ホワイトハウスの量子技術推進とCZ氏の提案:再燃するビットコインの量子リスク議論

米国ホワイトハウスが量子技術の推進を示唆したことをきっかけに、ビットコインにおける量子コンピューティングのリスクに関する議論が再び活発化しています。これに先立ち、大手暗号資産取引所Binanceの創業者であるCZ(ジャオ・チャンポン)氏が、将来的な量子耐性へのアップグレード後にサトシ・ナカモトの休眠ビットコインを凍結する案を提唱し、大きな波紋を広げました。本記事では、ホワイトハウスの最新の動向と、暗号資産コミュニティ内で対立するセキュリティと分散型の基本原則を巡る議論について解説します。

ホワイトハウスが示す量子技術への注力と新たな大統領令の動き

ホワイトハウスの量子技術推進とCZ氏の提案:再燃するビットコインの量子リスク議論

2026年6月22日、ホワイトハウスの公式SNSアカウントが量子技術(クォンタム)に関する投稿を行い、政府としての推進姿勢を示唆しました。この動きの背景には、近く署名が予定されている新しい大統領令があると報じられています。

報道によると、この大統領令は連邦捜査局(FBI)やインテリジェンス・コミュニティに対し、米国の量子研究を外国のスパイ活動から保護することを義務付けるものです。また、国防総省とエネルギー省に対して、科学的発見を目的とした量子コンピュータの構築を指示する内容も含まれているとされています。さらに、政府機関におけるポスト量子暗号(量子コンピュータでも解読が困難な暗号技術)への移行を加速させるための大統領令も準備されていると伝えられており、国家規模での量子技術対策が本格化しています。

CZ氏が提唱する「サトシ・ナカモトのビットコイン凍結案」

こうした政府の動きに先立ち、Binanceの創業者であるCZ氏は2026年6月18日に配信されたポッドキャスト番組において、ビットコインの量子リスクに対する具体的なアプローチを提案しました。

CZ氏は、量子コンピューティングの発展自体はビットコインにとって克服不可能な脅威ではなく、量子耐性を持つ暗号アルゴリズムへの移行によって対応可能であると指摘しました。しかし、最大の課題は長年動かされていない古いアドレスの扱いであると主張しています。

特に、ビットコインの創設者であるサトシ・ナカモトが保有しているとされる約100万BTC(現在の価格で約700億ドル相当)を含む休眠アドレスは、公開鍵がブロックチェーン上に露出しているため、将来的に強力な量子コンピュータによって秘密鍵を特定され、資金が盗まれるリスクがあるとされています。

このリスクに対し、CZ氏はネットワークが量子耐性システムへ移行した後に6ヶ月から12ヶ月程度の移行期間を設け、その期間内に移動されなかった古いアドレスのビットコインをプロトコル上で凍結し、流通から除外することを提案しました。同氏は、放置されたビットコインが量子技術を最初に手に入れた攻撃者に不正に奪取されることは、不公平な資産の再分配につながると警鐘を鳴らしています。ただし、この決定は自身が決めることではなく、コミュニティの投票などの合意形成(コンセンサス)によって行われるべきであるとも強調しました。

セキュリティの確保とビットコインの「不変性」の対立

このCZ氏の提案は、暗号資産コミュニティ内で激しい議論を巻き起こしています。

2026年3月末にGoogleの量子AI部門が発表した論文では、50万物理量子ビット未満の量子コンピュータでビットコインの暗号を解読できる可能性があるという試算が示され、従来の想定よりも脅威が早く訪れる可能性が懸念されています。そのため、一部の支持者は、量子攻撃者による資産の不正奪取とそれに伴う市場の混乱を防ぐために、何らかの予防措置が必要であると主張しています。

一方で、多くの批判派は、ビットコインの最も重要な価値である「不変性(データの書き換えができないこと)」や「検閲耐性(誰にも取引を止められないこと)」を損なうと強く反発しています。一度でも特定のウォレットを強制的に凍結する前例を作ってしまえば、将来的に政治的・規制的な圧力によって他のアドレスが標的にされる道を開くことになると警告されています。

ポイント

  • ホワイトハウスが量子技術の推進姿勢を示したことで、ビットコインの暗号技術が将来的に受ける影響への関心が再び高まっています。
  • Binance創業者のCZ氏は、量子耐性暗号への移行後にサトシ・ナカモトの保有分を含む休眠ビットコインを凍結し、将来の量子攻撃者による盗難を防ぐことを提案しました。
  • 量子コンピュータによる暗号解読のタイムラインについては、Googleの最新研究などにより、従来よりも少ない量子ビット数で実現可能とする見解が示され、危機感が強まっています。
  • 凍結提案を巡っては、ネットワーク全体のセキュリティを守るための現実的介入を支持する意見と、不変性や所有権というビットコインの根本的な思想を守るべきとする意見が対立しています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

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