は、脆弱な古いアドレスをそのままにしておくと、将来的に量子コンピューターを最初に開発した攻撃者によって暗号が破られ、資産が不当に奪われる可能性があると指摘しています。このような事態が発生した場合、特定のハッカーに莫大な資産が渡ることになり、公平な分配とは言えなくなると説明されています。
一方で、CZ氏はこの凍結措置が自身の一存で決められるべきものではないと強く主張しています。ビットコインの仕様変更やこのような重要決定は、開発者やユーザー、マイナーなどのビットコインコミュニティ全体がコンセンサス(合意形成)プロセスや投票を通じて決定すべき「コミュニティの判断(community call)」であるとしています。
また、この提案に対しては、ビットコインコミュニティ内から「資産の凍結はビットコインの根本的な原則である『不変性(イミュータビリティ)』を揺るがすものである」との批判的な見解も示されており、今後の議論の行方が注目されています。
ポイント
- 量子コンピューティングの脅威に対し、CZ氏はすでに存在する量子耐性暗号へのネットワーク移行で対応可能であると述べています。
- 移行時には6〜12ヶ月の猶予期間を設け、その間に移動されなかったサトシ・ナカモトの資産を含む休眠ビットコインを凍結することを提案しています。
- 凍結措置を行わない場合、量子コンピューターを用いたハッカーによって資産が不正に奪われ、不公平な富の分配や市場への悪影響が生じるリスクがあると指摘されています。
- CZ氏は、この凍結の決定は個人の判断ではなく、コミュニティの合意(投票やシグナリングなど)によって決定されるべき性質のものであると強調しています。
- この提案は、量子リスクの回避という実用的な観点と、ビットコインの不変性という思想的原則のバランスをどのように取るかという点で、業界において重要な議論を投げかけています。