米下院金融サービス委員会の民主党筆頭委員であるマキシン・ウォーターズ議員は、労働省に対し、確定拠出年金制度(401k)における暗号資産などの代替資産への投資を解禁する規則案を直ちに撤回するよう求めました。この規則案はトランプ大統領の大統領令に基づくもので、数兆ドル規模とされる米国の退職金市場に暗号資産を導入する道を開く内容でした。しかし、投資家保護の観点や利益相反の懸念から、民主党を中心に強い反発が起きており、今後の規制動向が注目されます。
401kの暗号資産解禁を巡る規制緩和と反発の構図
米国労働省(DOL)は2026年3月、確定拠出年金制度(401k)において、プライベートエクイティ、プライベートクレジット、不動産、コモディティ、そして暗号資産(仮想通貨)を含む代替資産(オルタナティブ資産)への投資を可能にする規則案を公表しました。この規則案は、トランプ大統領が2025年8月に署名したとされる大統領令「401kプラン投資家によるオルタナティブ資産へのアクセスの民主化」に基づいています。これは、これまでのバイデン政権が取ってきた規制重視の路線から大きく舵を切るものでした。
これに対し、米下院金融サービス委員会の民主党筆頭委員であるマキシン・ウォーターズ(Maxine Waters)議員は2026年6月26日、労働省のキース・ソンダーリング(Keith Sonderling)長官代行に書簡を送付し、同規則案の撤回を強く求めました。この書簡は11ページに及ぶ意見書であると報じられています。
ウォーターズ議員が指摘する利益相反と制度の矛盾
ウォーターズ議員は書簡の中で、規則案が一般の労働者を不必要なリスクにさらすものであると主張し、いくつかの具体的な問題点を指摘しています。
まず、一般国民の老後資金のリスクについてです。アクセスの拡大という名目の下、洗練された機関投資家が現在まさに手放そうとしている資産に、一般の米国民の老後資金をさらすことになると懸念を示しています。また、401kの資金がオルタナティブ資産に流れることで、これまで米国の資産形成を支えてきた公開資本市場の衰退を加速させる可能性があるとしています。
さらに、規則案の採用によって直接的な金銭的利益を得る立場にある労働省の次官補など、採用を推進する政府関係者の重大な利益相反の問題に対調していないと批判しました。
規制当局間の矛盾についても言及されています。SEC(米証券取引委員会)が一般投資家を保護するための規制体制(開示、カストディ、市場構造ルールなど)を整備している最中であるにもかかわらず、労働省が暗号資産を退職金制度に適した資産として認めるのは矛盾していると、ウォーターズ議員は指摘したとされています。あわせて、デジタル資産エコシステム全体における取引活動や開発者の参加、ユーザーのエンゲージメントが低下している現状も懸念材料として挙げられたと報じられています。
Web3業界のビジネスパーソンにとっての重要性
米国の401k制度は数兆ドル規模の資本を抱える巨大な市場です。この市場が暗号資産やオルタナティブ資産に開放されれば、Web3業界にとっては極めて大規模な資金流入チャネル(需要)が誕生することを意味します。
一方で、今回の民主党筆頭議員による強力な反発は、大統領令に基づく規制緩和がすんなりとは進まない政治的・法的なハードルが存在することを示しています。Web3ビジネスの展開や投資戦略を検討する上で、米国の年金規制を巡る政党間の対立や、各規制当局(労働省とSECなど)のスタンスの違いを注視していく必要があります。
ポイント
- 米民主党のマキシン・ウォーターズ下院議員が、401kでの暗号資産を含む代替資産への投資解禁規則案の撤回を労働省に要求しました。
- 規則案はトランプ大統領が2025年8月に署名したとされる大統領令に基づき、労働省が2026年3月に公表したものです。
- ウォーターズ議員は、投資家保護体制が未整備な段階での解禁は矛盾しており、労働者の老後資金を過度なリスクにさらすと主張しています。
- 推進派の政府関係者における重大な利益相反や、公開資本市場の衰退につながる懸念も指摘されています。
- 数兆ドル規模の401k市場における暗号資産の取り扱いは、Web3業界への資金流入に直結する極めて重要な規制動向として注目されます。