金インゴット(金塊)取引プラットフォームの開発を手がける株式会社アウラムは、金塊を金庫に保管したまま、売買に伴う所有権移転の過程をブロックチェーン上に記録する技術実証(PoC)を実施したと発表しました。自社開発のブロックチェーン台帳「AURAM」を活用し、金塊1本ごとの所有者情報をNFT(非代替性トークン)で記録・管理する仕組みの検証が行われました。この試みは、現実資産(RWA)の実用化における課題とされる「オンチェーン記録と現実の権利の結びつき」をクリアするためのアプローチとして注目されています。
民法に基づく「指図による占有移転」のデジタル実装
今回の技術実証において特徴的なのは、民法第184条に規定される「指図による占有移転」という仕組みが用いられた点です。これは、現物を直接手渡ししなくても、売主が保管者に引き渡しを指図し、買主がそれを承諾することで、法律上の引き渡しがあったと整理する仕組みです。
アウラムは、売主が保管者に出す指図と、買主による承諾をそれぞれ別のブロックチェーン上の記録として残すことで、所有権移転の過程を改ざんが困難なデジタル記録として残す仕組みを実装しました。
従来の金の預かりサービスの多くは、顧客が預けた金の所有権が事業者側に移り、顧客は同種・同量・同品質の金を返してもらう権利を持つ形になります。これに対し、アウラムが想定するモデルでは、特定の金塊そのものの所有権を顧客側に残したまま、その所有者を台帳上で管理できる点が異なっています。
技術実証の概要と法的な位置づけ
本実証は、アウラム代表の福田和博氏が代表を務める2法人間で、Avalanche(アバランチ)のFujiテストネットを使用して実施されました。対象となったのは、100グラム、純度999.9のデモ用金塊です。
製造者や刻印、外観写真などをもとに、金塊を識別するためのハッシュ値をブロックチェーン上に記録する設計がとられました。一方で、シリアル番号や元の写真など公開に適さない情報はオンチェーンに載せず、限られた事業者だけが確認できる仕組みで管理されています。なお、今回の実証は技術面と法的な整理を検証するためのもので、実際の売買契約や代金決済は行われていません。
また、本仕組みにおける法的な位置づけとして、金融庁のFinTechサポートデスクからは、使用されるNFTが暗号資産や集団投資スキーム持分に該当しないとの見解を得ているとされています。一方で、第三者に対して所有権を主張できる状態(第三者対抗要件)を満たせるかについては現在確認中であり、経済産業省のグレーゾーン解消制度を通じて法務省に照会し、回答を待っている段階とされています。
今後のスケジュールとサービス展開
アウラムは今後、本技術をもとに金インゴット取引プラットフォーム「KINGOT(キンゴット)」の開発を進める方針です。
具体的なスケジュールとして、2026年度中にまずは招待制の限定サービスとして法人向けに提供を開始する計画です。その後、倉庫事業者との提携が確定した段階で、2027年度以降に本格展開および個人顧客への対応を予定しています。
同社は、金塊の保管を担う倉庫事業者、取引に参加する地金商、貴金属を扱う事業者など、取引や保管におけるパートナー企業の募集も進めており、実物資産を安全に保管したまま売買や将来的な担保活用につなげる基盤の構築を目指しています。
ポイント
- 金庫に保管された金塊を物理的に動かさず、ブロックチェーン上で売買に伴う所有権移転の過程を記録する技術実証が実施されました。
- 民法上の「指図による占有移転」を用いて、売主の指図と買主の承諾をそれぞれブロックチェーン上に記録する仕組みが検証されました。
- 金融庁のサポートデスクから、使用されるNFTが暗号資産や集団投資スキーム持分に該当しないとの見解を得ており、法務省への法的な確認も進められています。
- 2026年度中に法人向けの限定サービスとして「KINGOT」の提供を開始し、2027年度以降に本格展開と個人顧客への対応を予定しています。
- 現実資産(RWA)のオンチェーン記録と現実の権利を安全に結びつける試みとして、実物資産の流動性向上や担保活用への貢献が期待されます。