予測市場プラットフォームであるPolymarket(ポリマーケット)が、本物のサイトを模した複製サイト上で偽の勝ち賭けを演出した動画を制作するようクリエイターに報酬を支払っていたことが、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の調査により明らかになりました。このマーケティング手法は、すべての取引をパブリックなブロックチェーン上で処理して監査可能にするという同プラットフォーム本来の仕組みと矛盾するものとして波紋を呼んでいます。Polymarketは今後、プロモーションコンテンツの包括的な監査を実施する意向を示しているとされています。
WSJによる調査内容と指摘された手法
WSJの調査によると、Polymarketは主に大学生世代のコンテンツクリエイターに対し、実際のプラットフォームを模倣した「poiymarket.com」などの複製(コピーキャット)サイト上で、偽の賭けや勝利を演出した動画を制作・投稿するよう報酬を支払っていました。
調査対象となった1,105本の動画に登場する総額約190万ドル相当の賭けは、すべて実際のものではなかったとされています。具体的な手法や事例として、以下のような点が指摘されています。
クリエイターらは動画内で合計約90万ドルの架空の勝利を祝っていましたが、仮に同じ賭けを実際の市場で行っていた場合、16万6,000ドル以上の損失が発生していたとされています。
また、ある動画では、トランプ氏が1月に特定の言葉を発したという賭けで10万ドルを獲得したと演出されていましたが、実際にはその月にそのような発言はなく、動画も古いものでした。実際の市場では50以上のアカウントがこの賭けを行い、全員が損失を被っていました。
クリエイターらは月に2,000ドルから3,000ドルの報酬を得ており、この支払いを公表しないよう指示されていたとされています。これらの動画はマーケティング会社(Virality)を介して拡散され、1億4,000万回以上の再生回数を記録したとされています。
オンチェーンの透明性というコアピッチとの矛盾
今回の疑惑は、Polymarketがこれまでアピールしてきた「オンチェーンでの透明性」という基本方針と大きく矛盾する点で、ブロックチェーン業界において注目されています。
本来、Polymarketにおける実際の取引はPolygon(ポリゴン)ブロックチェーン上で実行され、米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」で決済されます。また、市場の最終的な結果は「UMA」の分散型オラクルを通じて決定され、すべての取引ポジションはパブリックなブロックチェーン上で誰でも監査可能な状態で公開されています。
しかし、今回指摘されたマーケティング活動は、ブロックチェーンの台帳(レジャー)とは全く無関係に、検証不可能な複製サイト上のシミュレーションを通じて行われていました。このことは、Web3技術が本来掲げる「トラストレス(信頼不要)」や「透明性」という価値を損なう可能性があるとして懸念されています。
米国ユーザーの誘い込みと規制上の懸念
Polymarketは、米国居住者によるプラットフォーム上での取引を禁止していますが、今回のプロモーション活動は実質的に米国のユーザーを誘い込む結果になっていたと指摘されています。
報酬を受け取ったクリエイターらの動画は、ソーシャルメディアを通じて多くの米国ユーザーに届いており、実質的なマーケティング活動として機能していたとみられます。予測市場やデリバティブを巡っては、米商品先物取引委員会(CFTC)などの規制当局による監視や法的な議論が活発化している背景があり、今回の事案は規制面でのさらなる逆風となる可能性が懸念されます。
今後の対応
Polymarket側はWSJの取材に対し、現在アクティブなプロモーションコンテンツについて、包括的な監査を実施する計画であることを明らかにしています。
ポイント
- 複製サイトでの偽の取引動画の制作を依頼:Polymarketがクリエイターに報酬を支払い、本物と酷似した複製サイトで架空の勝ち賭けを演出する動画を制作させていたことがWSJの調査で判明しました。
- オンチェーンの透明性という基本方針との矛盾:すべての取引をパブリックブロックチェーン上で処理し、第三者が監査可能とするPolymarketの本来の仕組みと、今回の検証不可能な複製サイトを用いたマーケティング手法は矛盾しています。
- 米国ユーザーをターゲットにした拡散:米国での取引が禁止されているにもかかわらず、SNSを通じて米国のユーザーに広く届く形で、1億4,000万回以上の再生数を記録する大規模なプロモーションが展開されていました。
- 包括的な監査を計画:Polymarketは今回の指摘を受け、現在行われているプロモーションコンテンツの包括的な監査を実施する意向を示しています。