三菱UFJフィナンシャル・グループらがAIエージェント金融取引分科会を設置、分散型IDとデジタル証明書の活用を共同検討

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三菱UFJ信託銀行は2026年6月30日、DID/VC共創コンソーシアム(DVCC)に「AIエージェント×金融取引分科会」を設置したと発表しました。この分科会では、AIエージェントが利用者に代わって投資信託などの金融商品取引を処理する時代を見据え、分散型ID(DID)とデジタル証明書(Verifiable Credential:VC)を活用した信頼性確保の仕組みを検討します。AIによる自律的な代理取引が進む中で、取引の安全性や法令遵守を担保する新たな技術基盤の構築を目指す取り組みとして注目されます。

AIエージェントへの権限委任と取引の信頼性確保を目指す背景

近年、生成AIやAIエージェントの進展に伴い、利用者の意思決定を支援するだけでなく、利用者に代わって取引を自律的に実行する仕組み(エージェンティック・コマースとも呼ばれます)の実装が進んでいます。海外では、商取引や決済分野を中心に、AIエージェントによる代理取引に関する技術の標準化が進んでいるとされています。

しかし、AIエージェントが金融商品取引を担う場合、金融機関にとっては従来の本人確認(KYC)だけでは不十分になります。利用者がどのAIエージェントに、どのような範囲の権限を与え、そのAIエージェントがどの取引を実行したのかを検証できる仕組みが必要となるためです。

こうした課題に対し、特定の事業者に依存せずに個人や組織を識別する分散型ID(DID)と、本人確認結果や資格、権限などの情報を検証可能な形で示すデジタル証明書(VC)が、本人確認情報や委任範囲、権限の証明をデジタル上で扱いやすくする技術として位置づけられています。

分科会の主な検討内容と活動スケジュール

本分科会は、2026年7月から2027年3月までをめどに活動を行います。MUFGを幹事とし、金融機関やベンダー、リーガルカウンセルなどが参画する予定です。

具体的な検討対象は以下の通りです。

  • AIエージェントを用いた金融商品取引に関する法令解釈やガバナンス上の論点整理
  • 顧客保護や説明責任、投資適合性との整合性の検証
  • マネーロンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)を含む金融犯罪対策
  • AIエージェントによる利用者の意思に沿わない契約行為が発生した場合の民法上の解釈
  • デジタル証明書(VC)を使用する技術基盤の検討
  • 来年度の実機を用いた実証実験を見据えたアーキテクチャと実証シナリオの策定

なお、本分科会が設置された「DID/VC共創コンソーシアム(DVCC)」は、分散型ID(DID)と連携したデジタル証明書(VC)のビジネス共創を目的に2023年10月に設立されたコンソーシアムであり、2026年6月末時点の会員企業は53社に達しています。

ブロックチェーン技術の社会実装における重要性

この取り組みは、分散型ID(DID)やデジタル証明書(VC)といったブロックチェーン関連技術が、AI時代における金融インフラの信頼性を支える重要な要素技術であることを示しています。

AIエージェント時代の金融取引では、利用者と金融機関の間にAIエージェントが入るため、権限委任の証明や取引結果の検証可能性を担保する仕組みとして、分散型IDとデジタル証明書の重要性がさらに高まると見られます。

従来の金融取引で重視されてきた本人確認の枠組みを越え、「どのAIに何を任せたか」を検証できる仕組みを構築することは、AIと金融が高度に融合する未来において不可欠な信頼の基盤となります。日本の大手金融機関が主導し、実務や法令、ガバナンスの課題整理から実機検証までを視野に入れた共同検討を開始したことは、ブロックチェーン技術の社会実装を新たな領域へ前進させる重要な一歩になると見られます。

ポイント

  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三菱UFJ信託銀行が「AIエージェント×金融取引分科会」を設置しました。
  • AIエージェントが利用者に代わって投資信託などの金融取引を処理する時代を見据え、分散型ID(DID)とデジタル証明書(VC)を用いた信頼性確保の仕組みを共同検討します。
  • 取引の「本人確認」だけでなく、AIへの「委任範囲の証明」や「取引結果の検証可能性」を担保する技術としてDIDとVCが活用される見通しです。
  • 顧客保護、説明責任、投資適合性、AML/CFT対策、意思に沿わない契約時の民法上の解釈など、法令・ガバナンス面の課題も整理します。
  • 活動期間は2026年7月から2027年3月までを予定しており、来年度には実機を用いた実証実験の実施を見据えています。

監修者:Pacific Metaマガジン編集部

Pacific Metaマガジン編集部は、ブロックチェーン領域を中心に、RWA(リアルワールドアセット)、セキュリティトークン(ST)、ステーブルコイン、NFTなどのトークン活用や、AI×ブロックチェーン領域における事業開発・実装に関する情報を発信する編集チームです。株式会社Pacific Metaが、グループ累計260社以上・41カ国以上のプロジェクトを支援してきた知見をもとに、記事の企画・監修を行っています。

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