米下院金融サービス委員会は2026年6月24日、暗号資産企業やフィンテック企業に対して、米連邦準備制度理事会(FRB)の決済口座への限定的なアクセスを認める「スキニーマスターアカウント(簡易版マスターアカウント)」構想に関する公聴会を開催しました。この構想は、従来のマスターアカウントが持つ一部の機能を制限しつつ、仲介銀行を介さずに米国の主要決済ネットワークへ直接接続できるようにするものです。暗号資産企業の金融システムへの統合を目指す動きが加速する中、イノベーションの促進と決済システムの安全性確保を巡る議論が本格化しています。
議論の焦点となった「スキニーマスターアカウント」の仕組み
簡易版マスターアカウント(スキニーマスターアカウント)は、2025年10月にFRBのクリストファー・ウォラー理事が初めて公表した構想です。
通常のマスターアカウントは、金融機関がFRBに保有する口座であり、これを利用することで仲介銀行を介さずに決済ネットワークへ直接接続できます。これに対してスキニーマスターアカウントは、決済機能への直接アクセスを提供する一方で、日中信用の不認可や準備金への利子付与を行わないなど、従来のマスターアカウントが持つ一部の特権を制限した決済専用の口座として設計されています。これにより、暗号資産企業やフィンテック企業などのノンバンクが、リスクを抑えつつ決済インフラに直接アクセスできるようになるとされています。
暗号資産企業のアクセスを巡るこれまでの経緯と政策の動向
暗号資産企業によるFRB決済口座への直接アクセスを巡っては、近年大きな進展が見られます。
2026年3月には、カンザスシティ連銀が暗号資産取引所Krakenの銀行部門であるKraken Financialに対し、米国史上初めてデジタル資産銀行としてマスターアカウントの付与を承認しました。この承認に対しては、銀行業界から深い懸念が示されるなど議論を呼んでいます。
さらに、2026年5月にはドナルド・トランプ大統領が「フィンテックイノベーションの規制枠組みへの統合」と題した大統領令に署名し、暗号資産企業を含むフィンテック企業への直接アクセス許可の方針について評価するようFRBに指示しました。これを受けてFRBは、2026年5月21日に簡易版マスターアカウント制度の導入に向けた意見募集を開始しています。
公聴会における議論とイノベーション促進への期待
今回の公聴会では、決済インフラへの直接アクセスを認める基準や、米国の金融競争力における規制の役割について議論が交わされました。
共和党のダン・ミューザー議員は、「FRBsの決済システムへのアクセスは小さな問題ではない」とした上で、「こうした極めて重要な決済インフラへの直接アクセスを誰に認めるべきか」と問いかけ、慎重な検討を求めました。
一方で、米国初の連邦認可暗号資産銀行であるAnchorage Digitalのグローバル事業責任者、レイチェル・アンデリカ氏は、イノベーションを促進する規制枠組みの整備を求めました。アンデリカ氏は、米国が今後も世界の金融の中心であり続けるためには、イノベーションを可能にする連邦および州レベルの規制枠組みが必要であると述べています。
FRBは2026年末までにこの簡易版決済口座の枠組みを最終決定することを目指しているとされており、今後の進展はWeb3業界のビジネス展開に大きな影響を与える可能性があります。
ポイント
- 米下院金融サービス委員会が、暗号資産企業やフィンテック企業にFRB決済口座への限定的なアクセスを認める「スキニーマスターアカウント」について公聴会を開催しました。
- スキニーマスターアカウントは、従来の口座の特権を一部制限しつつ、仲介銀行を介さずに決済ネットワークへ直接接続できるようにする決済専用の口座です。
- 2026年3月にKraken Financialがデジタル資産銀行として初めてマスターアカウントを取得したほか、同年5月にはトランプ大統領がアクセス許可の方針を評価するようFRBに指示する大統領令に署名しました。
- 公聴会では、決済インフラ直接アクセスの対象基準を巡る慎重な議論と、米国の金融競争力を維持するためにイノベーションを促進する規制整備を求める声の双方が示されました。